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【04 もう一回相談】

・【04 もう一回相談】


 放課後になり、早速凛子がハイテンションで私に話し掛けてきた、んだけども、私はイマイチ元気が出なくて。

 でも逆に元気を出させようってくらいに凛子がボケてきた。

「今日も新雪がしんしんと降り積もる記録的な雪の日だね!」

「いや五月の優しい風が吹く、新緑の良い香りがするちょうどいい気温の日、せめて雨の日とかに言え、そのボケ」

「いやもう記録的過ぎる、アタシの声のデカさが……」

 と言いながら先細りの声で、肩をすぼめた凛子。

「全然記録的じゃない、引っ込み思案の転校生の初日の声量だよ」

「それはこっちの台詞だよ!」

「私は常時テンションが低い人の声量くらいは出てるよ」

「何か元気無いみたいだけども、マカのチカラいる?」

「ジジイの精力剤いらないわっ」

 と少しだけ力んだ声が出た私。

 というか、

「今日は幼馴染の陸に相談したいことがあるから、すぐに帰るよ」

「じゃあアタシはその辺の雑草と適当に遊んでいるからっ」

「仲間の表現が良くない」

「実際そんなもんだしっ、男子って暇潰しじゃん?」

 そうだ、凛子は私と違って男子の友達が多いんだ。

 めっちゃ性に活発なほうで、だからマカとかそういう語彙が普通に出てくるんだろうなぁ、なんて分析どうでも良くて。

「あんま友達とはいえ、雑に男子扱っちゃダメだよ」

 と言いながら私は下校のため立ち上がると、

「いや男子は雑でいいっしょ、簡単に扱えるしさ」

 と軽く冷笑するように言い放った凛子。

 う~、大人過ぎて何も言えねぇー。

 ここはもう、私の知ってる大人ワードで対抗するしかないな。

「ここでドロンさせて頂きます」

「忍者キャラきた!」

 おじさんなんだけどもな、と思いつつ、私は凛子から忍者キャラと言われたので、忍者っぽい、腕を一切動かさない走り方で教室から出て行った。

 気落ちしていたんだけども、結果変なコメディをしてしまって、ちょっと元気が出た。

 ありがとう、凛子、と思いながら、ササササッと忍者のように自分の家へ帰っていった。

 自分の部屋のカーテンを開けて、窓を開けると、もう陸は家に帰ってきていて、何かパソコンをしているようだった。

 私は自分の部屋の窓から、陸に声を掛けた。

「またちょっと相談させてもらっていいっ?」

 即座に陸はこちらを振り返って、

「いいよ、すぐにでもどうぞっ」

 と明るく微笑んでくれたので、私は急いで一階に降りて、冷蔵庫からゼリー二個と、スプーンを二本持参して、陸の家へ飛び込んだ。

 玄関で、

「陸入るよー!」

 と大きな声を出すと、二階から陸の、

「どうぞどうぞー」

 という声が聞こえてきたので、心の中ではスキップしながら階段を駆け上がった。

 ドアのノックも適当に、

「陸! 家からゼリー持ってきたから二人で食べよう!」

「そんないいのに」

 と言いながらパソコンが閉じられる音がした。

 ネットを介した勉強していたなら申し訳無いけども、まあ相談に乗ってもらおう。

「早速なんだけどもっ」

 と言いながら、ぶどうゼリーとスプーンを陸に手渡ししながら、私は喋り出した。

「私、桜井政博さんのユーチューブチャンネル見て、ゲーム作りたいと思ったんだ!」

 と言ったところで、私がいつも使ってるほうのスプーンを陸に渡していることに気付き、わわわわわぁぁ、と心の中で慌てた。

 いや別に毎回洗っているわけだから、別にどうってことないんだけども、私のスプーンを陸が使うって、ちょっとドキドキする。

 こんなこと凛子に知られたら、ウブ過ぎって笑われるだろうなぁ……。

 そんな私の内心は露知らず、陸がぶどうゼリーを開けながら、

「それはすごいね! そういう積極的な姿勢すごく良いと思うよ!」

 なんでも肯定してくれる陸は本当に有難いなぁ、と思いながら、私もぶどうゼリーを開けて、

「でね! だからプログラミングができる石田萌さんと一緒にやりたいと思っているんだ!」

 陸は一瞬顔を引きつらせた。

 私は意外とこういう機微に気付くほうなので、何だろうと思いつつも、そこを突っ込むのもアレなので、まず私は自分の相談として、

「でも何の関係値も無い石田萌さんに一緒にゲームを作ろうなんて言うのはどうかなと思って……」

 とつい先細りになってしまうと、陸はう~んと悩んでから、

「あの時に廊下で言っていたことだよね、でも石田萌さんはクラスメイトの誰とも距離を置いている感じだから、誰も関係値は無いと思うよ」

「そうなんだぁ」

「俺が本当に、本当に石田萌さんと仲が良ければ、良かったんだけどなぁ」

 となんというか”本当に”の部分で感情たっぷりというか、もはや情念たっぷりに言って何かちょっと違和感だなと思ったけども、まあそこはスルーして、

「だからどうすればいいかなぁ、と思って」

 すると陸がぐっと力を込めてこう言った。

「感心するような企画と良いプレゼンをすればいいと思うよっ」

「でも関係値……」

「今まで何度か石田萌さんに企画をプレゼンしている人は教室で見たことあるんだけども、みんな全然面白くない企画だし、プレゼンもぐだぐだだし。石田萌さんはちゃんとしたクリエイターだから、ちゃんとした企画とプレゼンをすれば、きっと受け入れてくれると思うよ」

「そういうもんかなぁ」

 と自分から相談しておいて、ちょっと半信半疑にそう言ってしまうと、陸はさらに語気を強めて、

「大丈夫、めぐは思考することが上手いから、きっと良い企画とプレゼンができるはずだよ。今までずっとめぐを見てきた俺を信じてほしい」

 そんな言い方されると嬉しいというか、それよりもドギマギしてしまうもので。

 もういける? 告白したらいける? いやいやまだもうちょっと確信がほしいなぁ、陸が誰にでも優しいだけって可能性もあるしぃ。

 軽く頬が火照ってきて、ヤバイかもと思ったところで陸が、

「もし企画とプレゼンができたら一回俺に壁打ちしてよ、違和感あったらアドバイスくらいはできるかもしれないし」

「じゃあそうさせてもらう!」

 私はゼリーを食べ切って、立ち上がった。

 それを見た陸が慌ててゼリーを完食して、スプーンを私に渡し、ゼリーのカラは陸が私から取ろうとしてきた。

「いいよ、私が持ってきたゼリーだから私が家に持って帰るよ」

「スプーンとカラ持つの大変でしょ、空いたヤツだから手がベタベタになっちゃうかも」

 陸が食べたゼリーのカラで手がベタベタになるのならむしろ本望だよ、と言いそうになって口をつぐんで、

「いいよ! 大丈夫!」

 と声の大きさだけで話を終わらせて、私は自分の部屋へ帰っていった。

 時折、石田萌さんが絡んだところで、陸が不思議な反応を見せたけども、まさかねっ。

 ここでそのことをこれ以上掘り下げるのは、本筋と離れるし、もし本当に”そう”だったら、テンションガタ落ちだし。

 今はとにかく私の企画とプレゼン、まずは企画からだ!


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