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第四話「疑惑」5

 俺が言い終わると王様は、ミリアに目くばせをした。ミリアは「まっかせて下さいっ!」と言って、俺に両手をかざすと、すぐに俺の体は真っ白な光で覆われた。眩しいほどではない、優しい光だった。

 十秒ほど経った頃だろうか、その光は淡い紫色となって、ふわっと宙に消えていった。そしてミリアは一瞬、「おっと、これは……」と目を見開いたが、すぐに満面の笑顔で広間に声を響かせた。

「虚偽はないようです! 真実らしいでっす!」

 王様は静かに目を閉じると、深く頷いた。どうやら先ほどの光は、虚偽の発言をしていないかを調べる魔法だったらしい。突然やられて助かった。もし事前に言われていたら、俺の心臓は跳ねあがって、すぐに虚偽判定を食らっていただろう。

 ……ん? でも魔法なんだから、心拍数で判定しているわけではないか。そう考えると、よくぞ俺の体は真実と貫き通したものだ。危なかった。

 ルナリスも心底安心したようで、両肩を落として息を吐いていた。

「レン殿……と言ったな。疑った非礼を詫びよう。其方の目、この旅路では大いに役立つであろう。――ガルド、トウカ、ミリア。三名はルナリス殿とレン殿を、命を賭して守り抜け。よいな」

 王様がそう言うと、言い渡された三名は、深く頭を下げた。

 今までルナリスばかりが主役で、部外者の俺がここに立っていてもいいのかと不安に思っていた。しかしようやく、ルナリスと肩を並べられたような気がして安堵した。

 ここにいる国王推しての三人衆が、この俺の命も守ってくれるという。これで昨晩のような、ひどい目に遭う事はないだろう。何の取り柄もない俺だ、万が一魔物が襲ってきたら防戦一方となることは容易に想像できる。そんな俺を守りながらの戦闘は、相当な手練れでない限りやられてしまうかもしれない。この歳で今更かもしれないが、ガルドとかいうおっさんに剣術を教わった方がいいだろう。

 あとは、この三人がどれだけやれるのか(おれの命をどれだけ守れるのか)、芸を見せ合うお披露目会で確認させてもらおう。

「それでは、黎命の儀はこれにて終いとする。この後は皆で朝食をとるぞ。ついてまいれ」

 大臣はそう言うと、裾を払って先頭に立った。「ほれ、準備じゃ!」と声を張り上げ、両脇に控えていた給仕たちを手振りで急かす。

 例の三人衆も向きを変え、大臣の後ろについて行く。その時、最後尾のミリアの垂れた柔和な瞳が一瞬、鋭く光を宿した。その視線の先には王様がいた。誰にも気づかれぬようにといった具合で、王様は小さく頷くと、外套の裾を翻し奥間へと姿を消した。

 ――今のやり取りは、なんだったのだろうか。

 胸の奥に、言いようのないざわめきが残った。




 第四話「疑惑」 終わり


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