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第四話「疑惑」4

 大臣は改めて、「コホン」と咳払いをして口を開いた。

「して、ルナリスよ、改めて聞くが、質問はあるか」

 ミリアを見ていたルナリスは、はっと大臣に向き直り答えた。

「あ、はいっ。えっと……ミリアさんの言う通り、魔王を捜しに行くと言っても、何の手掛かりもないのでは非常に困難を極めます。何か記録には残っていないのでしょうか」

 大臣は少しばつの悪そうにミリアを一瞥すると、静かに答えた。

「うむ、まあ……確かにそうじゃな。記録上では、“アヴェルナの淵”で地獄の番人をしていたとなっておる。その淵は、遥か東に位置する、フェルザリア大陸にあると伝えられておるが……。その真相は、其方らの瞳で確かめるほかあるまい」

 大臣はそう言うと、王様に視線を送り小さく頷いた。そしてまたこちらを見た。

「とは言ってもじゃ、あまりにも手探り過ぎるのも効率が悪かろう。先ずは、“魔法都市ノクティア”を目指せ。そこにラァラという魔法学者の女がおる。彼女は魔法に精通する他、悪魔や魔王についても研究しておる“カルテナ教団”という組織に入っておる。何かしら助力が望めるじゃろう」

 なるほど、既にラァラという人に話しを通しているらしい。さすがは国を挙げての派遣隊だ。動きが違う。

「承知しました。それでは、先ずはノクティアを目指します。それで、いつ出発をすれば?」

 ルナリスが聞くと、大臣は答えた。

「うむ、本音を言えば、今すぐにと言いたいところじゃが、長い旅にもなるじゃろうて、まずは先ほどの三名との親睦を深めてもらいたい。そこで、朝食を皆でとってもらい、その後、各々の芸を見せ合うという時間を設けようと考えておる」

「芸を見せ合う? ですか」

「それぞれ得意としておる武具や魔法の扱いを見せ合う、という事じゃ。どうかね?」

 大臣は、ルナリスの顔を覗き込むように聞いた。ルナリスは「わ、分かりました」と小さく頷いた。大臣も頷くと、今度は俺の方へとゆっくりと歩み寄ってきた。

「ところで、昨晩からルナリスと行動を共にしておるお主は、一体何者なんじゃ?」

 ここで、まさか俺に飛び火してくるとは考えてもおらず、思わずたじろいだ。

「あ、俺は、その……」

 どこからどう話そうかと迷っていると、ルナリスが助けてくれた。

「そちらの方は祖父の知り合いで、わたし一人で城下町へ行かせるのは不安だと、お供に付けてくれたのです。レンさんとおっしゃいます」

 さすがに、違う世界線から来たという事は伏せておいた方が無難だろう。俺もそう思っていたが、ルナリスもそうらしかった。

 大臣は「ほぉう」と深く喉を鳴らす。方眉を上げ、訝し気な表情で俺を見上げる。疑うにしてもあからさま過ぎる。

「もしレンさんの同行を認めて頂けない場合、魔王討伐のこの任務は、考えさせていただきます」

 ルナリスが断言すると、大臣は「ふぉふぉふぉ」と笑った。

「強気じゃのぉルナリスよ。しかしそうは言うてものぉ、同行する以上、芸もないのであれば、己の命ばかりではなく、近くの者も危うい目に遭わせてしまうのではないか」

 そう言われ、昨晩、狼に両脚を切断された時のことを思い出した。

 大臣の言う通りである。不意にやられたこととは言え、俺にそういう身のこなしが出来ていれば、あんな事にはならなかったかもしれない。そしてそこに泣きついてきたルナリスも、魔王が目を覚ましてくれたからよかったものの、あの時狼に首を跳ねられて死んでいたかもしれない。そういう未来だって、ありえたって事だ。

 しかし、ここでルナリスと離れ離れになっては、日本に帰れるものも帰れなくなってしまうような、そんな気もする。そこで、俺はこんなことを言ってみた。

「大臣、わたくしには見えるのです。悪魔を封印している者の魔法陣が。生まれつき、そういう目を持っております。村からは“悪魔の目を持つ者”として忌み嫌われており、十五を数えるその年から、村を追放されてしまいました。“ニホン”という小さな村です」

 そう言うと、大臣は目の色を変えた。そして王様と俺を交互に見て、口を開いた。

「そ、それは誠か! お主、嘘を言っておるのではなかろうな、そうなれば欺瞞ぎまんの罪で投獄せねばなるまいぞ!」

 大臣ばかりか、ルナリスも目を見開いてこちらを見ている。“とんでもない嘘をぶちかましやがった”とか思っているのか。しかしこれは嘘ではない。ルナリスに魔法陣があることは伏せておいた方がよさそうだが、たしかに見えているのだ。自信を持って言える。

 すると王様は、その場を静かに御した。

「大臣よ、声を荒らげるでない。黎命の儀が執り行われた直後だぞ。はしたない」

 大臣は「これは、ご無礼を!」と頭を下げ、さっと身を引いた。王様は、玉座の肘置きに身を預けながら続けた。

「しかし大臣の言う事も然り。その言葉に偽りがあるのであれば、投獄もやむを得ん。どうだ、改めて聞くが、虚偽はないな?」

 俺は頭を下げ、もう一度答えた。

「はい、確かに見えます。封印の魔法陣が。わたくしが今のルナリスと同じ年頃だったころ、旅人が連れていた少女の首筋に魔法陣が刻まれていた記憶があります。間違いありません」

 一部虚偽はあるが、そこはご愛嬌ってことで。



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