第十三話「リィゼ 中編」5
そこで、国が何故村を襲ったのか、教えてもらったの。
村はかつて、国の教えに従っていたのだけれど、カルテナ教団の施しを受けて崇拝する者が増えたわ。そこでその人たちは、初めて神と悪魔の存在を知るの。村人というのは、最低限の教育も受けずに育つ人が多いわ。それもあって、神の存在や悪魔の存在も知らずに大人になるケースが殆どだった。わたしは、お母さまがおはなししてくれていたから知っていたのだけれど、お母さまのおはなしがなかったら、わたしも知る由は無かったわ。
そして神と悪魔の存在を知った村人の中で、神の封印を解くべきなのでは、と考える人が出たり、悪魔を解き放つべきなのでは、と考える人が多くなっていたそうなの。国の罰則を受けてしまうから、もちろん公言する人はいなかったのだけれど、もうずいぶん昔からそういうモノが水面下で広がっていたらしいわ。
しかしどのようにかは分からないけれど、カルテナ教団や聖紋守連、それにトーチライト教団を崇拝する者が増えたことが、村を統括しているギリノアに知れてしまったらしいの。ギリノアが国へ報告すると、国は、村人を異端者として、ひとり残らず処刑することにした。
これが、村が襲われた理由だそう。
ミリアさんは、お城へ向かう道中、村の様子がおかしいから見に来たと言っていたわ。あの時ミリアさんが通っていてくれなかったら、わたしは路頭に迷って、死んでいたかもしれない。ミリアさんは、命の恩人なの。
わたしが十五になる年、マルディス猊下に呼ばれたわ。
「ギリノアの民を、殺して来い」
いよいよ来た。そう思ったわ。
猊下に言われたその時、わたしはどんな顔をしていたかしら。皆目見当もつかないけれど、ミリアさんからは「相当嬉しいみたいねー!」と笑われたわ。
これまで、教団の監視下でしか人を傷つけられなかったけれど、とうとう好きに出来る。そう思ったら、忘れかけていた昂りが、全身を駆け巡ったわ。おへその下がもぞもぞして、両膝が笑う。全身の毛が逆立ちする。
決行の目的は、ギリノアの城下町を皆殺しにすることで城を混乱に陥れ、その隙に陥落させるというところらしかった。王様殺しも提案したのだけれど、許可されなかったわ。王様には絶望を思わせなければいけないから、と言っていたわ。
しかしミリアさんは、やはり王様を殺してほしそうだった。王室を出た時に「やっぱりさ、王様もやっちゃおうよ。お父さんとお母さんの仇なのよ」と言われたの。
ミリアさんは何か隠しているようにも思えたけれど、王様に固執する理由は聞かなかったわ。以前聞いたのだけれど、とても冷たい目で睨まれたから、聞かないように決めたの。わたしにだって、大好きなミリアさんにも教えたくない秘密、ひとつやふたつあるもの。そこを追求するなんて、女としてナンセンスだわ。
王様殺しに関しては、最初にミリアさんに持ち掛けられたあの時、既にやると決めていた。だから、やる。
決行の前夜は眠る事が出来なかったわ。どんな風にして人に恐怖を与えながら殺そうか、学んだ方法よりも、もっと残虐な手段はないのだろうか。そんな事ばかり考えていたわ。
けれど、時間は一夜しかない。ひとりひとりに時間は割けない。そこでわたしは、やる人間を二人に絞ったわ。家庭を持っていない、大人の男を二人。
ひとりは、屈強そうな人がいい。なかなか死ななそうだし、なにより、まさか自分がやられるなんて思っていないだろうから、死を前にしてどの様な顔をするのか見物だもの。
もうひとりは、その逆にしようかしら。痛みに耐性のない、かつてわたしが思い描いた理想の人間。
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