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第2話 ある夜の会話

「ほぉ…! クロウ、君のお父上は機械技師(エンジニア)なのかぁ……!」

「ああ、ミカ。それで母さんと、俺を筆頭に男女三人ずつの六人兄弟を養ってくれてるんだ。両親には本当に感謝してる。この学園を卒業したら良い仕事に就いて、いつか恩返しが出来たらって思ってるんだ。ここに入学が決まった時も皆もの凄く喜んでくれたよ……主に経済的な理由でだけどね」

「そうか……いずれにせよ良いご家族じゃないか」


 あれから数週間が過ぎた。クラウスとミハイルの二人はすっかり打ち解けていた。とはいえ二人のタイプは実は正反対に近い。ミハイルは根っから明るく社交的、一方のクラウスはというと、一人にしておけば物静かで内向的な性格であった。そんな二人だが付き合ってみると意外にも不思議に馬が合った。

 同室で毎朝毎晩否が応でも共に過ごさざるを得ないという事もあったかも知れないが(なお同室と言っても各々に個室と、それに加えて共有スペースがある)、この二人の間柄に関して言えば単にそれだけでもないようであった。

 それは例えるならば隣り合うパズルのピースがピッタリとはまり合うような不思議な感覚であり、そこはお互い感じているようであった。真反対の性格だが(いや、だからこそか)互いの違いを理解し、認め合い、尊重し合っていた。まあひと言で言えば、とにかく気が合ったのだ。その点から言えば、誰が決めたか知らないがこの部屋割りは的確であったと言えよう。


 この日も二人は夕食を終えた後、部屋で話し込んでいた。とはいえお互い自分自身の事は既にあらかた話し尽くしており、その日は互いの家族の事に話題が及んだのだった。今度はクラウスがミハイルに訊いた。


「…君のご家族の方はどうなだい? やっぱり大公家ともなると、俺たち庶民とは違って色々大変な事も多いんだろうね……」

「…いやいや、大公一族と言っても前にも言った通り僕は第十二公子。母も第三婦人で貴族だが位も低い。生まれ育ちも宮中ではなく、離宮とは名ばかりの民家に毛の生えたような屋敷だ。間違って大公位が回ってくるなんて事も万に一つも有り得ないだろうし、気楽なもんだよ。まあ、その代わり自分の人生は自分で何とかしなけりゃならないんだけどね……」

「第十二……何て事だ。俺も兄弟は多い方だとは思ってたけど……お父上の大公殿下はずいぶんお元気であらせられるんだなぁ……」

「ああ、まあ……これは我が父上が特殊というよりは、我がヴァンデュボン大公国のある大陸中央部の伝統というか風習でね。正妻以外に愛妾を何人も囲うのが当たり前で……つまり万が一にも家系を絶やさないようにとの考えからだな。一夫一妻が基本のここ、大陸西部の人達から見れば奇異に映っても仕方ないかも知れないが……」

「奇異とまでは言わないが……古い風習だと思うよ」

「ああ、中世以来の伝統だなぁ……良くも悪くも……」


 …少し間があった。クラウスはふと思い付いて話題を変えた。


「…話は少し変わるが、君以外にも他国の王侯貴族の子女でこの学園に通ってる人ってのはいるんだっけ?」

「…ああ、何人かいるようだね。パッと思い浮かぶのはグランボワーズ王国の第一王女シャルロッテ殿下とかかな。今僕らの一年上だが……そういえば僕はあのお方に関してちょっと興味深い話を聞いたよ」

「何だい?」

「実はその王女殿下が大切なものを無くされたっていう事なんだ」

「な、何なんだ……!? その大切なものっていうのは……」

「この学園にご入学される前に祖国の父王陛下より与えられた宝石だそうだ」

「な、なんだ……変な言い方をするなよ、紛らわしい。しかし宝石を無くしたとは……誰かに盗まれたのかな……いや、しかしこの学園の学生でそんな事をする者がいるとは思えないけど……」

「何でも『炎竜の吐息』とか言われるでっかい紅玉(ルビー)で、かの王家の家憲によると、常に手元に置いて所持しておく必要があるとされている家宝らしい。それでこの学園にも持って来ていたそうだ」

「それが無くなっちゃったっていうのかい?」

「ああ、しかもその宝石、王位継承者の証でもあるそうだ」

「そりゃあ大変じゃないか…!」

「うん、それで殿下も宝石を見付けた者には莫大な額の報奨金を出すって学園中に触れ回ってるようでさ、結構多くの学生や一部の教師達まで真剣に探し回ってるらしいよ」

「ふ~ん……そりゃあ早く見付かると良いな」

「それでさクロウ、僕達でもちょっと探してみないか? 報奨金も出るそうだし、何より面白そうじゃないか」

「そうだなぁ……日々漫然と過ごすより、何だか刺激があって楽しそうだ。これから学園内のあちこち注意して見るようにしてみよう」

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