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第六話「魔王少女」4

 しかしその前に、この世界に酒はあるのか。食べ物なんかは魚や木の実、それに何かの豆だとか、そんな物ばかりだ。元の世界と同じ様な物を食べているのだから、酒もあるのだろうが……。一応確認しておくか。

「なあルナリス。この世界に、酒ってあるのか?」

「お酒ですか、ありますよ。……。あー、レンさん飲みたいんですか?」

 ルナリスは首を傾げて、口角を少し上げて目を細めた。

「まあな、しばらく飲めてなかったし、酒はどちらかと言うと好きなんだ。この世界の酒も味わってみたくてな」

「やっぱりぃ。それでは、ノクティアにお酒が飲めるお店もあるはずなので、一緒に行きましょう。楽しみですね」

「え、ルナリス酒飲めるの?」

 意外な返答に、俺は目を丸くした。

「ええ、飲めます。多くは飲めませんが、わたしもお酒好きですよ」

 ……姉さん、それは意外すぎです。

「それじゃあ、飲みに行くか」

 まさかルナリスが酒が好きだとは思わなかった。というか、そもそも未成年なのに――いや、「未成年だから」だとかそういう概念がないのかもしれない。

 以前雑誌の調査取材で、ひとつの種族だけで長年成り立っている村に行った事があるが、そこでも食事の際、子供も酒を飲んでいた。驚いて聞いてみたが、体内の厄を祓ってくれるという理由で飲んでいると言っていた。

 よくよく考えると、未成年だから酒を飲んではいけないというのは、成長の妨げや健康を害する云々という理由なだけで、それは元の世界だけで決められたルールだ。この世界にそのルールが無くても、当然ではある。

 だがそうは言っても、未成年のルナリスに飲ませるのは少々気が引ける。好きとは言っていたが、あまり多くは飲めないらしい。介抱が大変にならないよう、抑えて飲ませる分には問題ないか。

 朝日が覗く窓から外を眺め、たばこを一本取り出した。火を着けて煙を吐くと、ふわっと溶けて消えた。城下を一望しながらの一服は気持ちがいい。

 咥えたばこでルナリスの方へ向き直る。跪いて籠の整理をしている彼女がこちらを見上げた。ニコリと微笑むその顔を見て、これから長く続くであろう旅路が、明るく楽しいものになりそうな、そんな期待が胸に広がった。

「よし、そろそろ行くか」

「はい!」

 俺たちは部屋を出て、ガルドたちと待ち合わせをしている城門へと向かった。



 第六話「魔王少女」 終わり


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