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第二章:囚われの姫君/01

 第二章:囚われの姫君



 店主の好意にあずかり、ひとっ風呂浴びてサッパリした後。シンは彼女から貰った情報を元に早速調査を開始した。

 まずはクスィ村の周辺から始めて、その後で村の東にある谷……店主が言っていた、教団の目撃情報があるという一帯へと赴いていく。

 徒歩で深い森を抜け、低い山と山の間にある(くだん)の谷へ。

 すると……どうだろうか。今までの森とは打って変わって、草木なんて殆ど生えていない岩場だらけのゴツゴツとした谷の中には、何やら怪しげなトンネルの入り口があるではないか。

 どうやら山肌をくり抜いたトンネルのようだ。幅は広く、下方へと緩やかに傾斜がかかっているそのトンネルは……明らかに地下深くへと続いている。

 恐らく古い坑道だろう。放棄されてから随分と久しい、誰の記憶からも忘れ去られた古い廃坑道。確かに秘密基地にするにはうってつけの場所だ。

 そんな廃坑道へと続くトンネルの入り口には……見張りが立っていた。

 黒いローブを羽織った、フードを目深に被る怪しげな男たちだ。その手にショートソードや槍なんかの武器を携えている。

 ――――どうやら、早速ビンゴを引いたようだ。

 地下へと続く怪しげな廃坑道に加え、武器を携えた見張りたち……。

 この場所、まず間違いなく例のメイティス教団の秘匿施設だろう。エクスフィーア王国の正規軍ならこんな妙な真似をしなくても良いし、何よりもあの見張りたち、正規の軍人というにはあまりに立ち姿が素人過ぎる。恐らくは教団の信者だろう。

 この廃坑道を利用した秘密基地に、加えて奇妙な出で立ちの武装した男たち。そして店主から聞いた、最近この一帯に妙な連中が出入りしているという情報…………。

 それらを総合すれば、この場所が教団の秘匿施設であるということはほぼ確定のようなものだった。

 あの宿屋の店主には感謝しなければならないだろう。彼女からの情報があったおかげで、こんなにも早く教団の尻尾を掴むことが出来たのだから。

「さてと……見つけたはいいが、どこから入るかだな」

 とにもかくにも、見つけたからには中身を確かめなければ。

 だが……問題は、どうやって中に入るか、だ。

 ここから見る限り、あの廃坑道のトンネルに入るには真っ正面からしか方法がない。

 しかし、あの見張りを黙らせる方法も思いつかない。一人なら静かに対処する方法はいくらでもあるのだが、しかし複数となると……騒ぎを起こさずに無力化、というのは厳しそうだ。

 仮に出来たとしても、見張り役から何の音沙汰も無いとあっては中の連中が不審がるのは必定。それにもしも外から別の信者がこの廃坑道にやって来たら、見張りが消えていることを変に思うだろう。

「どうしたもんかな……っと、アレはもしかして……もしかする、か?」

 そんな廃坑道の入り口を遠巻きに見つめながら、さてどうしたものかと難儀していると。するとシンはそんな最中、山肌に奇妙なものを見つけていた。

 廃坑道から少し離れた場所に、金網で囲われた……アレはひょっとして、通気口か何かだろうか?

「……間違いない、通気口のダクトだ」

 目を凝らして見てみたが、間違いない。あの金網は換気用の通気口だ。

 あの中から通気口のダクトに入れば、地下まで容易く潜入できるだろう。どうやら周りに見張りの類も居ないし、あの程度の金網なら取り外すのも簡単だから、シンならば侵入は容易だ。

「よし……善は急げって奴だ」

 教団の手掛かりが目の前にあって、そこに忍び込む方法も見つけたとあらば、動き出さない理由はどこにもない。

 シンは隠れていた茂みから立ち上がると、早速行動を開始した。

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