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世界最強のヒキニート〜ただ、平穏にヒモ生活を送りたいだけなのに  作者: 夜空 叶ト


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第3話 脳筋傭兵団と三年ぶりの戦場

「まあ、作戦と言っても簡単だ。目に映った敵を殺す。それだけだな! そうすれば普通に戦争には勝てるだろ。うん」


「そうだな! 団長の言う通りだ!」


「一人十人くらい殺せば何とかなるだろ! やってやるぜ!」


 これのどこが作戦なんだ? 行き当たりばったりなんてレベルじゃないぞ? なんでこの国はこんなイカれた傭兵団を雇ったんだ。頭がおかしいのか? いや、頭がおかしいから雇ったのか。考えるまでもなかったな。


「じゃあ、早速全員で出陣だ! 絶対に勝つぞ!」


「「「おおっ!」」」


 ダメだこいつら。もう、敵を殺すことしか頭にない。なんとしてでも逃げ出さないと、敵に殺される前に味方に殺される羽目になる。何がどうなったらヒキニート生活から最前線のイカれた傭兵団勤務になるんだ。前世の俺はどんな極悪人だったんだよ。


「僕たちも行くぞ! 周りの奴らに後れを取るわけにはいかないからな!」


「いやいやいや、ちょっと待てって。まさか、本当に無策で突っ込む気か? 相手はかなり多くの魔法士を前線に投入してきてるんだろ?」


「当たり前だ! 魔法は叩き切ればいい。ついでに魔法士も叩き切ればいい。そしたら勝てるだろ?」


「だから、それが出来れば苦労しないって言ってんだよ! そんな風に突っ込んでも魔法で吹き飛ばされるのがオチだ。お前ら頭おかしいのか?」


 原則として、魔法士の相手ができるのは魔法士だけだ。歩兵は防御魔法が使えない。だから、魔法士の扱う簡単な下級魔法一発で普通に死ぬ。だからこそ、戦場では魔法士の存在が重要なのだ。


「おかしくない。さっき言った通りだ。魔法だろうが魔法士だろうが叩き切ればいい。レイスは確か、魔法が使えないんだったか?」


「ああ、俺は魔法士ってわけじゃないからな。そう言うお前は使えるのかよ」


「使えるわけないだろ! そもそも魔法なんか使えたら国に所属してる」


「それもそうか」


 魔法を使えるのは全世界で見ても二割ほどだ。魔法を使える者は国が管理して戦場に投入されたり。騎士として国に仕えたりする。こんな傭兵団に所属するよりもよっぽど待遇は良いし安全だ。魔法が使えるのに好き好んでこんな地獄に身を置くわけないか。


「それよりもとっとと戦場に行くぞ! 早く敵を叩き切りたくて仕方ないんだ」


「こいつ、単なる戦闘狂かよ。こんな奴がパートナーとか、本当についてないぜ」


 ルルアが先に突っ走っていくので、俺もその後に続く。戦場に近づくにつれて爆発音や破裂音などの戦闘音が大きくなっていく。やはり、と言うべきかテラソルス王国軍はかなりの劣勢を強いられているようだった。


「本気でこの戦場を魔法士の援護なしに突っ切るつもりか? 冗談だろ」


「冗談なもんか。僕たちの傭兵団に魔法士なんて上等な奴はいないし、何よりも魔法なんかにビビってたら傭兵業なんかできないだろ」


 ルルアの言っていることは正しいのかもしれないけど、やっていることは決死の特攻に近しい。成功しても大した名誉は得られないし失敗する確率の方が圧倒的に高い。なんでこうまでして自分の国のためでもないのに戦えるのだろうか? 傭兵だからか? それとも金が必要だからなのか? 俺には到底理解できそうにない。


「つっても、魔法士を見つけても防御魔法があるだろ。ただの斬撃とか打撃でダメージを与えることなんかできないと思が?」


 魔法士が歩兵よりも圧倒的なアドバンテージを誇るのは何も攻撃面だけじゃない。防御面だって多少の物理現象なら簡単に防げてしまうし、宙に浮かぶだけで歩兵の攻撃は届かなくなる。そんな相手に魔法も使えない連中が一体どうやって太刀打ちするって言うんだ。


「だから、さっきも言っただろ。見つけたら魔法ごと叩き切る。それだけだって」


「マジで言ってんのか?」


「大マジだ。てか、それ以外に方法がないだろうが」


 どうやら、本気でこの傭兵団の連中はただの斬撃で防御魔法事切り裂く気でいるらしい。いや、話し方的に過去の戦場でも同様のことをしてきたのかもしれないが。だとしたら、化け物すぎないか? 普通の人間のできることじゃないぞ。


