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第五話「それぞれの武器」5

 残された大剣は、数人の従僕たちが動かそうとするが、びくとも動かなかった。ガルドのおっさん、相当な腕力らしい。ルナリスの派遣隊に付けてもらえたのは、ラッキーだったな。

 続いて大臣に指名されたのは、自己紹介で名前しか言わなかった、トウカだった。相変わらずやる気のない様子で、名前を呼ばれても返事すらしなかった。面倒くさそうに大きめのため息をつくと、口を開いた。

「刀が……ない」

 ぼそりとこぼすと、大臣は立ち上がり髭を撫で、武器棚を示した。

「刀ならあるじゃろ、お主の為に準備したんじゃ。それを使え」

 トウカは小さくかぶりを振った。それと同時に、お尻のしっぽが、くたんと下がった。

「わたしの刀……部屋に置いてたの、準備してくれてないの?」

「……相変わらず口の利き方を知らん奴じゃな。お主の刀は持って来とらん、そこのでやれ」

 大臣は不満を露わにし、どっかと椅子に腰を下ろした。トウカはもう一度ため息をつくと、ゆっくりと準備を始めた。

 藁束の前に立つと、鞘から刀を抜いて、その刀身を眺め始めた。しっぽをゆっくりと揺らしながら、角度を変え、見る方向を変え、じっくりと見ている。一体何を観察しているのだろうか。

 すると脇から、大臣の声が響いた。

「どうした、早く始めんか!」

 トウカは大臣を睨む様に一瞥すると、刀を鞘に戻した。そしてそれを腰元に持つと、左足を大きく引き、姿勢を低くした。顔を伏せ、ゆっくりと目を閉じる。

 静かな時間が経過する。風の音が聞こえるほどの静けさの中、大臣の「何やっとるんだあやつは」という言葉がやけに響いた。

 その時、「はぁぁぁぁぁ」と、トウカが息を吐く音が聞こえた。それは長く、深いものだった。

鞘を持つ手の親指でつばを押し上げる。「カチャ」という乾いた音が響き、右手がゆっくりと動く。柄に触れる寸前で止まると、トウカの低い声が聞こえた――

天津禍津あまつまがつ――神籬ひもろぎ

 刹那、眩い筋がいくつか見えたかと思い一度だけ瞬きをした。すぐにトウカにピントを戻す。彼女の右手には抜かれた刀が握られていたが、その刀身をゆっくりと鞘に戻した。

 藁束に変化は無く、何も起きていないように思えた。が、トウカが振り向きこちらに戻ろうとした時、ボタボタボタと藁束が崩れた。それも、三つ。藁は固定されている部分は残っている。という事は――あの一瞬だけで、三回も斬りつけてやがったのか。さすが派遣隊に配属されるだけはある。刀の動きどころか、トウカの動きすら見えなかった。どこで修行すればそんな技会得できるんだ。

 ルナリスも口を押え、目を見開いていた。

「す、すごすぎです。ガルドさんの力も凄かったけれど、トウカさんのスピードも凄いですね」

 もっともだ。どっちの方が凄いって事は決められないが、正直、ガルドのおっさんに、トウカのスピードは捉えられそうにないなとも感じた。あんなにやる気が無さそうだったのに、実のところこんな技を持っていやがった。この世界では、どんなやつだろうと侮り厳禁ってことだな。

 続いて呼ばれたのはミリアだった。呼ばれるや、「っはぁーい!」と元気に手を挙げて駆け足で中央に向かった。武器も取らず、藁束と少し距離を置いて立った。

「わたしは見ての通り回復専門なので、使える魔法も限られます。ですが、一応攻撃魔法も使えるので、今回はそれを披露しようかなと思います!」


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