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第一章:光の勇者/02

 ――――神聖エクスフィーア王国。

 この世界の要衝たる広大な大陸・デューロピア大陸の遙か南方……海を隔てた彼方に存在する島国。それが神聖エクスフィーア王国だ。

 島国といっても、その国土はかなり広い。島というよりも、ちょっとした大陸と言った方が適切なぐらいの広大な国土を有するエクスフィーアは、豊かな土壌と温暖な気候が特徴で。更にその立地が立地だけに、各大陸を結ぶ貿易の要衝としても栄えている。

 そんなエクスフィーア王国の片田舎に――――クスィ村という小さな村があった。

 王国の首都・エグザスから遠く離れた場所にある小さな村だ。北方の港町と王都エグザスとを結ぶ、ちょうど中間地点にあるこの村は……昔から旅人や行商人、貿易商たちの宿場町として栄えてきた村だった。

 そのため村にはいくつもの宿屋の他、銭湯や大衆食堂、後は武器屋なんかもある。

「さあてと、今日も張り切ってお仕事お仕事ってね」

 そんなクスィ村にある、旅人向けの宿屋。その宿を営む女店主は、今日も今日とて仕事に励もうと表に出てきていた。

 まずやるべきことは、宿泊客に出す夕食の食材の買い出しに……後は空室の掃除やら色々。とにかくやることづくめだ。

「ん……?」

 やることだらけだが、ひとつずつ片付けていかないと終わるものも終わらない。

 そう思い、店主はまず買い出しに行こうと自身の営む宿から出てきたのだが……しかし、戸を開けたすぐ目の前。そこに転がっている見慣れない何かを見つけると、きょとんとして立ち止まってしまう。

「…………ちょっと、冗談だろう?」

 よく見てみると、店の前に転がっているそれは……人間のようだった。

 セミショート丈に切り揃えた紺色の髪に、一七七センチの長身痩躯な体つき。焦げ茶の革ジャケットを羽織った彼の容姿は……うつ伏せになって転がっているために伺い知れないが、しかし旅人の類であることは明らかだ。傍らに転がる大きな雑嚢が、何よりも雄弁にその事実を物語っている。

 ――――行き倒れ。

 端的に言えば、その男――――シン・イカルガは、この宿の前で行き倒れていたのだ。

「ちょ、ちょっとあんた! 大丈夫かい!?」

 そんな風に宿の前で行き倒れているシンを発見した店主は、血相を変えて彼の元まで駆けていく。

 しゃがみ込み、ひとまず脈を取ってみると……ちゃんと脈はある。どうやら生きてはいるらしい。

「う、あ…………」

 そうして店主が脈を取っていると、シンはうつ伏せの格好から僅かながらに顔を上げ、掠れた声で何かを伝えようとする。

「どうしたんだい、こんなところで!」

「は…………」

「えっ? は、なんだって?」

「は………腹が、減った…………」

 光の勇者、シン・イカルガ――――空腹のあまり、行き倒れ。

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