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第十三話「リィゼ 前編」1

 ※第十三話は、少々過激な表現が含まれています。スプラッター系です。苦手な方は、薄目で読んで下さい。


*****


 わたしは、寝る前の時間が大好きだった。藁を閉じ込めたふわふわのベッドの上で、お母さまがおはなしをしてくれるの。どんなって、色んなおはなしよ。王様がどんなにいい人かだとか、周りには親切にしなさいだとか、そんなおはなし。

 その中でも、わたしがとっても好きだったのは、封印されている神様と、どこかの誰かに封印され続けている悪魔のおはなし。

 神様はひとりだけど、悪魔は何人もいるんだって。

 神様の力を利用して、最初に悪魔を封印して、そのあとに神様を封印したって言っていたわ。人だって何人も死んだそうだけれど、その人たちのお陰で、今わたしがこうしてゆっくりとお茶を淹れていられる。

 とっても昔のおはなしだそうだけれど、実際に起きたって言うのだから、その時の様子を思い描いただけで全身の毛が逆立ちしそうになる。恐いおはなし。

 けれど、そんな恐いおはなしが、何も起きない平和な村で暮らしているわたしにとっては、ひとつのスパイスになっていたの。毛が逆立ちしながらも、そのおはなしを聞く度、おへその下辺りがむずむずして、「人がたくさん死んだのか……見たかったなぁ」と思った。

 一度お母さまにそう言ったのだけれど、その時のお母さまの悲しいお顔といったらなかったわ。人が死ぬのを見たいという願望は、公言しない方がいいと覚えたわ。

 お母さまは本当に優しかった。いつもわたしを「リィゼ、愛しているよ」と抱きしめてくれた。

 やせ細ったお母さまの体は、少し骨ばって堅いところもあった。けれど、抱しめられる度、胸の奥が温かくなったわ。

 お茶を淹れてお母さまに運ぶと、にっこりと微笑んでくれた。

「ありがとう、リィゼ」

 わたしもにっこりと微笑んで返事をする。

「まだ熱いから、冷まして飲んでね。そうでないと、舌を火傷して、晩御飯も美味しく食べられなくなってしまうわ」

 お母さまはまたにっこりと微笑んで、「そうだね」とお茶を冷ます。

 お母さまはいつだってわたしの髪の毛を褒めてくれたわ。「リィゼの髪は桜色で、とても綺麗だね」と、よく優しく触れてくれたの。その度わたしは、心が温かくなったわ。

 表へ出ると、光はそれなりに高くなっていた。わたしは時間の数え方をよく知らないから、今が何刻だろうか分からないけれど、向かいのおじさまが畑仕事をしているから、きっといまは三刻半くらい。おじさまが畑仕事をするのは、「三刻から四刻にかけて」と以前お父さまが言っていたのを覚えているから、きっと間違いないはず。

 今日はお母さまのお誕生日だから、近くの広場までお花を摘みに行くの。ほんとうは、山の上に咲いている大きくて黄色いお花を摘みに行きたいのだけれど、ひとりで山へ登るのは止められているものだから、諦めて広場の小さいお花で我慢する。それに、大きくて黄色いお花をお母さまに渡したとしても、わたしが言いつけを守らなかった事で、きっと悲しい顔をするはずだもの。あの雰囲気は、空気が重くなって過ごしにくくなるから避ける様にしているの。

 広場のお花をいくつか摘んで、お母さまにはバレないようにこっそりと家の裏に隠しておく。

 お母さまは今回のお誕生日で、わたしを産んで十一の年を数えるというわ。だから、今回で三十の年になる。

 弟か妹が欲しかったのだけれど、わたしを産んだのも遅かったみたいで、わたしひとりだけにしておこうって、お父さまとお母さまでお話していたんだって。

 土間に入ると、お料理のいい香りが鼻をついた。お母さまのお誕生日だけれど、わたしもお父さまもてんでお料理は出来ないの。だからお母さまが自分でご馳走をこしらえるのよ。わたし達がお祝いをする、そのお返しに準備をしているんだって、そう言っていたわ。


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