表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/10

第1話:祈りが聞こえる世界】

『神の名を抱いて、少女は異世界を癒す』

―A girl who heals the broken with a prayer―**



【第1話:祈りが聞こえる世界】


 目を覚ました瞬間、私は瓦礫の上に横たわっていた。

 空は灰色に濁り、あたりは焼け焦げたようなにおい。ここは……どこ?


 「……生きてる、の?」


 周囲に人の気配はなく、ただ廃墟のような街が広がっていた。

 でも、確かに聞こえる。誰かの“祈り”のようなものが、胸の奥に響いている。


 それは、私が前の世界で最後に心に浮かべていた言葉だった。


 ――「神さま、どうか誰かを助けてください」



 私は神学校に通っていた。

 けれど、信仰に迷っていた。世の中は理不尽で、祈りは届かないと思っていた。


 そんな私が、どうしてこの世界に?


 「お前……もしかして“選ばれし癒し手”か?」


 出会ったのは、黒髪で真面目そうな青年・リアン。

 彼はこの世界に伝わる古い預言書を取り出し、そこに書かれた“白き癒し手”と私を重ねて見た。


 「お前が来てから、この地に小さな花が咲いた。

 ……長く絶えていた“癒しの祈り”が、ついに戻ったのかもしれない」


 癒しの祈り――。

 私はこの世界で、“祈り”によって人々を癒す力を持っていた。


 けれど、それを狙う魔族の影が忍び寄ってくる。

 彼らは“真の祈り”を恐れていた。人の心が神へ向かうことを、拒絶していたから。


 「お前がこの世界を変える。

 俺は――お前を守る。そのために剣を抜く」


 不器用でまっすぐなリアン。

 最初は警戒していたけれど、彼といるうちに私は、信じることの意味を思い出していった。


 信じること。愛すること。祈ること――。

 それは、力ではなく「弱さと共にある強さ」だった。



 この世界を巡りながら、私たちは祈りの力を失った聖堂を癒していく。


 仲間が増え、過去と向き合い、恋を知り、そして――

 神の存在がただの「概念」ではなく、「生きて働くもの」だと実感していく。


 やがて訪れる、祈りを否定する“虚無”との対決。


 そのとき私は、あの日の自分と向き合うことになる。


 ――「神さまなんて、いないと思ってた。

   でも今は……この手の中に、確かに光を感じてる」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