第十七話
――カチャカチャ――
食器を洗う雛。
家に引きこもってから何かできる事ないかと考え思いついたのが家事だった。
とゆうか何かしてないと頭が狂いそうになった。
全く手伝いなんかしなかった今まで。
少しでも母を楽にさせてあげたかった。
『今日もやってくれたんだ!ありがとう。』
仕事から帰ってくるといつも母はお礼した。
お礼なんかしないで。
今私にできる事はこれくらいしかないんだから。
私は二人の会話の中で『毎日家に居るんだから』と言われるとすぐにキレた。
「居たくて居るんじゃねーよっ!私だってこんなんなりたくてなったわけじゃない!」
そう泣きながらキレたのは最近の事。
それから母は言葉に気をつける様になり、会話で体の事には触れなくなった。
――ガシャーン――
食器を洗っているといきなり嫌になる。
今皆は遊んでんのに。
飲んだり騒いだりして楽しんでるのに。
なんで私だけこんな事しなくちゃいけないんだよ!
何回そう一人でキレたか。
『買い物行く?』
母はあれから買い物に行く度に誘ってくれる様になった。
断ることがほとんどだったけど…。
「うん。」
早目に用意をして心を落ち着かせた。
近くのスパーで母は夜ごはんの材料を買い私は本を立ち読みしていた。
『雛っ!』
肩をいきなりポンと叩かれビックリする。
「めぐ…。」
私を見ながらニコニコしていたのは小学校、中学校が同じで親友と呼べるくらい仲良い友達だった。
高校に入ってからはお互いの新しい友達もできて遊ぶ機会も少なくなっていた。
『何やってんの?学校は?』
「めぐだって。」
『私辞めたから!』
堂々と言うめぐはかっこよく見えた。
「そっか。最近連絡とってなかったしね。知らなかった。」
『てか雛…あんた痩せたんじゃないの?!』
「えっ…」
『元々もほっそかったけどなんか…。ちゃんと食べてる?』
「あーうん。」
最近は食べれる様になったんだけどな。
最近人とちゃんと話してなかったから。
うまく喋れない。
「ごめん。私行くわ。」
『えっ?あぁうん。わかった!連絡するね。』
「うん。」
走ってトイレにかけこむ。
「はぁはぁ…」
ビックリした。
友達と会うなんて思ってなかった。
ドキドキしてる。
トイレで気持ちを落ち着かせて母の連絡を待った。
夜になるとめぐから電話があった。
あれからまめに連絡がくる。
電話を何回もシカトしてもまた違う日にかけ直してきてくれた。
電話中は雛も笑った。
めぐとの会話はくだらない話しばかりだったけど雛にとっては楽しかった。
『遊ぼう』と言われた時は戸惑ったけど。
今になってもクラスの人からもメールや電話はたまにきた。
『調子悪いんだって?大丈夫?』
皆がそう言う。きっと静香が言ったのだろう。
妊娠しただとか鑑別所入っただとか悪い噂もあるみたいだった。
恭介の友達は
『恭介めっちゃ後悔してるよ。』
と言った。
「今更。私は後悔も何もしてない。思い出しもしないし。」
きっとこの言葉は恭介に伝わるだろう。
それでいい。
思い出さないなんて嘘。
思い出すのは嫌な思い出ばっかだけど毎日恭介を思い出してる。
でも早く私を忘れてほしいと思った。
何でだろう。
私を忘れて彼女ができればいいと思っていた。
そうすれば私も吹っ切れると思ったから。
吹っ切れる?
私吹っ切ってるんじゃなかったっけ…?




