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第五話「それぞれの武器」4

 朝食会が終わり、いよいよ芸のお披露目会となった。

 ダイニングルームから城の中庭まで、またしても訳の分からない道順でいくつもの広間を抜けた。もう二度とダイニングルームには戻れないし、城の外に出る事も出来そうにない。

 中庭には、いくつか大きめのテーブルが置いてあり、それぞれに純白のテーブルクロスが太陽の光を反射させている。幾人かの給仕の子がおり、すでにお茶の準備を始めているようだった。

 そしてテーブルに囲まれるようにして中央に、大人の胴体ほどの、藁を大きく束ねた様な置物があった。四体あるところを見ると、このお披露目会の為に設置したものと思われた。ノーマークだった俺の分は、勿論ない。

 王様は中庭に入るなり、俺たちをテーブルでくつろぐよう促した。自身も席についたのだが、その際、明らかに王様用の立派な椅子ではなく、並べられたテーブルの普通の椅子へ腰を下ろした。すると給仕が「陛下、こちらへ」と、その“ひと際”立派な椅子へ促したが、王様は「よいよい、こっちの方が落ち着く」と笑いながら断っていた。庶民寄りなところは、プラス評価しておこう。大臣や学者、それにルガートも席に着き、俺たち新派遣隊組も倣って席に着いた。

 皆が席に着き、紅茶の入ったティーカップがそれぞれの前に並び終わると、大臣が立ち上がった。

「皆の者、これより芸の披露会を行う。黎命の儀とは違い、かしこまらんで良い」

 大臣がそこまで言うと、すかさずミリアが隣のトウカを覗き込んだ。

「かしこまらなくていいんだってぇ、良かったぁ。黎命の儀は疲れちゃったよねぇ」

 垂れた目を線にし微笑み、両手を結んで頬にくっつけている。

 自己紹介は楽しんでいた挙げ句、さらにはまだ何かを言おうとしていたにも関わらず、「疲れちゃったよねぇ」ときた。お前が疲れているようには誰も見えてねえよ。一応心の内だけでツッコんでおく。

 大臣は続ける。

「これは、一種の自己紹介と思って頂けるとよいだろう。それぞれ、どのような戦闘が得意なのか、この場で知り合う機会として設けておる。楽しんでくれれば幸いじゃ」

 そう言うと早速、ガルドを指名した。

 ガルドは「いっちょやるか」と、腰を上げ、武器がいくつも並べられてある棚の前で腕を組んだ。しばらく吟味した後、大きな剣を手に取った。

 その大きさは所謂、「大剣」とかと分類される様な物で、剣と言うより、鉄の塊と言った方がしっくりきた。持ち上げるだけで鉄製の棚と擦れ、金属の軋む音が鳴った。音を聞くだけで、どんな物を持ち上げたのかが容易に想像できるほどだった。

 ガルドの大きな腕がそれを掴み、肩に担いだ。大きな体に大きな剣。世界中どこを捜しても、この剣が似合うのはこのおっさんしかいないだろう。

 さすがに重そうではあるが、歩くのに支障はなさそうな程度だった。腕の太さ、体の大きさは、伊達ではないらしい。

 ガルドは藁束の前で、地面に剣を刺すように立てた。それだけで座っている椅子に振動が伝わった。そしてこちらに振り向き、声を張り上げた。

「俺は武器という武器なら大抵の物は扱ってきた。一番得意なのは剣だが、せっかくだから今回は、このグレートソードで俺の力を見てもらおうと思う」

 ガルドはそう言うと、両手で重々しく剣を持ち上げた。そして「それじゃあいくぞっ」と言うと、その腕は筋肉が隆起し、血管も浮き出た。ガルドは自身を半回転させると、その剣の巨大な刀身を回しつつ大きく上げた。その動きを見るに、腕だけの力では扱えない武器だということが、容易に分かる。

 高く上がった剣は、その勢いを殺すことなく藁束に叩きつけられた。土と芝生の緑が舞い上がる。そして大剣はと言うと、藁束と、それを固定していた大きな丸太もろとも真っ二つに裂いていた。地面にめり込む剣先は、何事もなかったかのように、静かに光を反射していた。

「これはお見事、さすがはガルド殿。“黄昏の大審判”の生存者なだけはありますな」

 王様は立ち上がり、満足気に手を叩いた。あわせて、他からも拍手が上がった。

「光栄にございます。頭の方はからっきしですが、力では誰にも負ける気はしません。相手が魔物であっても、この両腕さえあれば善戦できるでしょう」

 ガルドは軽く頭を下げると、席へと戻った。


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