第十話
『雛学校行かなくていいの?』
二世帯住宅の下に住んでるのは母親の母親。
いわゆるおばあちゃんだ。今日はおばあちゃんと二人でご飯を食べていた。
『おじいちゃんが弱ってきてるからちゃんとお見舞い行ってあげて。』
おじいちゃんは癌でずっと入院していた。
前は頻繁にお見舞いに行ってたけど最近は行ってない。
「うん。そーだね。」
『死んだら寂しいね。』
おばあちゃんがぽつりとつぶやく。
こんな話しやだな。
おじいちゃんは歳のわりには元気で雛とも仲良く、弱っていった姿を見るのは辛かった。
「そーだね。私の父親みたいなもんだったし。」
雛が小学校2年の時父親は家からいなくなった。
それからも夜は二人で電話を今でもしている。
母親は『ただの別居』だと今まで雛と兄貴に言ってきたが、本当なのか気になっていた。
おばあちゃんならなにか知ってるかも…。
「ねぇ…。ママとパパの事。知ってる?」
おばあちゃんは箸を止めた。
「ママは今まで私に別居だって言ってるんだけど。本当なのかな?」
『…。』
「私ももぅ高校卒業するし。本当の事知りたいんだ。」
『そーだよね。』
おばあちゃんは雛の顔を見て話し出した。
『雛が小学校の時、お父さんが…ほら…女作って。』
「女っ?!」
『ただの浮気程度なら良かったんだけど、その女が本気になったみたいで。』
「うん。」
『その女も旦那がいて別れたからあんたも別れろって言ってきて。別れないって言ったら旦那が出てきて金要求されるはで結局別れるなきゃいけなくなった。』
「別れるって…?」
『離婚。』
――ドクン――
離婚…
あんなに電話だってして仲良いのに?
でもずっと家に居ないんだからそーだよね。
何で今まで気づかなかったんだろう。
パパがいなくなったのには理由があるんだからある程度は覚悟はしてたけど。
ショックだ…。
「そーなんだ。」
『私もあの時は怒ったりしたけど今では戻ってきてほしいって思ってる。』
「そーだね。パパと居る時のママ楽しそうだし。」
雛とおばあちゃんはいつか二人がまた一緒に暮らせたらいいね。
と話した。
ショック…
ショックだけど…
ママにはきっとその時辛かっただろう。
それからきっと私のスポーツを止めたショックもあった。
高校の時は遊び歩いて、毎日顔合わせる度に喧嘩。
泣かせた事もたくさんあったし心配ばっかりかけてたんだ。
ママは私がこうなったのは自分のせいだって責めてた。
でもパパが居ない分しっかり育てなきゃって兄貴と私を育ててくれたんだ。
「私…しっかりしなきゃ。」
もう甘えたりしない。
しっかりする。
これからは少しでも親孝行するよ。
おばあちゃんの話しを聞いてそう思った。