「おしゃべりは終わりだ。ここからは本気で敵を殺しに行くぞ。死んでも僕は責任取れないからな。自分の身は自分で守れよ?」


「ちょ、待てよ。おい」


 俺の静止を無視してルルアは敵のいる方面に向かって大剣を構えながら突っ込んでいった。その先からは肉を断つ鈍い音と絶叫が鳴り響いていた。


「怖すぎだろ。マジでおっかないな。怒らせないようにしよ~っと」


 真面目に戦うのも面倒だし、そもそもとして俺はこの戦争の結果に興味がない。俺が今考えていることはどうやってこの傭兵団を後くされなくやめるかなんだよな。


「まあ、普通に抜けることはまずできなそうだし。かといって長い事この傭兵団に居たら命がいくつあっても足り無さそうだしな。となると……」


 どうするのが正解なのか。素直に抜けようとするのはダメで時間をかけるのもダメ。これって結構詰んでないか? このままこんなクソみたいな戦場で骨を埋めるなんてたまったもんじゃないぞ? 絶対に回避しなくては。


「おい! こんなところで一人棒立ちの傭兵がいるぞ! やっちまえ!」


「……面倒だな」


 一人で考えているとルナセリア帝国兵士に見つかってしまった。流石に話し合いで解決……なんて出来そうにないし。かといって抵抗しなかったら普通に殺されるだろうしなぁ~。これは自衛。これは正当防衛。うん。そういう事にしよう。


「こいつ、ビビッて動けねぇんじゃねぇか? 情けねぇなぁ」


「良いじゃねぇか! 楽にスコアを稼げるんだからよぉ」


 ルナセリア帝国兵は楽しそうに笑いながら剣を手ににじり寄ってくる。抵抗しなかったら俺は晴れて生首になってこいつらのスコアになってしまうんだろう。それはぜひとも勘弁願いたい。


「え~と、面倒だから帰ってもらってもいいか? そのほうがお互いに幸せだと思うんだけど?」


「何言ってんだこいつ? 気でも触れたのか?」


「気にすんな。俺達のやることは変わらねぇだろ? 敵を殲滅してルナセリア帝国に勝利をもたらすだけだ」


 敵は……正規兵か。でも、騎士ではないな。ただの一兵卒。その程度なら何人いても変わらないか。もう何を言っても聞く耳を持ってくれそうにないし。仕方ないよな。

 イリアから手紙と一緒に贈られたごく普通の長剣を腰から引き抜いてぶら下げる。重さは普通。長さも普通で何の特徴もない長剣だ。だからこそ、使い勝手がいいわけなんだが。


「そんなん構えても無駄だろ! 死ねぇ」


 一人が剣を振り上げる。無駄の多い動き、わざわざ付き合ってやる義理もないし俺はぶら下げた獲物を兵士の腕目掛けて適当に振るう。肉を断つ嫌な感触が剣を握っている右手に伝わってくる。三年ぶりの感覚に懐かしさすら覚えてくる。


「いぎゃぁぁぁぁぁ」


「な、何したんだこいつ」


「なんもしてねぇよ。それよりもどうする? まだやんのか?」


 致命傷は外したし、今すぐに撤退すれば命を失うような傷ではない。片腕を失う事にはなるが命を落とすよりはマシだろう。できればここで退いてほしいんだが。


「嘘つくな! なんでお前みたいな冴えない傭兵がそんな動きをできる!」


「なんでって言われてもな。できるんだからしょうがないだろ。それよりも退くか来るかどっちかにしてくんない? 俺もう帰りたいんだけど」


 長い間同じ場所に留まっていると敵が寄ってくるかもしれないし、魔法士に見つかると凄く怠い。だから、できるだけ早くこの場を離れたい訳なんだが……


「お前みたいな危ない奴を打ち取ったら、俺はもしかしたら騎士になれるかもしれねぇ! ここでお前をサクッと殺して……」


「お前みたいな奴が騎士になれるわけないだろ。騎士を舐めるのも大概にしろ」


 こんな下賤な奴が騎士になんてなれるわけがない。そもそも、魔法すら使えない一般の兵士がどれだけ武功をたてても騎士にはなれない。騎士って言うのはそう簡単になれる物でもない。


「あ、がっ」


「最悪だな。ついカッとなって殺しちまった。まあ、いいか。それよりも早くここを離れるかな」


 剣についた血を素早く振って落としてから鞘にしまう。こんな動作をするのも三年ぶりか。どうして俺はまた戦場にいるんだろうな。なんの大義もないのに。


「うん。やっぱり向いてねぇな俺には。とっととトンズラしよう。俺にこの国の行く末とか関係ないし。命あっての物種だしな」


 戦場に居たって虚しいだけだ。誰のためにもならない。人を殺した数だけ英雄になるなんて馬鹿げた場所に長時間居たら気が狂ってしまう。

 俺は極力殺したくないし、もちろん殺されるのだってごめんだ。あの時、戦場とは無縁の生活を送るって決めたんだから。なんとしてでもこの戦場から脱走しなくては。


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