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第十二話「歪んだ鑑定」2

 髪の毛は寝ぐせだらけで、アホ毛があちこちから飛び出していた。身を包む白衣は皺だらけで、身の丈より一回りも二回りも大きいサイズなものだから、手は袖口にすっぽりと隠れていた。

「ようやく来たか。遅かったな」

 唐突に部屋の奥から男の声が聞こえた。その声主は、ぬっと姿を現した。そいつは見覚えのあるやつで、気が付くと、俺は握り拳を作っていた。

「ルガート、お前……よくもやってくれたな」

 俺たちが森の闇に飲みこまれそうになっているのを、こいつは高みの見物でもしていたのだろう。無表情のこの男が、ミリアを殺したのだ。こいつだけは、許せない。

 肩を震わせていると、ガルドの手が俺の拳を優しくなだめて、一歩前に出た。

「ルガートも来ていたのか。して、何の用だ」

 俺の拳をそっと抑えてはくれたが、震えるガルドの声を聞いて分かった。彼もまた、怒りを腹の底に押し留めているらしい。ルガートは意に介せずといった様子で、淡々と話す。

「レンが何の事を言っているのかは分からないが、ルナリスの魔力鑑定に、俺が立ち会うようにと仰せつかったのでな。そしてガルド、俺の方が位は上だ。口の利き方には気をつけろ」

「……。これは失礼しましたな。ルガート殿が立ち会い、国王に結果を報告するのです?」

 ガルドは腕を組み、長身を生かしてルガートを見下す様に言った。するとルガートは、嘲笑の含みを見せて答えた。

「フフッ、目上の人間への態度もなっていないな。どの様な育ちか伺い知れる。まあ、その通りだ。結果が分かり次第、即座に国王へ報告を入れる。ルナリスの魔力が乏しい場合、派遣隊は解隊される。しかしそうは言っても、俺はルナリスの魔法を見たと、大臣ともども国王へ報告をしている。今回の鑑定の結果も、自己防衛の為に虚偽の報告をする事が懸念されている。そこで、鑑定結果の報告は、ラァラに直接、国王へ報告してもらう事となっている」

 ルガートはそう言うと、俺たち三人をそれぞれ見て、「フッ」と鼻で一つ笑い、奥へと消えていった。

「あいつ、八つ裂きにしてやろうか」

 背後でトウカが低く喉を鳴らせた。

「お前の気持ちは分かるが、ここは堪えよう」

 そう言ってトウカへ頷いて見せた。

 トウカの意見には賛成だったが、さすがにそこまでするわけにもいかない。そして、あいつの魔法は本物だ。返り討ちにされるのが関の山だろう。力量で劣るのなら、あいつの裏をついて、証拠を集め、俺たちを潰そうとしている事を王様に報告する方法がスマートだ。いつか、きっと吊るし上げてやる。


 ルガートが去るのを全員で見送ると、俺たちは軽く会釈をした。ラァラもうやうやしく頭を下げた。

「ささ、中へどうぞ」

 招かれるまま中へ入ると、すぐに地下室へと通された。先導するラァラのアホ毛が、降りる階段に合わせてホワホワと跳ねている。

 階段を降りるにつれて徐々に暗くなり、扉に突き当たった。その扉からは、部屋の中の灯りが漏れていた。

 ラァラが扉を開けると、そこにはルナリスの村“アリオス”でも、城でも見なかったような研究設備が並んでいた。

 液体の入ったフラスコや試験管、それに自動で動いて液体や粉末を撹拌かくはんさせている機械。テレビでしか見たことがなかったが、本当にこういう物を使っているのだなと、色んな所に目がいった。

 ルナリスも初めて見たようで、ひとつひとつ、食い入るように見ていた。

 その研究設備を抜けさらにドアを開けると、応接室の様な部屋に入った。促されるまま全員ソファに座る。


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