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014 テスト前放課後の教室は、もはや勉強場所ではない

「霜月。これ、わかるか?」


 テストももう三日前となる。

 明日、明後日は休日なので、次に学校に来るときはもうテスト本番だ。

 放課後、少し勉強してこうと思い、一人で解いた中で分からなかった数学の問題を、霜月に聞きに行く。

 とは言っても、霜月は後ろの席で勉強しているため、振り向くだけでいい。

 ちなみに、つい最近席替えをした。

 隣だった霜月だが、現在は後ろにいる。

 前には猿田、隣は十王可憐という女子だ。


「これ、難しいですよね。ちょっと貸してください」


 そう言って霜月はスラスラとその問題を解き始める。


「難しいと言う割には余裕そうに解くな」

「この前やった問題なので。最初は私も間違いました、よしこれでできました」


 そう言って解いた紙を見せてくる。すぐに分かりやすい解説を加えてくれた。


「なるほどな。助かった。ありがとう霜月」

「いえ。全然。あ、話変わるんですけど。あれ……」


 霜月は「あれ」と言いながらそっと指差す。

 その先には猿田。そして猿田の好きな相手である鴨志田葉月(かもしだはづき)だった。

 隣の席同士の二人なのだが、わざわざ机をくっつけて勉強をしている。


「ずっと二人でやってるな」

「ですね。順調なのでしょうか」


 一応俺は猿田に恋愛相談をされているので、猿田と鴨志田についてはついつい気にしてみてしまう。

 最近は一緒にいることも多いし、いい感じなのではないかと思っている。


「ちょっとトイレ行ってくる」


 猿田がそう言って席を立つのが聞こえた。

 猿田は教室を出てトイレに向かって行く。

 当然、一緒に勉強していた鴨志田は一人になる。


「えちょ、霜月?」


 霜月が突然立ち上がり、鴨志田のところへ行った。

 俺も自分の席につき勉強をしているフリをして霜月と鴨志田の話を聞いてみることにするか。

 前の席が猿田。その隣が鴨志田なので、俺は自分の席で勉強していれば何も不自然なく盗み聞きすることができる。

 実際、先ほどまでも勉強しながら猿田と鴨志田の会話が少し聞こえてきた。


「鴨志田さん。テスト勉強は順調ですか?」

「霜月さん。そうだね。頑張ってるよ」

「最近猿田くんに教えてもらってるのでしょう?」

「そうだね。猿田くんは頭いいから」

「そうなんですか。私は頭いい友達がいないので、羨ましいです」


 すると、一瞬俺の方を向いて冷たい眼差しを向けてくる霜月。

 本気で軽蔑しているとかそう言うわけではなくて、俺をいじっているんだなと言うのが表情から伝わってきた。

 悪かったな。俺が頭悪くて。

 少し待っててくれ。記憶が戻ったらいくらでも教えてやる。

 記憶を失う前の俺が最強だったというのは綾華から聞いただけだから、本当かは分からない。

 でも、最近は信じてみている。

 そのほうが面白いからな。


「鴨志田さんと猿田くんは付き合っているのですか?」

「え?いや、全然そんなことないよ。最近仲良くなったばっかりだし」


 俺も思わず霜月の質問に「え?」と言いそうになった。

 霜月もなかなか攻めた質問をするものだ。


「それもそうですね。失礼しました」


 霜月は敬語だが、鴨志田がタメなことから分かるように、二人は初対面ではないし、一緒にいるところもたまに見かける。

 霜月は基本誰にでも敬語だから、誰に対しても初対面のような話し方に聞こえることも多い。


「あ、猿田くん」


 猿田がトイレから帰ってきた。


「あ、すいません猿田くん。少し鴨志田さんとお話をしてました。じゃ、鴨志田さん、これで失礼しますね」


 そう言って霜月はすぐにこちらに帰ってくる。


「なかなか攻めたな。霜月」

「そうですか?」

「なかなか面白かった。これからが楽しみだな」

「そうですね」


 会話を交わすと、霜月は席に戻る。

 すると、後ろから俺の背中をツンツンと触ってくる。


「なんだ?」

「楓くん……私たちも、あれやりません?」

「あれ、って?」

「席くっつけて勉強しません?」

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