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第六話「魔王少女」1

 ルナリスは口角を不敵に上げたまま、学者の二人を交互に見た。片眉を上げ、挑発めいた表情で「ふん」と鼻で笑い体を戻した。中身が、魔王に変わった……。

 異変が起きたのはその直後だった。魔王が立っている場所を中心に、地面に魔法陣が浮かび上がってきたのだ。それも、真っ赤な魔法陣だ。それを見るや、学者二人は目を見開いた。

「こここ、これは、レッドスペルの魔法陣!」

「この小娘、まさか本当にヘビーマジックを!?」

 それぞれの足元にまで及ぶ大きな魔法陣に、戦々恐々といったように二歩三歩退く。

 魔王は腕組をしたまま、こちらに向き直った。先ほどまでとは違い、学者二人を見下すような、そして何も面白くなさそうな、そんな目をしていた。俺はそれを見て、「魔王はもう消えたのか?」とも思ったが、左目の赤い揺らめきは健在だった。

 魔王が右手を掲げると、その手を包む様に赤い炎が出現した。学者の二人は更に驚愕した。

「あ、赤い……!」

「し、しかしまだ分からん。ただ赤いだけかもしれん。そういう魔法が、最近になって出てきただけ……かも」

 未だに信じられないといった様子で、目を見開いている。けれどその疑念も、すぐに晴れることとなった。

 魔王は再びニヤリと微笑むと、炎の宿った右手を、払うように薙いだ。

 ……。

 一瞬ののち、「どぉん」という轟音と共に、足の裏からみぞおちにかけて衝撃が走った。続けて、目の前に、とてつもない高さの炎の柱が上がった。それは左から右に、魔王が右手を薙いだ方向に向かって波の様に走った。瞬く間に壮絶な熱気が体を包み、後に来た爆風に体を吹き飛ばされる。

「う、うわぁぁぁぁぁ!」

 学者二人も腰を抜かしたらしく、その場に尻をつき、爆風に耐えていた。

 正直、こんな絶大な力を持つ魔法が、披露会で出なくて良かったと安堵した。もしかしたら中庭どころか、城ごと炎に包まれていたかもしれない。

 爆風の吹きすさぶ中、ルナリスの姿を探す。……無事だ。吹き飛ばされるどころか、腕を組み、余裕そのものの表情でこちらを見下ろしている。その目に宿る光は、まるで嘲笑そのものだった。

 再び炎の方へ向き直り、改めて右手を薙いだ。すると、今まで立ち上っていた炎の柱が、一瞬にして消えた。地面は焼け、辺りに焦げた匂いが立ち込めた。

 魔王はゆっくりと学者の元へ歩く。腰を抜かした二人の前でピタリと止まると、その表情からは“さっと”色が抜け、左目の“赤”が鋭く光った。

「どうだ、私の力は」

 魔王が言うと、学者は引きつった笑顔で答えた。

「は、はい! ととと、とても、凄い威力の魔法です! これは、フレイム・アルドでしょうか、それとも、ヘビーマジックでしょうか!?」

 上ずる声が辺りに響く。魔王は、面白くなさそうに見下す。

「今のがフレイム・アルドだと? 笑わせるな。魔法ですらないわ」

 小さく鼻を鳴らし、目を細めると、そのまま冷ややかな声を落とした。

「……去れ」

「は、はいいい!」

 言われた二人は、這いながら“馬もどき”の所まで行き、体を無理くり乗せた。その姿が見えなくなると、魔王はこちらを見た。



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