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11話 戦女神と魔族の男

筋肉が居ないのでアッサリさっくり短めです

「なっどうしてココに神が居るんだ!」

 

 アルティシア領でグレイがマオと共に街を歩き回っているのと同時刻。

 

 アレスは精鋭の教会騎士を引き連れ転移魔法を起動させていた。

 

 眩い輝きと共にアレス達の姿は消え、光が収まると目の前には焦燥に駆られた1人の魔族の男が居た。

 

 頬は痩せこけ、それに反して目は煌々と野望の火が燃え盛っている。

 

 さらに目に付くのは廃坑内と思わしきこの場所。

 

 誰かが暴れたような、戦闘の後が垣間見えた。

 

 アレスは教会騎士へ視線で散会し周囲の制圧へ移るように指示。

 

 アレス自身は能力が不透明な目の前の魔族へ注視する。

 

 その様子に気付かずに魔族の男は手の甲を掻きむしりながら言葉にならない文字の羅列を垂れ流し、狂ったように笑い始めた。

 

「ははははは! 器には逃げられ神に侵入される......おぉ魔王様! 少々お待ち下さいませ! 必ずこの障害を乗り越えて貴方様を蘇らせます!」

 

 手には黒く光る水晶。


 それが宙へ舞った。

 

「何をしたかは分からぬが、その緩慢な動きで私をだし抜けると思ったか愚か者め」

 

 抜き放った剣が魔族の男の手首を切断していた。

 

 音もなくただ切断された事実だけが残され、男の手からは夥しい量の黒い血が吹き出す。

 

「ひっひぃひひ! 手間が省けた! 出ろアンデットドラゴンよ!」


 水晶に男の血が降り注ぐと水晶から光が溢れ出し、廃坑が揺れ始める。

 

 天井は崩落をはじめ揺れが大きくなっていく。

 

 このままでは教会騎士の身が危ないと声を張り上げ今すぐ逃げるように指示を出したアレス。

 

 高笑いをあげる男を殴り付けて意識を奪い、持ち上げた。

 

「さすがに迂闊だったか? だがどうせ早かれ遅かれ出されていたであろうし問題ないな」 

 

 アレスは男を適当に縛って廃坑から飛び出すと震源の元を見た。

 

 廃坑から奥に見える山だった場所が歪に盛り上がり、そこを突き破るようにして骨が見えた。

 

 その後に鼻を突き刺す腐敗臭、あまりの強烈さにアレスでさえ眉を顰めてしまう。

 

「とりあえずはアレを相手すればひと段落というところか、奥の手が無くなればゆっくり『尋問』出来るからな」

 

 アレスは教会騎士へ男を預けると剣を構えて足と力と魔力を込めた。

 

「さぁすぐに片付けるぞ」

 

 一閃。

 

 一筋の光がアンデットドラゴンの首を捉えた。

 

 首がズレれた。

 

 閃光は首をはじめに手や足、体を幾重にも走り抜ける。

 

 その度にアンデットドラゴンは肉片へと変わり果てていく。

 

「ふん、本物ならまだしもアンデット如きに手間取る筈がないだろう。神を甘く見たな愚か者め」

 

 アレスは他愛も無いと鼻を鳴らして元いた場所へ戻っていた。

 

 神速。

 

 グレイとの模擬戦とは比べ物にならない程の速度。

 

 すでにその速度は人の常識から外れていた。

 

「あっアレス様! 大変です!」

 

 教会騎士が悲鳴に近い声をあげてアレスを呼ぶ。

 

 それにアレスが反応すると想定としては最悪な事が起きた。

 

「チッ、用意周到な事だ」


 男が血の泡を吹いて絶命していた。

 

「ドラゴンと命を通して契約していたか......どちらにせよ無駄足だったな」 

 

 アレスは小さく肩を落として教会騎士へ帰還の指示を出す。

 

 その手に持つのは転移魔法陣、コレを使い聖都へ戻る。

 

 状況をまとめなければ。

 

 折角の手がかりが死んだが、それでも情報が無かった訳ではない。

 

 器。

 

 それがどのような形なのかは分からないが、魔王の器と言うぐらいなのだ。

 

 必ず魔王の下へ現れる。

 

 そう確信し、早くアルティシア領へ向かうべく魔法陣を起動したのだった。

 

 /////////

「と言うことがあったのだが、魔王よ心当たりはないか」

「無い、脳みそまで筋肉出ないのだから少しは考えたらどう?」

 

 アレスは額に青筋を立てながらミリアリアと会話を続ける。 冷静に。非常に冷静に言葉を選んで。

 

「なら! そこの後ろで菓子を頬張っている幼子はなんだ! 明らかに禍々しい魔力を持っているだろう!」

 

 指を指した先にはリスのように頬を膨らませている幼女。

 

 ミリアリアに説明ではマオという名のようだが、偽名にしても適当すぎる。

 

 もしや何かを隠しているのでは無いか、グレイさえ騙して裏で動いているのでは無いかと疑心暗鬼に陥るが。

 

「最近、グレイがマオを甘やかして大変なのだ。何かあるとすぐに菓子を買い与えてな」

 

 言葉の割にはどこか嬉しそうなミリアリア、訝しげに睨むと意にも返さずに。

 

「きっと子供が出来たら甘々な父親となるのだろうなぁ」

「おい魔王、顔を引き締めろ。そこのマオも呆れているぞ」

 

 アレスは肩透かしを食らった気持ちだった。

 

 コイツらは変わらずに筋肉しか目に入らないようだ。

 

 それなら一安心、それならばこんな奴らは放っておいて。

 

「我が筋肉共同体へ会いに行くか」

 

 成長し続けるグレイの筋肉を想像してアレスはヨダレを垂らすのだった。

 

 この子達、会話してるようでしてないわね......。

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