【09 帰り道、思うこと】
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・【09 帰り道、思うこと】
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いつも通り、ちょっと遠回りして、新しい発見が無いか考えながら帰宅する……って、今日は正直そんな余裕は無いけども、やっぱり遠回りだけはしている。
それにしても何で初日から男子がからかいに来たんだろう。
初日からって嗅覚半端無い、ゴールの嗅覚半端無い、サッカーの大迫か。
FWのほうの大迫か、決してゴールキーパーの大迫ではなくて。
大迫って名前、サッカー選手でしか聞かないなぁ、大迫はサッカーネームかもしれない。
そういうのって結構あるよね、例こそ浮かばないけども、例こそ浮かばないけども。
いや大迫サッカーネーミング大賞はどうでも良くて。
何であんな初日からからかいに。からかい上手の男子三人現れて。
もはや、からかい上手の高木三兄弟じゃん。
三人全員プロのサッカー選手になった高木三兄弟じゃん、高木豊の息子全員サッカー選手。
またみんなチームの柱となるような選手で、次男なんてオランダで活躍した経験もあるし。
それはそうと、酒井高徳も兄弟でプロのサッカー選手になっているからね。
長男だけ柔道だけども、次男高徳・三男宣福・四男高聖で。
全然柔道に続かなかった伝説の兄弟だよね、酒井四兄弟って。
いやいや、ついサッカーの話に脳内で変わってしまう。私って結構サッカーも好きだから。
ゲーム・お笑い・サッカーだから、私ってば。
ああやってからかってくる人は守備範囲外だから、鈍足サイドバックだから。
マジで何で初日から? 噂を聞きつけて、三日目くらいにやってくるなら分かるけども。
男子ってそんな嗅覚すごいの、匂い魔人? オイニー(匂いの業界用語)魔人過ぎる。
というか私の声がデカ過ぎたのかな、他クラスまでとどろく声で喋っていたのかな。
なら聴覚かぁ、男子って耳良いんだぁ、盗み聞きするのって女子だけじゃないんだね。
いやこれは女子への偏見だけども、でもそういう子が中学の時にいて、大変だったからね。
何で盗み聞きする人って言いふらし癖も持ってるんだろうね、そのスキルの併用、ハメコンボ過ぎる。
中学時代はそういう女子のせいでマジで気苦労の連続、気苦労ターキーだった。
美味しそうだな。
ボウリングの三連続ストライクのターキーって美味しそうだよね。
ゴルフのアルバトロスは全然美味しそうじゃないのに。
いやまあ鳥って全部食べるわけじゃないけども、でも私はいつか雉を食べる!
いやそんな食い意地はどうでも良くて。
マジで絡んでくる男子嫌だ。何か怖い。
結局萌さんへの逆恨みなの? 佐々木ってヤツが自分のゲーム企画を採用してくれなかったからっという。
女々し過ぎるし、女々しいという漢字も嫌い、何で女なんだよ、今回は男なんだよ。
漢字は偏見がすごい。例こそ浮かばないけども、例こそ浮かばないけども。
あっ、浮くという漢字は水だけじゃないから、風船も浮くから、人間も浮くから人偏でも良い。
もう昔過ぎるんだよね、漢字って。
当時の浮くは水しかなかったのかもしれないけども、どんどん漢字もアップデートしなきゃって感じ。
そういう協会始めるしかないかもな、漢字アップデート協会。
儲ける論理こそ無いものの、初期衝動だけで始めるかな。
いやそんなことより、ゲーム作り! ガヤに負けずに頑張るぞぃ!
と考えながら、家に着いたところで、陸が自分の家の玄関を掃いていたので、こりゃ私も愚痴を吐かせてもらうかと思って、話し掛けることにした。
「陸、またちょっと愚痴を吐かせてもらっていいかな」
「愚痴? めぐが愚痴なんて珍しいね」
「前回もそんな感じじゃなかったっけ?」
「あれは前向きな相談じゃないか、愚痴とは全然違う、建設的な話し合いだったよ」
なんてポジティブに捉えてくれているんだ、私は心の中がジーンと温まった。
私はそのまま陸の家へ入っていき、陸と共に陸の部屋へ入った(今の私の思考、陸を連呼し過ぎている、興奮するなぁ)。
流れで来たので、おやつ持ってこれなかったなと思いつつ、陸に促されるまま座布団に座ると、
「で、愚痴って何? 何かつらいことでもあったの?」
「そうそう聞いて!」
と何かデカい声が出てしまった私。
まあ気にせず喋ることにした。
「萌さんとゲーム作りを始めたんだけども、何か男子がからかってきて! 女子がゲーム作るなんてオタクとか言ってきてさ!」
「全然そんなことないよ、女子でも男子でも自分がしたいように生きればいいんだよ」
即否定してくれて(肯定してくれて)めちゃくちゃ嬉しい、心が躍るよう。
陸は続ける。
「というかからかうってダサいよね、それこそ関係値の無い人からのイジりってダサくて見てられないよね」
「そうそう! 全然知らない男子で! 何かぁ! 萌さんへの逆恨みというか、自分のゲーム企画を採用してくれなかった逆恨みみたいな!」
「つくづくダサいね、そういうヤツは。逆恨みほどしょうもないことってないからね」
やっぱり陸は私の思いをすぐに言語化してくれて、かつ、こっちの味方をしてくれるからたまらん。
たまらんって言葉、おじさんっぽくて苦手だけども、でも使ってしまう。
だからこそ使ってしまうみたいな、同族嫌悪かもしれない、たまらんって。
陸は私の目を見ながら、
「めぐも、萌さんも、自分のためにゲーム作り頑張って。他人の声なんて気にしても得しないから。作る時はまず突っ走る。完成したら人の声も重要だけども、それは忌憚なき意見を言ってくれる仲間の声を聞くことかな」
めっちゃ良いこと言ってくれる! 何かもう言葉にならないくらいテンションが上がる!
その勢いのまま私は大声で、
「じゃあ! 完成したら陸の意見教えて!」
「分かった。思った通りのことを言うよ」
やっぱり陸は私の最愛の人だ! 言ってほしいことも、それ以上のことも言ってくれる!
何だか私は完全にポジティブになったので、バイバイして、早速自分の部屋でゲームのアイデアを考えることにした。
そうだ、そうだ、私には陸という味方の男子がいるんだ、こんな良い味方の男子がいること、萌さんにも教えたいなぁ。
まあタイミングが無いからまだだけども、って、そうそう、また萌さんにLINEしなきゃ。
私は、
『次、いつ会って会議しますか?』
と送ると、即座に萌さんから、
『わたしは思ったらすぐに取り掛かりたいので、昼休みとかでもいいですか?』
『めちゃくちゃ良いです! 昼休みにじゃあちょっと静かめに図書室でやらない?』
『そうしましょう よろしくお願いします』
『こちらこそ改めてよろしくね!』
よっしゃ、私もどんどん進めたいほうだから昼休みからやれるってめっちゃ最高。めっちゃ最高ズ。
私はいっぱいアイデアを用意した……と言っても、ほとんどストリートファイターの技のパクリだけども。
だってもう後は見せ方だけで、ほとんどストリートファイターで技って出し尽くされているし。
実際ストリートファイターだって似たような技のオンパレードだし。
威力と(出始め無敵などの)性能と派手さと動く矢印の方向だけだよね、もう。