第十二話「歪んだ鑑定」4
(トウカは殆ど飲めなかったらしい)お茶を飲み終えると、早速部屋を移動した。
別の部屋へ入ると、ルガートがすでに待ち構えていた。ルナリスはラァラによって、すぐに椅子へ座らせられ、頭部に、両手両足に、いびつな器具を取り付けられた。そして、試験管に入った緑色の液体を飲まされた。ルナリスの表情は不安に満ちており、俺を見たり辺りにキョロキョロと視線を泳がせたりしていた。
不安なのは俺も同じだ。ここで魔王を封印していることがバレてみろ。せっかく昨晩みんなで生き抜いたってのに、ここで旅が終わっちまうのか? ここに来るまでにいくらでも時間はあったろうに、ミリアの死別や、全滅の危機、それに安堵してからのノクティアの喧騒。そういった事で脳内が忙しく、ルナリスの鑑定の事をすっかり失念していた。
決して、“今日の夜は酒が飲めるぞ”なんて事で頭がいっぱいだったってわけじゃあない。決してだ。
不安そうにしているルナリスに、ガルドが言葉をかけた。
「大丈夫だ。すさまじい魔力を秘めている事が分かれば、陛下も認めて下さる」
そうか。結局魔法を披露出来なかったルナリスの力に、王様は疑念を抱いていたに違いない。しかし、信用のあるルガートや大臣に“すさまじい力を見た”と言われ、それでラァラに鑑定を依頼したのか。「何かしら助力を望めるだろう」とか言っていたが、その実はそうだったらしい。
ラァラは手際よく、装置のあちこちにあるスイッチを、上げたり下げたりした。それが何の装置で何の動作をするものかは全く分からないが、ひとつひとつ動かす度、作動音がひとつずつ増えていく。
機械の作動音はさらに不安を招くのか、何かの音が増える毎に、ルナリスはそちらへいちいち視線を動かしていた。
「さぁーって、やりますかねぇー」
いそいそと機械をいじっていたラァラは席へ戻ると、お尻を叩きつけるように座った。すると今度は、機械を足蹴にしつつ、キャスター付きの椅子ごと滑りながらあちこちに移動した。
「これをこうして、こっちはこうで……おっけい! ルナリスさん、準備はいいですかー!?」
そう言われると、ルナリスはこくりと小さく頷いた。
「それじゃあいきまっす! あ、ちなみに、ルナリスさんの魔力は、このメーターで分かります」
ラァラはそう言って、“針が付いているメーター”を指さした。
このゲージの針が上がるとルナリスの魔力は認められるらしいが、悪魔を封印している場合も検知されるという。何かがどうかなって、検知を免れないだろうか。
ラァラが赤いボタンを押すと、機械はこれまで以上に大きな音を立て始めた。
機械のメーターを見ていると、徐々に針が上がり始めた。ゆっくりと上がっていた針は中心辺りで上昇を止め、そこで小刻みに揺れるばかりとなった。ラァラは頬杖をついてゲージを見つめている。ため息をつくその姿から察するに、もう何度もこの鑑定を行っているのだろう。
この世界では、魔法なんて珍しいものでもなんでもない。鑑定をして、いつも通りの結果が出る。それだけの工程に、飽きが来てもなんら不思議ではない。
しかしその時、備えてあった赤いランプが点灯し、機械から「ビー」と警告音が鳴った。
するとラァラは、「こ、これは!」と立ち上がり、眼鏡を輝かせてルナリスを見た。
ゲージの針は、尚も真ん中で震えているだけではあった。これは、“ルナリスにはそれなりに魔力がある”という事を示しているのだろうが、この赤いランプと警告音は、一体何なのだろう。もしかしてこれが、“悪魔の力を秘めている”というサインになるのだろうか。
ガルドもトウカも、ラァラとルナリスを交互に見るばかりだ。誰も結果を知らない中、聞かずとも知る俺は、ただただ、この後ルナリスがどうなってしまうのか、不安な気持ちに駆られていた。
間もなくすると、足元に響いていた振動は止み、警告音と機械の作動音も止まった。
ラァラは尚も立ち上がったまま、機械に乗り出すよう手をついて、興奮冷めやらぬといった具合で言った。
「ルナリスさんっ、あなたは一体……!」
ルナリスは憔悴困憊と言った具合に、緊張していた体をだらりと椅子に預けた。
「そ、それで、どうだった?」
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