【05 うっすら浮かんでいたモノ】
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・【05 うっすら浮かんでいたモノ】
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私は桜井政博さんが作ったスマブラが好きだ。
特にあのMiiファイターという発明が私の心を躍らせた。
自分の似顔絵を作って、私まで参戦できるなんて。
最初はそれで充分だった。
でも最新のソフトでは、なんとMiiファイターをネット上で使った時、固定の技ではなくて、ちゃんと自分が四つの中から選んだ技が繰り出せるようになったのだ!
これは革命だと思った。
何故なら私はいつもうっすら思っていることがあったからだ。
それは格闘ゲーム全般に言えるし、特に、といったところでストリートファイターを思考回路に挙げさせてもらうと、何でストリートで初めての相手とファイトするのに、相手の技を全部知っているんだろうというところだ。
それともみんな有名人で、ある程度分析が済んでいるということ? いやでもブランカはさすがにみんな初対面でしょ。
なのにプレイヤーは全員ブランカの技を知っている。これって不思議なことじゃない?
最近はストリートファイターの新作でも、自分で作ったキャラを使えるけども、本来相手の技って全部知らないはずじゃない?
そんな違和感が子供の頃からあって、イマイチ格闘ゲームってのめり込むことができなかった(スマブラは格闘ゲームというよりアクションゲームだし、みんな知っている、ご存知過ぎるキャラばかり出ていたので、そういう違和感は抱かなかった。一応私の論理に当てはめるとしたら、全員有名だから分析されていて当たり前、となっている)。
だから私がゲームを作るなら、やっぱり自分が納得する格闘ゲームを作りたいと思う。
全キャラ、どんな技を使うか分からない、そんな状況の格闘ゲームを。
さぁ、ここから理論立ててていこう。
よってキャラ選択画面は無い、パスワードを入力して闘う感じでいきたい。
事前にキャラをメイクするわけだけども、あんまり複雑なキャラにする必要は無いので、簡単なドット絵というか、ドットよりも大きめの四角とかでいいと思う。
ジョイメカファイトのように、関節を描くと容量を食うので、間接は無くて、手や足が宙に浮いているキャラにしたみたいに、二コマドットで簡単な表現で良い。
言うなれば、RPGツクールで作られたアクションゲームといった感じ。
これならプレゼンの時、絵を描くのは下手だけども、ドット入りノートで色を塗るように描けばそれなりに見せられるかもしれないし。
技はあればあるほどいいけども、それはのちのち考えればOKかな?
飛び道具とかも大きな四角で表現すればいいし、対空技もアッパーしているように腕の四角を伸ばせばいいし。
出始めに無敵とかは過去の名作に習ってやればいいし、大体そんな感じかな。
とにかく誰がどんな技を使うかどうか分からない格闘ゲーム、ということで、あとはボタン操作で簡単に、でいいかな。
最高六技詰め込めるみたいな。で、詰め込む技が少ないほど、威力が上がるみたいな。勿論それぞれ技ごとに威力が決まっているけども。
結構良い感じなのでは? これでいこう。
あとはプレゼンだな、ここぐだぐだしたら最悪だし、前に一回見たけども、改めて桜井政博さんのユーチューブチャンネルでプレゼンの回を見直そう。
……!
『プレゼンはスピードだ』
『意図は要らない』
『第二案も要らない』
『絵はシンプルでいい』
『いかにテンポ良く濃密か』
ヤバイ! 意図を長々と説明する気だった!
第二案とかあったほうが賢そうとか思っていた!
プレゼンはスピードかぁ、ここは重要だなぁ、まずドット入りノートを買ってきて、それをちゃんとめくる練習とかもしたほうがいいかも。
そう言えば、お笑い芸人さんがフリップネタで、めくりやすいように目安の付箋とか付けているけども、私もそうしたほうがいいんだろうな、よし、それもやろう。
そこから私は家に帰ってきたら、そのプレゼン作りに勤しむを毎日繰り返した。
完成して、練習したところで、ついに陸へ見てもらうことにした。
「では早速私のプレゼンを始めます」
テーブルに対面で座っている私と陸。
私はテーブルに縦で置きやすくしたドット入りノートを開き、喋り出した。
「何でストリートファイターなのに相手の技全部知ってんの? それはおかしい! このゲームは相手の技を一切知らない格闘ゲームだ!」
枕詞は意図と言えば意図なんだけども、ここは最初の入りとして入れることにした。
陸が優しく拍手してくれている。
私はどんどん進むことにした。
「キャラ選択画面は無く、事前にキャラメイクしたキャラのみを使うため、パスワードを入力してバトル!」
陸はうんうん頷いてくれている。
「ドット絵の二コマイラストで動きを簡易的に表現する格闘ゲームで、ボタン操作もワンボタンで技が発動! 最高六技プリセット可!」
ここはイラスト付きで見せ、飛び道具・横移動技・対空技の三つを二コマのイラストと移動方向である矢印で表現している。
陸も真剣に聞いてくれているようだ。
「でも六技入れなくてもいい! 覚えている技の数が少なければ少ないほど威力アップ! 以上! 相手の技を知らない格闘ゲームでした!」
陸は目を皿にした。
何だろうと思っていると、陸がゆっくりと口を開いた。
「すごいスピード感だよ! やりたいことが分かりやすいし、こんなゲーム俺は知らないよ! ネット対戦とかできたら激熱だと思うよ!」
絶賛してくれた! 嬉しい!
技術的な面を考えて、ネット対戦とかは言わなかったけども、そんな褒めてくれるなんて嬉しいなぁ!
何だか自信が過剰なほどについた。
これは、イケる!