第十三話「リィゼ 中編」3
ミリアさんも、お母さまと同じ様に、色んなおはなしを聞かせてくれたわ。あ、でも、内容は全然違ったけれど。
ミリアさんは主に、魔法についてお話してくれたわ。これまでに自分がどんな経験を経て、魔法を身に付けたのか。その魔法を駆使して、どのような苦難を乗り越えてきたのか、そういったおはなしよ。
わたしはミリアさんの人柄がとても好きだった。とても明るくて、いつも笑っていて。一度は、クルエラさんに怒られているのに、大きなお口で笑っていたことだってあったわ。わたしにはそんな芸当、とてもじゃないけれど身に付けられっこないと感じたわ。けれど、そんな風になれたらいいな、とも思ったわ。いつも笑って、周りの人間に幸せを振り撒く。これがどれだけ素敵なことか、出来ないわたしだからこそ分かったわ。
ある日、いつものように、夜の寝る前にミリアさんが部屋を訪ねて来たの。今日はどんなおはなしを聞かせてくれるのかと思ったら、その言葉を聞いて、わたし目が飛び出るかと思ったわ。
「ねえリィゼ、人を殺した事って、ある?」
いつもの様に、屈託ない笑顔でそう言うものだから、わたしったら、とんでもない顔をしていたかもしれないわ。そうして改めて落ち着いて、“あの時の夜”のことを思い返した。わたしが言いあぐねいていると、ミリアさんは両手を振って「あ、村を襲われた時の、あの兵士は無しにしてよ。その他に、ある?」と言ったわ。何だかわたしが思っていることが全て筒抜けになっていたようだったので、魔法でも使っているのかと思ったわ。だからその事を聞いてみたのだけれど、笑われてしまったの。ただわたしの顔色を見ていただけらしかった。
わたしはもちろん、“あの夜”以外で人殺しなんてしたことはなかったので、そのように伝えたの。すると、今度はこんな事を聞いてきたわ。
「ギリノアの兵士たち、憎くない?」
ギリノアというのは、大きな城下町を持つお城の事で、国が統括している所よ。村を襲ったのがここ。
微笑んではいたけれど、なんだか、目に差す光が鋭い様に感じたわ。またわたしが答えずに俯いていると、ミリアさんは再度、仰天するようなことを言ってきたわ。
「お父さんとお母さんの仇、討たない? 命令をした王様、殺したくない?」
言われて、お父さまとお母さまの、優しい笑顔が浮かんだわ。でも、仇を討つというのなら、村を襲うよう命令をした王様を殺すのは、少し違うような気もしたわ。仇って、殺した人を殺す、って意味じゃないのかしら。でもそうなると、誰がお父さまとお母さまを殺したかなんて、分かりっこないわ。だからわたしこう答えたの。
「ギリノアの、全員を殺したい」
そう言ったら、ミリアさん、大声で笑ったわ。わたしは何で笑われたのか分からず、目をしばたたかせたけれど、その理由はすぐに分かったわ。どうやらわたしが、思っていた以上に“危ない子”だったからだそうだ。
命令をした王様はどうしたいのか聞かれたけれど、そのことに関しては、さっき思ったことを伝えたわ。すると理解してくれた。けれどミリアさんは、何度も「王様を殺すことが、本当の仇討ちなのよ」と伝えてくるので、「ミリアさんはきっと、わたしに王様を殺してほしいんだわ」と気付いたわ。ミリアさんのことは大好きなので、そこで、首を縦に振ったわ。
わたしがまだ、十一の年よ。
それから四年間、人の壊し方を徹底的に学んだわ。実際に拉致してきた、どこの誰かも分からない人を使って、間接の折り方や砕き方、どうすれば即死させられるか、どうすれば激痛を与えられるか、そういった教育を受けたわ。
実際に、拷問の手伝いをさせてもらえる事もあった。爪を剥いだり両手両足の腱を切ったり引きちぎったり、歯を抜くこともあったし、片目をえぐり取る事だってあったわ。人が悶絶する表情は、例え様のないほどそそるものがあった。けれど、わたしのやりたい、“内臓を見せつける行為”は、許されなかった。大事な捕虜を殺す訳にはいかなかったから。
けれど、拷問の末に死んでしまうこともあったわ。その度、「ああ、もったいない」と思ったわ。
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