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第十二話「歪んだ鑑定」1

 ノクティアに入ると、左右の露店が俺たちを出迎えた。

 何の肉かは分からないが、美味そうな串焼き。それから、パン、果物、焼き菓子、そういった食べ物から、刃物や鍋、骨董品、呪物、鉱石、色んな市が所せましと並んでいた。

 今が真昼間だからなのだろうか。人も獣人も多く、活気に溢れる市場だった。ルナリスが“夜の方が賑わう街”だとか言っていたが、この時間でこれだけ賑わっているのだから、夜の繁華街がどれだけ華やかなのかは容易に想像ができた。

 歩く人も、色んな人が見られる。酔っぱらって千鳥に歩く老人、値切り交渉をするおばさん、人混みを縫って走る子供たち、そして取っ組み合いの喧嘩をする獣人。人混みを歩くだけでも気が滅入るというのに、こうも情報量が多いと、脳が焼けてショートしてしまいそうになる。

 街並みは、大小さまざまな切削石を積み上げた建物が目立った。もちろん積み上げただけではなく、隙間には凝固した流動体の様なものが見られる。これで固めているのだろう。所々もろくなっている箇所もあるが、修復した箇所も見当たる。しっかりとメンテナンスはされているらしい。

 一区画の市場を抜けると、また市場が広がった。今度は、円形の広場に並ぶ市場だった。ここは、先ほどの市場の道よりも人が多く、休日なのだろうかと思えるほどごった返していた。

 いつの間に買ったのか、ガルドが俺にリンゴを手渡した。かじってみると、リンゴではなかった。桃の様な肉の柔らかさに、果汁が溢れ落ちた。とてつもなく甘くて美味い。こんなに美味い果物があるのなら、これを利用した酒もあるだろう。一段と、夜の酒場が楽しみになった。

 トウカは出発する時にもらった地図を見つつ、俺たちを先導する。猫のスキルなのか、人混みをものともせず、スタスタと歩く。そんなもんだから、おいて行かれないように必死なルナリスは、人とぶつかりまくっていた。街に入るなり、何も言わずガルドが最後尾についた。この事を懸念していたのかと、配慮に脱帽した。

 市場を抜けると、今度は緩やかな坂道に入った。ここは裏道なのか、今までの人混みが嘘のように、がらんとしていた。道幅は二メートルあるかないか、といった具合の狭さだ。田舎のばあちゃんち付近の、住宅地を思い出した。

 俺たちを挟む白い石壁が太陽を反射して、目が焼けそうになる。ゲレンデ以外で目がやられそうになるとは、思いもしなかった。

 坂を上って上って上って、ようやくトウカが足を止めた。

「ここのようだ」

 持っていた紙を袖にしまうと、トウカは玄関の金具を鳴らした。

 ここに“ラァラ”とかいう学者がいるらしいが、どんな人なのだろう。学者というだけあって、堅い人間なのだろうか。頭でっかちのやつは苦手だが、ここでルナリスを診てもらうだけだ。終わったら即座に退散するとしよう。

 間もなくすると、中からドタバタと、こちらへ急いできている様子が伺えた。足音だけではなく、ガラスが割れる音、空き缶が転がる音なんかも聞こえてきた。俺たち四人が入るスペースはあるのかと心配になったが、それはルナリスも同じだったらしく、眉を下げて俺を見た。ガルドは呆れた様子で微笑んでいた。

「お待たせしましたっ、いや、お待ちしておりましたー!」

 勢いよくドアが開けられると、中からはトウカとほぼ同じ背格好の女の子が出てきた。かけている眼鏡は分厚いもので、所謂“瓶底眼鏡”というものだった。こんなに分厚い眼鏡をしている人は初めて見たが、本当に目が見えないのだなと妙に感心した。


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