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燭光

作者: 名無し

子どもの頃の私は、しょっちゅう熱を出して風邪ばかりひいていた


自分でも、もう慣れっこで

夜中に布団で目を覚まして、あ、熱だ、と体温計で測らなくてもわかった


寒気に震える体と熱でボンヤリした頭で、意を決して起き上がる

隣の両親の寝室へと裸足で歩いていく

カチャ、とドアを開けると母もすぐ察する

熱?と聞く母に黙って頷く


布団から出た母と交代で母のベッドに潜り込む

氷枕を取りに一階へと降りていく母の足音を聞きながら

母の体温で温まっている布団でホッとひと息つく


隣で寝ている父の寝息

仰向けになって、天井を見つめる

真っ暗闇の中に豆電球の赤い光が浮かんでいる

熱で涙目になって、滲む赤い光が幾つもの光の線を描いてキラキラ光って見える


下の階から氷を砕く音がする

天井を眺めながら、申し訳なくて後ろめたいような、甘えたいような気分になる

しばらくして、母が戻ってくる


後頭部にヒンヤリとした、たっぷんたっぷん揺れる氷枕を入れてもらい

おでこに冷たいタオルを乗せてもらうと、一瞬ゾクッとするけど頭痛が和らいで気持ちいい


おでこのタオル越しに、目を細めて天井の赤い光を見る

目の錯覚で二重三重に重なる光

また、この光景…

熱を出す度、いつもこうして天井の薄明かりを眺める


寝なさい、と母に言われて目を瞑る

細い弱い体

息苦しい、頭が痛い

寒気で縮こまって震える

そのうち熱がこもり布団の温度が暖かくなり眠気で意識が薄れていく



久しぶりに風邪で熱っぽい感覚を覚え

昔の体感が鮮明に蘇る

背中から腰にかけて力が脱けるような痛みとだるさ

肩で息をしながら倒れ込むように横になる


大人になって、自分が母親になると熱が出ても寝込んでなんていられない

これまでも39度越えようと流行病になろうと当然のように母親は休めなかった

母親の代わりは居ないのだ


お母さんは、誰が甘えさせてくれるのだろう?

熱が出ても、泣きたい時も、誰かに頼りたい時も…耐えるしかない

人間なんて弱い生き物だから

皆甘えたいばかり


病気になるとより弱気になる

体がしんどくて動けないから

男性は全然頼りにならないし

なんで男は看病が苦手なの?そもそも鈍感過ぎて気遣いもできない

不機嫌になるだけで余計こっちのストレスになる(元々最初から戦力外)


気合と勢いで家事育児をこなして早く寝る

根性で体調は治す

他に方法があるなら誰か教えてくれい


こうして、母はどんどん強くなり、父はだんだん役立たずになる

結婚に幸せを求めなくなる昨今のあり方に同意せざるを得ない


生物として、育児や介護は女性の方が向いているのは確かだが

世話されるだけの子どもみたいなまま、体だけ大きくなった男性は、もういい加減変わってほしい


料理もメイクも育児も介護もジェンダーレス

性差は関係ない

人間どうし、助け合い向上しよう


結婚も、母親も、薄明かりの幻想

子どもだった女の子が時を経て、一生懸命役割をまっとうしてるだけ

あーしんどい

やってられない


やっぱり自分を大事にしよう

アイス食べてドラマ見よう

風邪の時は好きなもの食べてゴロゴロするのだ(いつもしてるかも?)

自分で自分を甘やかそうっと






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