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第十三話「リィゼ 中編」6

 家庭を持っていない人間を選んだのは何故かって? だって家族があるのに自分が殺されるなんて、きっと悲しいじゃない。わたしも、その辺の事は“学んだ”のよ。まあ結局、全員やるのだからどうでもいいのだけれど。

 他の人間は、一瞬で、苦しみの無いように殺そう。特に、女性子供は。せっかくの機会なのに、そんなんじゃあ面白くないのだけど、ミリアさんが言っていたの。

「人の気持ちを分からない人間は、糞以下よ」

 拷問をしている時に言われた言葉よ。

 国の兵士を捕虜として捕らえたのだけれど、口を割った人に対して、わたしは拷問をやめず、続けようとしたの。その時、ミリアさんがわたしの腕を掴んで言ったのよ。あの時の目は、とても冷たかったわ。

 普段は明るくていつでもわたしの味方だった人に、そんな風に言われたの。「糞以下」という言葉がとても強烈で、胸をギュっと握り潰された様に痛かったわ。

 その時初めて気付いたの。どうやらわたしは、“その部類”らしいって。

 これまで、ずっとわたしを肯定してくれていた人にそんなこと言われたものだから、正直、しばらく立ち直れなかったわ。だってこれって、「あなたは糞以下の人間よ」と言われているのと、同じ事なんだもの。人の気持ちは分からないクセに、自分はしっかりとそうやって傷つくなんて、世話無いわよね。

 だからわたしは、そういう事を“分かるフリ”をするようにしたの。お陰でそれ以降、ミリアさんがわたしの事を悪く言う事は、一切無かったわ。


 ギリノアを襲う日、わたしはいつも通りの一日を過ごしたわ。何も特別なことはしなかった。ひとつだけあるとするなら、ミリアさんと最終確認をしたことくらいかしら。

 夜が更けて、わたしはギリノア城下町の入口に立った。夜の光が上がらない今夜は、松明やかがり火がないと辺りは全く見えない。黒装束に身を包んだわたしは、誰からも見えることはない。

 実際、この場所から門兵が二人見えるけれど、銀色の鎧を着ているその兵士すら、暗闇に溶け込んでしまいそうなほどだったわ。

 城下町は高い塀に囲まれているから、よじ登って入る事はできないし、そもそも今回の任務は、「ギリノアの皆殺し」だ。それは門兵も例外ではないの。

 塀伝いに忍び寄る。そして門兵の首筋を、持っていたナイフで一突き刺して、抜かずにそのまま倒れようとする体を、ゆっくりと地に寝かせる。ナイフをすぐに抜いてしまうと、血が落ちる音で周囲に気付かれてしまうからよ。兵士の体は、鎧を着ているから相当な重量はあったけれど、足の置き方や腰の使い方も学んでおいたから、音も無く寝かせる事が出来たわ。

 寝かせたところで、ゆっくりとナイフを引き抜く。

 もうひとりも、同じ要領でやる。

 人を一瞬で殺すなんて、十一の年からいくらでも学んでいたから、失敗する可能性を考えることは一切なかったわ。

 ふたりをあっさりとやって、門に備えてある梯子を昇る。見張り場の男も、静かに葬った。

 わたしはそこで思ったわ。こうもあっさり殺されて、この人たちの人生って、いったい何だったのだろう。って。

 お母さまのおはなしで、「人は、何かを成し遂げる為に生まれてきているんだよ」というものがあった。わたしにも、きっとあるのだろうけれど、これからわたしに殺されていく人たちは、一体何のために生まれ、何のために育ってきたのだろう。そう思う。

 見張り場から城下町を見下ろす。ところどころに見える、小さな明かり。しかしこうも暗くては、そのかがり火も、もはや意味をなしていなかったわ。

 ここに、いったい何人の住人がいるのだろう。想像するだけで、呼吸が浅く、早くなった。これから始まる殺戮に、血が沸いたわ。



 第十三話「リィゼ 中編」 終わり


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