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第六話「魔王少女」2

「人間、名は何という?」

 不意に聞かれたので、頓狂な顔になっていたかもしれない。すぐに、「れ、蓮だ。風間蓮」と答えた。

 この質問で、魔王がルナリスの中にいる時は、完全に寝ているらしいことが伺えた。ルナリスも魔王が表に出ている時は、この中で寝ているのかもしれない。そうなると、「昨晩の記憶が曖昧だ」と言っていたルナリスの言葉も、信ぴょう性が生まれる。今も寝ているのかもしれないが、その方がルナリスにとってもいい気もした。

 この魔王は、非人道的な行為を躊躇なくやってのける。それを昨晩、俺は嫌という程見せられた。あのヴォルグどもをやる際に、わざわざ残忍な手段を選んで及んでいたように、俺には見えた。それも、楽しんで。そんな光景を、心優しいルナリスが見てみろ。自分の中に眠る“脅威”が、そんなヤツだと知ったら何と思うか。きっと、心が壊れてしまう。

 もしそれが、“自分の中に封印されている魔王”だと知れば、少しはマシかもしれない。しかし今は、俺がそれを明かす訳にはいかない。となると危険視される最悪のケースは、“その非人道的なヤツが、もう一人の自分の人格”だと誤認してしまう事だ。ないとは思いたいが、ルナリスの事だ、誰も傷つけたくない一心から、自害も考えられる。

「レン……か」

 腕組みをして呟く“こいつ”と、少し話をしたくなり、俺は立ち上がった。

「ところで、お前は何故、封印を無視して出てきたんだ」

 魔王は、ぎろりと細い視線をこちらに向けた。

「私が自身の意思で出て来たのではない。この女の魔力が覚醒し、私が呼び起こされたのだ」

「……そう、なのか」

 意外な返答だった。俺はてっきり、魔王が覚醒し、その魔力をルナリスが使っていると思っていた。しかしそう言えば、ルナリスの左目が赤くなる前に出たんだ、あのフレイム・ルゥは。その後にヴォルグに襲われそうになって、それからこいつが出てきた。そうか、最初のフレイム・ルゥの時、あの時にルナリスの魔力が目を覚ましたのか。

「それに、私の封印は解けてはいない。解けているのであれば、既に私は自由の身となっている。故に、放出できる魔力も、ほとんど抑えられている」

「……!」

 な、なんだと。ほとんど抑えられている、だと? 昨晩ヴォルグをやりまくっていたあの力や、今しがた見せられた、“魔法ですらない力”は、ほとんど抑えられた上での威力だったのか。“世界を炎で焼き尽くした”という昔語りは、あながち嘘でもないのかもしれない。

「も、もうひとつ聞かせてくれ。お前が魔王だという事は、ルナリス自身は分かっているのか?」

 ルナリスの薄い唇が吊りあがる。不敵に微笑むその顔が、妙に不気味でならない。

「いや、契約を交わした記憶はあるが、それは潜在的な記憶だ。ハッキリ思い出すということはない」

「な、何故そんな事が言えるんだ……」

 問うと、魔王は低い声で答えた。

「私とこやつは、体を共有しているのだ。この女が覚えていることは、どの部分で記憶しているかなど、容易に分かる。先ほどの二人も、この女の記憶で“自分が凄い魔法を出すところを見せてやりたかった”とあったからな。見せてやった」

 魔王はニヤリと笑う。

 なるほど。言われてみると、そうかもしれない。体を共有しているということは、脳もまた然り。記憶媒体を覗き見る事は出来るのかもしれない。……だが、ルナリスにも同じことが言えるなら、魔王の記憶が彼女に流れ込むこともあるかもしれない。そうなっては、自分の中にいる悪魔が“アザル・ヴェルク”で、それが魔王だと、すぐに分かってしまうに違いない。でも今のところ、そうはなっていない。


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