第四話「疑惑」3
俺たちの前に並んだ三人は、「ひとりずつ、一言」と大臣に促されると、それぞれ自己紹介を始めた。
まずは“がたい”のいいおっちゃんからだ。腕を組むと、口の端を持ち上げて言った。
「俺はガルド・ヴェルナーだ。戦争をいくつも経験しているから、戦闘は任せてくれ。無駄に長生きしてるから、人生の知恵も役立ててもらいたい。剣の扱いが得意だが、喧嘩も得意だ。よろしくな」
おっちゃんがニッと白い歯を見せて言い終えると、大臣が「次」と横目で冷たく促した。次は猫目の子だ。大臣の言葉を受け、耳がピンと動いた。閉じていた目をゆっくりと開ける。
「トウカ・リリノア……よろしく」
無表情のままそう言うと、半目でつまらなそうに一つ息を吐いた。
そして最後は、修道服の女性だ。こいつは大臣に言われる前に挨拶を始めた。
「んじゃ次私ね! 私の名前はミリア・ハートでーっす! ミリア・ハートって呼んでねー! ってそのまんまかいっ!」
右手を大きく挙げ、広間に声を響かせたかと思うと、突然ノリツッコミを入れてきた。動きもコミカルで、アニメの様に瞬時にポーズが変わるような印象だった。元気がいいのは悪いことではないが、シスターの出で立ちにそのテンションは、頭が混乱してしまう。ミリアは続けた。
「私が得意なのは回復です。このハーバルを使うこともあるけれど、専ら魔法の方が得意でっす」
腰に下げていた小瓶を手に取って見せ、片方の腕ではガッツポーズを見せている。
「そんでもって、んもうこの状況マジ無理ー! ってなった時はワープ系の魔法も使えるから、それで逃げちゃいましょー! アハハハハ!」
やっぱり、どこの世界でもいるもんだな。こういう、ずば抜けて明るいやつ。一度喋り出すと止まらないのは結構だが、聞き役に徹していると疲れてしまいそうだ。すでに先が思いやられる。
ミリアはさらに「それから――」と続けようとしたが、大臣に「もうよい」と冷たく御された。ミリアは口を尖らせて「はぁーい」と子供の様に拗ねていた。
「以上、この三名がルナリス殿の旅を支えてくれるじゃろう。以上を以って儀を開くが、質問はあるか」
大臣は俺たちに聞いてきたが、「はい!」と元気に手を挙げたのはミリアだった。「お前が質問するんかい!」とツッコミを入れたかったが、俺が言う代わりに、トウカがジトっとした目でミリアを見上げていた。ミリアはお構いなしに質問をした。
「あのぉ、魔王ってどこにいるんですか?」
それを聞いた大臣は、頭を押さえつつ体をよろめかせた。
「お、お主がそれを捜しに行くんじゃ……昨晩何度も説明したじゃろ」
「えー、あんな夜更けに急に難しい説明されても、っなぁーんも頭に入りませんよぉ。半分ってか、全部寝てましたし、あはははは!」
ミリアは肩をすくめ、両の掌をひらりと仰ぎつつ高らかに笑った。桜色の髪が躍る肩に合わせてふわりと跳ねる。口を尖らせて見せる彼女に、トウカはもちろん、温厚そうなガルドまでもが、半眼でじっと視線を向けていた。――なるほど、この女、相当おつむが弱いらしい。
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