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【08 放課後】

・【08 放課後】


 放課後になり、じゃあ早速、と思ったところで凛子が話し掛けてきた。

「やっぱナシ! めぐは私と一緒に買い物することにします!」

「そっちから反故にするとかないから! 私はゲーム作りをするの!」

 と何かちょっと大きな声で叫んでしまったな、と思っていると、

「本当にぃ? アタシと一緒がやっぱり良いって後悔しないぃっ?」

「いや別に凛子とは毎日一緒だから放課後の時間だけくらいで後悔しないよ」

「じゃあもういい!」

 そう言って可愛くプイッと首を振って、カバンを持って教室から出て行った凛子。

 相変わらず可愛いなぁ(所作も言動も)と思いながら見送った。

 それから数分経って、まだ萌さんが来ないので、どうしたのかなと思って教室の外に出て様子を見ようとすると、萌さんが教室の前の廊下で立っていて、

「あっ! 今来たとこぉっ? 萌さん! 今日からよろしくお願いします!」

 と頭を下げたところで、萌さんが言いづらそうに、

「ご、ゴメンなさい……他の人の教室入るの苦手で躊躇していた……」

「じゃあ萌さんの教室でやることにしよう!」

 と言いながら私はカバンを持って、萌さんと廊下で合流して、そのまま萌さんの教室へ入っていった。

 萌さんは自分の席に着いて、私は前の席に座らせてもらって、振り返って、その流れで一気にLINEを交換して一段落ついたところで、萌さんが

「教室入れなくて、何かゴメンなさい……」

 と先細りの声でそう言ったので、私は、

「ううん! 配慮が足りなかった! やりたいのは私なのに! 他の人の教室って何か雰囲気違くて入りづらいよね!」

 と言ったところで萌さんはしっかりとした瞳で、さっきとは全然違う、語気を強めて、

「違うよ、わたしもそのゲームを作りたいと思ったんだから、やりたいのがめぐさんだけというわけじゃないよ」

 想像もしていない、胸が熱くなる言葉をもらったので、つい照れ笑いを浮かべてしまった。

 いやいや、そうじゃない、ちゃんとしっかり言葉で答えなきゃ、人間は言葉の生物だ。

「そう言ってくれて有難う! これから一緒にやってくれるなんて私は本当に幸せだ!」

 と叫んでしまうと、萌さんはフフッと笑ってから、

「リアクションが大きくて面白いですね、めぐさんは……いや! 嫌味とかじゃないですよ!」

 と急に萌さんが慌てたので、私はピンと来ないって感じの顔をしてしまっていると思うけども、

「いや全然面白いと言われて素直に嬉しいけども、そういう嫌味とかもあるの?」

「嫌味じゃないです! わたしの考え過ぎでした!」

 顔を真っ赤にしながら萌さんがそう言って、何か可愛いなぁ、と思ってしまった。

 まあ世間話(?)はこのくらいにして、

「まず一番重要な、ゲームシステムから考えていきましょうか」

 と私が言うと、萌さんはうんうんと頷きながらも、

「でも多分体力はHP制で格闘アクションといった感じですよね、事前にキャラメイクするという特徴も決まっていますし、これ以上決めることって無いんじゃないんですか?」

「……逆に、萌さん視点で何か足りないところ無いですか?」

「むしろこれ以上合ったら複雑になってしまいますし、この通り進めて、あとはプリセットできる技を考えていったほうがいいと思います。あとは私が得意ってこともあるんだけども、タブレットやスマホで起動する感じでいいかな?」

「それでお願いします!」

 と全力で頭を下げると、萌さんは少し息をついから、

「わたしとめぐさんはこれから対等ですから、そんな感じになる必要は無いんですよ」

「そんな!」

 と滅相も無いみたいな顔をしていたのだろう、逆に萌さんが申し訳無さそうにしながら、

「最初に強く言ってしまったことは本当に悪かったと思っています」

「いやでも萌さんからしたら当然の反応だと思う!」

「ううん、ちょっと人を穿った目で見過ぎていました。実績がどうのこうのとか、わたしだって大賞受賞したわけじゃないのに」

「いやいや! 高校一年生で実績があるとかすごいよ! 本当に尊敬します!」

 と何かもう、こんな実績ある人と会話できているなんて、と嬉しくなってきて、口角が上がってしまうと、萌さんは少し恥ずかしそうに、

「社交辞令はそのくらいでいいですよっ」

「ううん! 本当にすごいと思う! 私もプログラミングできれば! でも桜井政博さんはツクールでも良いって言っていたけども、ツクールって高いよねぇ!」

 すると萌さんが何か思いついたような表情をしてから、

「タダで配布されている、使い勝手の良いツクールもありますよっ。シルバーセカンドというホームページで、WOLF RPGエディターというモノが。通称ウディタですねっ!」

