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第十三話「リィゼ 前編」2

 けれど最近お父さまが、わたしとお父さまでご馳走を振舞ってあげた方が、お母さまはきっと喜ぶんじゃないかって言っていたの。お母さまには笑って欲しかったから、次のお誕生日までにはお料理を勉強して、美味しい物をたくさん振舞ってあげる事にしたの。そのこともお母さまに言うと、またにっこりと微笑んでくれたわ。

 さっそくお料理の勉強のため、お母さまに指示を仰いでお手伝いをする。

 畑で取れたじゃがいもやにんじん、その他にもたくさんのお野菜を表に持って行って、村の水汲み場で土を洗い落とす。

 そうしていると、そこにいたおばさま方に「お手伝いかい、偉いね」と褒められた。けれどわたしもそろそろ、お手伝いじゃなくて、自分の仕事としてお料理をしなきゃいけない歳だという事も自覚していた。なお一層、来年への目標が明確になったわ。

 お料理の支度をしていると、お父さまが帰ってきた。まだ光は高いというのに、どうしたのかと尋ねると、お母さまのお誕生日だから早くお仕事を切り上げたのだそう。

 わたしは嬉しくなって、お父さまの腕に跳んでしがみついて、ぶら下がった。お父さまは力が強くてかっこいい。体も大きいけれど、腕だってとても太い。

 こんなに大きな子を産んだおばあさまは、さぞかし大きいのだろうと思っていた幼少期は、初めておばあさまに会った時、あまりに小さい体をしていらっしゃったのでとても驚いた記憶があるわ。

 そんなお父さまは本当に大きな体をしているけれど、とても優しい。お母さまも優しい。そのことをよくお友達に言われるのだけれど、その度にわたしは、とても幸せな家庭に生まれたんだなって、得をした気持ちになるの。

 お父さまとお母さまがよく言っていたのは、「我が身より、人を愛しなさい」という言葉だったわ。生活が貧しくても、より困っている人がいれば、食を分け与えなさい。という教えだった。実際にわたしたち家族は、畑を持たない家庭で食に困っているところがあれば、いとわず食べ物を与えた。

「うちは畑があるから、いくらでも野菜が取れるわ」

 それが母の口癖だったわ。

 もともと小さい村ではあったのだけれど、それにしても、その家訓もあって、村の中ではとても声を掛けられる家柄となっていたの。

 お母さまもお父さまもすんなりは受け取らなかったけれど、お野菜を分けた家庭からは、必ずお返しもあった。わたしもお外を歩いている時に、突然お返しの食料を貰ったことだってある。

 時々、お返しの方が多かったりすると、「どうしてこんなに返すのだろう」と思うのだけれど、お母さまはそれを「ありがとうって気持ちを、貰った分に足して、お返しして下さっているんだよ」と教えてくれたわ。そうなのか、とそこで理解をして、忘れないように覚えておくことにしたの。

 夜になって、ようやくご馳走がテーブルに並ぶ。

 いつものお野菜を使った煮物や汁物も、いつも作らないような、手の込んだお料理に変身していたわ。そしてお祝いの時にだけ潰す、兎と鶏の肉も並んでいた。

 いつも家畜を潰す時は、わたしは家の中にいるように言われるのだけれど、わたしが大きくなってきたからか、「そろそろ、お前にも潰し方を教えておく」とお父さまに言われて、その日初めて納屋に連れて行ってもらえたの。

 納屋には色んな道具があったわ。お父さまが畑仕事をしている時に使っている桑や鎌、それにすきなんかが壁にかけてあったわ。刃が綺麗に研いであって、どれも光を反射していたわ。とてもよく切れそうだった。

 納屋の片隅に、兎と鶏の檻があるのだけれど、そこに近づくと、お父さまが餌をくれると勘違いした子たちは、すぐに近寄って来たわ。

 わたしは少しドキドキしながら、お父さまが兎と鶏を掴む様子を見ていたの。掴み方は少々乱暴だった。聞くと、両手だと優しく捕まえられるけれど、一羽ずつ掴むとなると片手しか使えないから、さっと捕まえないと逃げられると言っていたわ。

 やってみろと言われて両手で捕まえようとしたら、片手でやるように言われたの。お父さまに言われた通り、少し乱暴にはなったけれど、兎の首を掴むようにして思い切り捕まえてみた。


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