第21話 王都内戦
「全力で戻るって言っても馬車を使わないとここから王都に戻るまで来た時間と同じくらい時間がかかるんじゃないか?」
「それは俺に任せておけ」
俺はルルアから少しだけ距離を置いて魔法を詠唱する。
使うのはもちろんケラウノスだ。
あの魔法なら馬車の数倍の速度で移動できる。
数時間かかった道のりも一時間ほどに短縮できるはずだ。
「それが魔法なのか?」
「ああ。って言ってもルルアも暇な時間にイリアに魔法を教えてもらってただろ? 使えないのか?」
「う~ん、使えるは使えるようになったんだけど。そんな風に雷を自分の体に纏う事はできないかな」
「当たり前だ。この魔法は一応は俺のオリジナルだからな。他の人間がポンポン使えるようなもんじゃない」
「そうなのか……すごくカッコいいから僕も使いたかったんだけどな」
流石にこの魔法を普通の魔法士が使うのは無理かもしれない。
この魔法は俺の特異体質を前提に設定した出力と魔力消費だから他の人がホイホイと使えるようなものではないのだ。
「また、違う魔法なら今度イリアに教えてもらえばいい。そのためにもちゃんと無事に助け出さないとな」
俺はルルアを抱きかかえてほぼ全力で走り出す。
今回はルルアを抱えているから実際に全力で走っているわけではない。アルカの時と同じく、人を抱えている状態で全力で走ったらルルアが色んなものを吐きかねない。
だから、ルルアが耐えられる限界の速度で足を動かす。
「は、早すぎないか!? こんな速度でいつも移動してるのか!?」
「いつもじゃないさ。それに普段ならこれの倍くらいは早い」
「じゃ、じゃあなんで今はこの速度なんだ?」
「これ以上早くすると、多分だけどルルアが吐いちゃうからな。この速度に抑えてるんだ」
綺麗な月明かりが照らす森を雷速で駆け抜ける。
視界に映る景色はどんどん変わっていく。
数分も経つ頃には森を抜けて、開けた街道に出る。
もう数十分で王都が見えてくるはずだ。
「でも、戦闘前にこんな魔法を使っても大丈夫なのか? イリアに教わったけどこんなにすごい魔法なら魔力の消費量もバカにならないんじゃないのか?」
「あ~確かにそうなんだけど。俺にその心配は必要ない。これはまあ、生き残れたら教えてやるよ」
「じゃあ、なおさらこんなところで死ぬわけにはいかないな!」
俺の体質は説明するのが凄く難しい。
だから、座ってゆっくりお茶でも飲みながら話すのがいいだろう。
「悪いな。こんなことに巻き込んで」
「ううん。謝らないでくれ。僕もイリアやアルカたちともっと一緒に居たいからな。せっかくできた新しい居場所を守るためにも今回の戦いには絶対に勝たないと!」
「だな。でも、絶対に無茶はするなよ。死んだら意味なんかないんだからな」
生き残るために、居場所を守るために戦うのに無茶して死んだら意味がない。
最優先事項は命大事にだ。
アルカやイリアの救出は俺が命を張ればいいだけの話だしな。
「わかってる。それよりも見えてきたぞ」
ルルアと会話をしながら走っていると見慣れた城壁が見えてきた。
城壁内からは黒煙が上がっており、王都に何らかの異変が起きていることは見て明らかだった。
「王都内に入ったら即戦闘になってもおかしくない。ルルアに言うのも変かもしれないけど、敵にあったらためらわずに殺せ」
「わかってる。元傭兵が敵に情けをかけるなんてことは無いから安心しろ」
頼もしいルルアの言葉を聞いて心強くなる。
絶対に助け出す。
そう心に誓って腰に佩いている剣を見る。
「じゃあ、行くぞ!」
城壁付近までたどり着くと、俺は城壁を一気に飛び越える。
王都内はイリアの屋敷を中心に燃え上がっていて鎧に身を包んだ兵士たちがイリアの屋敷を包囲している。
完全に開戦してた。
いや、こんなのはもはや内戦だ。
「無事でいてくれよ」
心の中でそう願いながら、イリアの屋敷に向かう。




