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第五話「それぞれの武器」1

 黎命の儀が終わり、俺たちが連れてこられたのは縦長に間取られた大広間だった。俺たち庶民からすると、ここは多目的ホールと言った方がしっくりくるが、中央にある長いテーブルを見るにここはダイニングなのだろう。

 それにしても、そのテーブルがとてつもなく長い。中世を舞台にした映画なんかで見たことはあったが、まさか実際に見られるとは思ってもいなかった。

 テーブルには、さきほど俺が踏みつけた分厚い絨毯みたいなテーブルランナーが敷かれており、卓上には燭台やお皿、それにナイフとフォークが規則正しく並べられてあった。椅子は数えきれないほど並んでいたが、その全ての椅子に対して食器が準備してあった。ここにいるのは俺とルナリスと、例の三人、それに大臣と……何故かルナリスの元級友、ルガートがいた。何でこいつがいんだよ……。小生意気に、涼しそうにしている顔がいけすかない。

 何でも「俺が昨日のルナリスを間近で見ていたからな」らしい。書庫に招いて大臣と話しをさせたのもこいつだ、どうせ大臣に招かれたのだろう。

 そしてこの後王様が来るのだろうが、それにしてもセットの数が多すぎる。他に沢山の人が呼んであって、俺たちの壮行会でも開くのかと思案していたが、結局、俺たち七人と王様、それから中年の学者みたいなのが二人加わっただけだった。

 給仕の人に椅子を引かれ座ると、並んでいた他の給仕たちは、途端に結婚式の披露宴スタッフみたいにせわしなく働き始めた。こういう場所に不慣れだと、自分たちの為に忙しくされると申し訳なくなってしまう。

 あっという間に、目の前の大きな器にパンが盛られ、湯気を上げた暖かいスープが運ばれた。その際、何故か目の前に並べてあった皿は下げ、スープの皿と入れ替えていた。ここに並べてあった食事セットたちは、ただの飾りだったのか……。もし並べてあった食器も、国民の血税でまかなわれているのであれば、即刻廃止すべきである。

 そんなことを考えていると、全員の前に食事が並び終わったらしく、大臣が手を二度叩いた。

「それでは皆の者よいかな。食事を始めるぞ」

 そう言うと、胸元に左手を当てて目を閉じた。そして静かに言った。

「ルナリス率いる派遣隊発足の記念と、任務の成功、そして生還を祈って――」

 皆も同じように胸元に左手を当てて目を閉じている。食事の前のお祈りみたいなものなのか? 目を開けているのは俺だけだったので、急いで真似た。

 数秒の後、大臣の「いただこう」という声と共に、みんなはナイフとフォークを手に取って食事を始めた。

 俺がいつもの癖で手を合わせて、「いただきます」と言うと、ルナリスは目を丸くして俺を見た。

「いまの、何ですか?」

 疑問符そのものの様に、首をちょこんと傾けている。

「ああ、今のは、食事を摂る時に日本人がする“儀式”というか、“お祈り”みたいなもんだ。食事ってのは、色んな命を食べる事になるだろ。このスープにしても、具材は元々生きていた野菜なんかが入っているし、肉料理だってそうだ。その命を“いただきます”って意味で、手を合わせて言うんだ」

 そう言うとルナリスは「なるほど」と頷くと、両手を合わせて「いただきます」と目を閉じて少しだけ頭を下げた。健気だなやつだ。

 食事を摂りながら辺りを伺う。王様は近くに座っているガルドと会話を弾ませている。歳が近そうなので、話も合うのだろう。大臣は連れてきた学者と、それにルガートを交え、魔法のことについて話をしているようだった。「朱の詠唱」だとか、「重魔法」だとかのワードが聞こえるところを見ると、もしかしたら昨晩のルナリスの魔法の事を話しているのかもしれない。


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