【02 プログラミング言語】
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・【02 プログラミング言語】
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無料でダウンロードできるプログラミング言語をインストールして、早速何かやってみることにした。
ウィキペディアを参考に、とりあえずジャンプするだけのゲームが作れれば……と、二時間、全然何か起きる気すらしない。
恋愛ゲームなら当然最初のデートくらいは終わっているのに、まだ何も起きていない、というか自分としては結構踏ん張ったほうだ。
二時間やって全くチンプンカンプン。理解不能。完全に終わった。もう何にも発展しないと思う。
痩せた大地。いや本当に畑みたいな話なら、痩せた大地にはサツマイモを植えればいいけども、そういうことじゃない。
なんというか、毒で汚染された大地って感じだ、私のほうが、だけども。
プログラミング言語は偉い、本当に素晴らしいと思う、でも私は全然ダメなのだ。
ちゃんとした本を買ってきたほうがいいのかな、そんなことを思いながら、軽くネットサーフィンをしてみると、CHAT-GPTに作らせればいいという情報がでてきて、これだと思った。
試しに『横スクロールしてジャンプで障害物をかわすゲームのプログラムを作って』とお願いすると、すらすらとでてきて、文明の利器ってすげぇって素直に思った。
よし、これでと思って、それをコピペするとエラーが出た。どこか細かいところがおかしいらしい。
でもそのエラーがどこに出たのか分からない。
多分プログラミング言語を知っていれば、そのエラーを直すだけで作れるんだろうけども、私はどこをどう直せばいいか全く分からない。
結局これは多少できる人専用の方法なんだということに気付いて、一気に鬱になった。
どうすれば私はゲームが作れるんだろう、そんなことを考えながら、今日は午後九時に寝た。
私は意外と寝るのが早いほうなのだ。
次の日の月曜日、普通に朝の準備をして高校へ行くことにした。
高校には徒歩で行く。一番近い高校にしたからだ。まあ学力的にもちょうど良かったし。
本当は自転車で行きたいけども、高校に近い人は徒歩で来なさいってことになって、私は仕方なく徒歩、と思っていたんだけども、今はちょっと違う。
徒歩のほうが周りの風景がよく見えるからいい。もしかしたらゲームのアイデアが降ってくるかもしれない。
ちょっと違う道にも徒歩のほうが行きやすいし、そこで新たな発見をしたら嬉しいし。
だから最近はいつもより早く家から出る。
私はしっかり者の健康優良児なのだ。
教室に着いたところで、私は早速昨日の宿題をし始める。
これが私なりの朝活。勉強はやっぱり学び舎でしないと! 家では自分のやりたいことしたいからね!
軽い友達からは、
「家でしてこいよ」
といつも通り言われて、
「校舎の勉強パワーを吸収しながらやってるから」
とこれもまたいつもの返しをして、みたいな感じ。
でも凛子がやって来ると、それが一変する。
「HEY! めぐ! ボーイ&ボーイ!」
と私にハイタッチを促すように手を挙げて挨拶してきた凛子。
私は一応ハイタッチしながら、
「私はガール一択だから」
とツッコむと、凛子から怒涛のボケが始まる。
「ボーイかと思ったよ、ボールボーイだと」
「何で私を選手にサッカーボールを渡すボーイだと思ったんだよ」
「ライン際にいるから」
「これは宿題の瀬戸際だよ」
「ボールボーイってそのスタジアムのユースの子がするんだってさ」
「そんな豆知識いらん、宿題見せてくれ」
「それはしない、甘やかさないプロジェクト設立」
「勝手にしてろ」
と私は淡々とツッコみ、凛子は嬉々としながらボケてくる。
凛子は私の一番の友達で、会えば意味無いボケ・ツッコミをし続ける仲なのだ。
本当それだけの関係で、正直あんまパーソナルなところは知らないくらいだ。
でも少なくてもこのクラスでは一番仲が良いし、班になったりする時はいつも一緒だ。
凛子は一段落ついたのか、私からは離れて、他の友達と会話し始めた。
ちゃんと私が宿題をやっている邪魔をいつまでもするわけじゃない、わきまえている子なのだ。
そんな私もやっと宿題が終わって、ちょっくらトイレかましてやるかな、と思って廊下に出ると、別のクラスから大きな声が聞こえた。
「さすがプログラマー女子! 次のコンテストもいけるんじゃないの!」
とある小さい女子を囲ってワイワイ言っている集団。
その当の本人(プログラマー女子)だと思われる小さな女子は、申し訳無さそうに会釈を連発しながら、
「そんな……別に……」
と言っていたんだけども、プログラマー女子なんてこの高校にいるのっ? と思ったと同時に、じゃあこの子にゲームを作ってもらえばいいじゃんと思って、何か心が踊ってきた。
そうか、良いアイデアが浮かんだらこの子に作ってもらえばいいだけじゃん、こりゃラッキーとか思いながら、トイレへ洒落込んだ。
でもまずは情報収集だな、と思い、こういう時は一番私が頼りにしている人、陸に話を聞くことにした。
どうやらそのプログラマー女子は陸と同じクラスっぽいから。
朝のうちにLINEで陸に連絡して、昼休みは一緒に喋る予定を入れた。
時間はどんどん進み、昼休みになったところで、私は席を立った刹那、凛子が私の腕を引っ張りながら、
「ちょっとぉ、どこ行く気ぃ? 海外? なら化粧品買ってきてぇ」
「普通に幼馴染の陸のとこ」
「えっ? 男子ぃ?」
「そういうのじゃないからっ」
と言いつつも、ちょっとドギマギしてしまう私。
何故なら幼馴染の陸こそ、私の想い人だからだ。
何かあったらすぐ相談してしまう、あの陸こそが私の大好きな人なのだ。
凛子は少しぶっきらぼうに、
「まあ幼馴染ってヤツでしょ? そういうのいいなぁー」
「私もめっちゃ運良いと思っている。家、隣だし」
「じゃあ放課後でいいじゃーん」
「今すぐ知りたい情報があるのっ」
と私は凛子から離れようと強めに一歩を踏み出すと、凛子は腕を離してから、
「高校でエッチなことしたら退学だぞ」
「しないわ!」
と今日一の叫び声が出て、その勢いで教室を出て行った。
陸の教室に顔を出すと、すぐさま陸がこっちへ来たけども、多分陸の友達だと思われる男子たちが、
「陸いいなぁ!」
「陸いけいけぇ!」
「通い妻かよ!」
とからかってきて、男子が大勢で群れてガヤを次々飛ばしてくるの苦手だなと思っていると陸がその男子たちのほうを振り返って、
「冗談だから俺は有難いけど、あんま幼馴染が不快になるようなこと言わんでっ」
と優しく微笑みながらそう言って、優し過ぎると思ってしまったし、男子たちもしっかり陸の友達なので、
「ゴメンゴメン!」
「嫉妬だった!」
「マジの嫉妬!」
と矢継ぎ早に謝って、まあそれならいいかと思って、一緒に廊下へ出て、とりあえず誰もいない教室のほうへ歩き出した。