 と何だか嬉しそうにそう言った。

 私は目を皿にしながら、

「無料のツクールなんてあるのっ?」

「そうなんです! わたしのゲーム製作はウディタからでした!」

「いや萌さんって私と同じ高校一年生、ですよね……?」

 と神妙な面持ちでそう聞いてしまうと、萌さんはムッとしながら、

「別に留年してませんけどもっ。わたしは小学五年生の時からゲーム製作しているんですっ」

「すごぉぉおおおおおおお!」

 とつい声を荒らげてしまうと、その声の大きさにビックリしたような顔をした萌さんが、

「そんなっ、何か、そんな、手放しで反応してくださる人、今までいなかったんで、何か、すっごい、恥ずかしい」

 と徐々に俯いてきた萌さんに、

「そんな! だってすごいんだもん! すごかったらすごいって言うよ! すごいんだもん! 尊敬しかない!」

「いやいや、めぐさんのゲームアイデアも新しくて、すごく素敵ですよっ」

 と可愛く唇をもごもごさせながら言う萌さん。

 私は『待て待て、こんなすごい人から素敵って言われるのはすごいことでは?』と一気に自己肯定感が上がった。

 というかマジでこれから、どんどんどんな困難にも立ち向かえると思ったところで、見知らぬ男子が私と萌さんに話し掛けてきた。何か三人いる。

「なぁなぁ、ゲーム作ってんの?」

「女子が? ヤバくね?」

「つーかオタクじゃん」

 萌さんはえっ、といった感じの顔をしている。私も同様の顔をしていると思う。

 というかいきなり何? もしかすると私がデカい声でゲーム作るんだとか昼休みとか放課後に喋っていたから?

 いやでもこの男子三人は知らん男子だし、私の教室にいたとかじゃないでしょ。

 萌さんはかなり不快そうな表情をしながら、

「佐々木だって、前にゲーム作ってくれとか言ってきたじゃん」

 すると佐々木と呼ばれた男子が、

「いやでもマジで作るとかありえなくね? 女子だけで?」

 それに呼応するように、他の二人の男子も、

「ゲーム作るってマニアだ」

「変態とか?」

 と言ったところで、自分のことは棚に上げて、桜井政博さんが変態なわけないだろ、と思って、

「どういう言いがかり? 女子がゲーム作ってもいいじゃん!」

 と私が声を荒らげると、その三人の男子が矢継ぎ早に、

「いやゲームって女子が作らなくね?」

「普通にお洒落とかしてろよ、男の好きなさぁ」

「その歳からオタクってヤバイよ」

 と言ってきて、なまじ向こうのほうが人数が多くて、段々怖くなってきた。

 何でゲームを作っているだけで、こんなことを言われないといけないんだ。

 ただの趣味じゃん。それが何なんだよ。というか、

「アンタたちもゲームくらいするだろ?」

 と私は結構勇気を振り絞って、若干膝がガクガクしているるけども、これならと思って言うと、

「するのと作るのって違くね?」

「作るのは大人のオタクに任せろよ」

「何か目覚めというか早さがキモイ」

 そんなスケベな本を拾ってくる小学三年生みたいに言うなよ、と凛子とのボケ・ツッコミのように言いたいけども、段々唇が震えてきた。

 何でこんなこと言われないとダメなの? でもそれ以上に男子三人の威圧感がすごい。

 座ってる女子二人と立っている男子三人じゃ、目線の角度が違くて。

 だからって立ち上がる勇気も無くて。何かここで立ち上がったらマジの喧嘩みたいになっちゃいそう。

 そんなん女子なので腕力で負けてしまうので、そういう展開には持ち込みたくない、と思ったところで、急に萌さんが立ち上がり、実は勝気? と思っていると、萌さんはそのまま自分のカバンを持って走ってどこかへ行ってしまった。

 あっという間の出来事で追いかけることもできないでいると、その男子三人が、

「まあいいじゃん、これで」

「一応はな」

「アハハ」

 と笑いながらいなくなった。

 一体なんなんだよ、萌さんへのイヤガラセということ? 前に萌さんにゲームを作ってもらえなかった佐々木の腹いせって感じ?

 いやでも何でゲームをこれから作るってこと分かったんだろう、あっ、私が広げていたこのドット絵のノートを覗き込んでということ?

 いやドット絵を見ただけでゲームと分かるんなら、ゲーム友達だろ、と思いながら私はノートを閉じて、自分の教室にすごすごと帰っていった。

 自分の席に着いてからまず萌さんにLINEすることにした。

 すると、

『逃げてゴメンなさい もう下校しています』

『いいよ、何か怖かったね』

『多分逆恨みだと思います 本当に男子って怖い…… 佐々木にはちょっと強い口調で言ってしまった過去があって 一対一ならまだしも、あんな徒党を組んでくるとは思わなかった』

 どうやら萌さんは男子に若干の抵抗感があるらしい。まあ私も得意なほうじゃないけども、でも、と思いながら陸の顔が頭の中に浮かんで、

『良い男子もいるよ!』

 と返信すると、

『そうなのかな』

 という一文が返ってきて、相当苦手みたいだ。

 まあ人それぞれの人生だしな、と思いながら、

『とりあえず私も下校するからまた後で』

『はい、分かりました』

 とやり取りがあって、私は家へ戻ることにした。

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