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第十三話「リィゼ 中編」4

 捕虜っていうのは、捕らえてただ拷問するだけじゃないの。その人の血筋、家柄、出自、そして位なんかを徹底的に調べるの。それによって、捕虜をどのように利用するかが決まる。

 例えば、兵士で位も上の方なら、人質として城との取引に使えるから、傷をつけてはならない、とかね。下の方でも、はい拷問しましょう、じゃあないの。その人はその人で、脅しをかけてこちら側に付かせ、スパイとして利用する、なんてやり方もある。下の位の人間は、忠誠心もそんなに高くないしね。

 じゃあ拷問はいつするのかって言うと、これが、実はなかなかその条件に当てはまる人がいないの。

 条件としては、位が下の方で、家族があって子供がいる、それでいて忠誠心が強い人間。

 家族があって子供がいるというのは、守りたいものがある人は、口を割らないと自分が死んで家族を路頭に迷わせる事になるかもしれないからよ。子供がいなければ、奥さんはまた新しい男を見つけるだけだけれど、子供がいるとそうもいかないの。だから逆に、家族が無い人は、そもそも拷問にはかけない。

 家族が無くても、痛みに耐えられず口を割ることもあると、わたしは思うの。それなら家族のない人も拷問にかける価値はあるように思えるのだけれど、これは、偽りの情報を吐かれない為の予防策だそう。

 吐かれた情報は、こちらとしてはすぐに確かめる手立てが無いの。だから、一度真偽を確かめて、捕虜を解放するか、捕らえたままにするかを決めるのだけれど、偽りの情報だった場合は、また拷問にかけなければいけない。それは、無駄な時間や労力を費やすることになるわ。

 それが家族持ちだと、「偽りの情報だった場合は家族の身も危うくなるぞ」という脅しをかけておくことができるの。

 最後の忠誠心は、これはただ単に、忠誠心が低い人はすぐに口を割っちゃうから、そもそも拷問をするまでもない。「拷問」という言葉を口にしただけで、簡単に口を割る兵士もいたくらいよ。

 そういうことで、なかなか拷問をする機会はなかったの。


 教わったことはそれだけではないわ。暗殺の技術も学んだ。音を立てずに走る術や、気配を殺す呼吸法、人の癖や隙を見抜く目。刃を振るう角度、闇に身を溶かす術、そして、ためらいを捨てる心構え。もっとも、最後のひとつはわたしには必要のないものだったわ。

 それと共に、カルテナ教団の仕組みや思想、国との対立構成、トーチライト教団と聖紋守連の勢力関係なんかを学んだわ。


 カルテナ教団は、主に悪魔の力を利用して、世界統一を目指す団体。神の力ではなく悪魔の力を利用する理由は、悪魔の力があれば魔法を使う事も出来るし、神は唯一の存在なのに対し、悪魔は複数体存在しているため、集まれば神の力をも凌駕するという思想があった為だそう。

 そして国が目指すところは、こちらも世界統一ではあるのだけれど、神と悪魔の存在を、どちらも消すというもの。そうすることで、民は不公平のない平等な生活を送る事が出来る。そう考えられていたらしいわ。

 現在は神も悪魔も封印しているけれど、いずれ、どちらとも消滅させるのが目的だそう。

 次に、聖紋守護聖教連盟せいもんしゅごせいきょうれんめい、通称、聖紋守連。この連盟の思想は、神や悪魔の復権よりも「双方の秩序を守り続ける」ことに重きを置いているわ。封印のバランスを壊してはいけないと考え、むしろ封印維持派。正統教会とは少し距離を置く秘密結社ではあるのだけれど、表立っては教会として機能しているわ。

 古文書の保管や封印監視を行っていて、密偵・古儀の維持、封印技術の継承を行うらしい。必要ならば封印者の隠匿、保護なんかも行っているみたい。しかし内部では、封印を守る派閥の「保守派」と、魔物が狂暴化した今では封印を解くべきと謳っている「改革派」がせめぎ合っていると言うわ。

 それから、トーチライト教団。こちらは、悪魔を駆逐して、一刻も早く神の封印を解くべきだと主張する団体よ。手段を選ばない急進派で、聖紋守連の改革派が独立した教団。

 この四つの思想があるのだけれど、いずれも、胸に抱く正義があるみたい。


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