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第十二話「歪んだ鑑定」3

 ラァラはいそいそと飲み物を準備してくれた。俺たち四人の前に、湯気の立つカップを出すと、口を開いた。

「さてさて、私は魔導鑑定士のラァラと申します。主に魔法や悪魔や神、それに魔王についても少々調べている研究者です。この度は国王より、“ある者の魔力を鑑定してほしい。”と仰せつかっています。報告の流れは、先ほどルガートさんからあった通りです」

 くそ、やっぱりか。大臣は一切「ラァラに鑑定してもらえ」なんて言ってはいなかった。「何かしら助力が望めるかもしれない」と言っていたのだ。ルナリスの内なる力がバレてしまうかもしれないが、ここは、断っても返って怪しい。仕方がないが、鑑定を受けるとしよう。

 そうやって不安ながらも辺りを見る。ガルドもルナリスもカップを手に、温かいお茶を飲みながら聞いている。ちょっと気になってトウカを見ると、舌をお茶に、ゆっくり伸ばしていた。が、舌がついた瞬間、体がビクッと跳ねた。

 俺がニヤついて見ていると、視線に気付いたトウカは、舌先をちょろっと出したままこちらを睨んできた。お茶はそんなに熱いとも思えないのだが、猫は大変だ。

「そのある者というのは、そちらの女性の方ですかね。ヴォルグの山をひとりで片付けてしまったとか。しかもどの遺体も、凄惨な状態だったと聞きます」

 瓶底眼鏡によって無表情が際立っていたが、次の瞬間には、その硬い表情が一変した。ラァラは口角を上げ、眼鏡をクイと持ち上げた。

「そして何より一番興味深かったのは、『もしかするとその者は、“朱の詠唱”を唱えていたかもしれない。』というところです。時間があったので、ルガートさんにも聞きました。それはもう、とてつもなく壮大な威力だったと仰っていました!」

 ラァラは眼鏡をぎらつかせ、俺たちを見ている。俺が思っている以上に、ヘビーマジックは価値が高いらしい。

 ヘビーマジック。かつては神と対峙した悪魔が使っていたと云われ、今ではレッドスペルと呼ばれる“神を封印している者”のみが使えるとされている魔法。だとか言っていた。

 これからルナリスを調べると言うが、もし、ルナリスがヘビーマジックを使う事が出来ると認定された場合、どうなってしまうのだろう。どこかの研究機関で、徹底的に調べられるのか? 前例のない“初級的重魔法”を使える者として、研究材料にはうってつけなはずだ。

 それだけでは事足りず、ルナリスの中の脅威、“魔王”の存在が鑑定によって判明した場合、大事に至ることは明白だ。それこそ旅は中断され、魔王を封印する為、ルナリスを監禁してしまう可能性もあり得る。ことによっては、魔王を討つ為に、ルナリスが犠牲になるという事も考えられる。

 そんな事を考えていると、ラァラの言葉が俺の胸を締め付けた。

「これから行う鑑定では、その方のあらゆる魔力をも測定できます。潜在魔力はもちろん、例えばその方が“封印者だった場合”にも、体内の悪魔の存在も分かっちゃいます」

 瓶底眼鏡をくいと持ち上げ、得意気に微笑む。

 やはりそうか。ルガートは、ルナリスをこのラァラに調べさせるよう仕組んだ張本人だ。魔力を調べさせるのは口実で、俺が懸念していた通り、ルナリスの内部の脅威について調べようとしているのだ。

「私が依頼されている内容としてはその辺ですねー」

 ルナリスも“魔王”という言葉には動揺したらしく、カップを置く手が震えていた。こいつも気になっているのだろう。ルナリスは小さく手を挙げた。

「あのぉ、もし封印者でもないのに、その人の中に悪魔がいた場合って、それでも悪魔は検知されたりするんですか?」

 そう言えばこいつはまだ、“自分が封印者だ”という事を自覚していなかったな。その問いについては確かに気になるが、同時に俺は絶句していた。今から調べられようってやつがそんな事聞いたら、自分がそうなんですって言ってるようなもんじゃねえか。俺は鼓動が早まるのを抑え、ゆっくりとラァラを見た。するとラァラは、ニコっと笑って早口で答えた。

「もちろん検知されます一発です即分かりですさっ鑑定しましょうっ」

 ルナリスは眉を下げ、露骨に肩を落とした。こいつは“なんとしても隠し通そう”、という気概はないのだろうか。


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