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St. Valentin's Day  作者: 双樹
3/4

――三日目――

「まだいるのね」

 半ばうんざりしながらひとりごちる。

 何故だろう、酷く苛つく。

 平日に入り、歩行者天国はなくなり、人混みも幾分緩和されるとその存在は際立った。

 距離は、約二メートル。すぐ近くにいるのに手が届かない。そんな空間。

 何を、見ているの?

 彼は、ある一点を凝視している。その先には大したものなどありはしないのに。

 知らぬ間に爪を噛みつつ、私は彼の目前へ移動した。

 気付いた様子はない。

 私は膝を曲げしゃがみ込み、少年と目線の高さを合わせる。

 手を振ってみた。

「ねえ」

 ついでに声まで掛けてみる。

 だがまるで彼は私のことなど全く目に映っていないのか、虚空を睨み据えたままで。

「……」

 馬鹿馬鹿しい。付き合うのではなかった。

 頭を振り、立ち上がって踵を返し、その場をあとにする。

 数歩も行かぬうちに背後に異変を覚えた。

「きゃ」

 女性の、小さな悲鳴。

 勢いよく振り返る。

 驚きの隠せない彼女の、スカートの端をつかんでいる。なんて可愛らしい声を上げるのだろうとぼんやり考える。

「チョコくれ」

 ……!

 予想の出来ていた展開。

 なのに。理由もなく激昂した。

 居たたまれなくなり、走る。


 泣きそうになるのは、何故。

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