ステラ
pixivに載せた鉛筆漫画が読みにくかったので、文字に起こしてみました。
天気の良いある日のこと、気分転換にと普段より遠い公園まで散歩していた。
住宅街近くにあるその公園は小高い丘になっており、その上にもそこから景色を眺められそうだ。
天気は良いものの、時間帯のせいかで、人気は女性が1人いるくらいだった。
(知らなかった、こんな所に展望エリアがあったのか)
商店街やよく行くカフェがすぐ下に見える。
(ん?)
明るい土の上に何か光るもの見つけた。
(指輪?)
近づいて拾いあげると、それなりの大きさのダイヤの付いたシルバーの指輪だった。
内側に刻印は無かった。
近くにはこちらを背にしてフェンスに持たれながら佇む女性がいる。
「なぁ、この指輪、落とさなかったか?」
声を掛けると、女性は振り返り、
「そうよ。私が落としたわ。」
と意気揚々に答えた。
「わざとだったのか。なんで指輪を?」
言いながら指輪を彼女に渡す。
「おまじないしていたの。」
「おまじない?」
「そう、女の子なら誰でもやるような、幸せの道を探すおまじない。最近私の周りで流行ってるのよ。知らない?」
「残念ながら、俺は男でね」
指輪を渡すようなことも無い。
「あら、可愛い顔してるからつい。ごめんなさいね」
「よく間違えられるよ。ところで、どんなおまじないなんだ?」
「あら、興味ある?落とした指輪を使って悩みを解消しようとおもったのよ。誰かに拾ってもらったら、その拾ってもらった時間で合否を判断するーってね」
「高そうなリングをそんなことに使うなよ」
拾った人が持ってったらどうするつもりだったんだろうか?
「もちろん、ずっとじゃないわ。時計の針が、30分前なら、指輪をくれた人との話を進める」
「30分過ぎていたら、今の彼との話を進める」「ー判定は?」
公園の時計を見上げて、長針はちょうど30分だった。
「そうねぇ、あなたに任せてみようかしら?」
「えっ!!?」
「冗談よ。暇なら話、聞いてくれない?」
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「ねぇ、アナタは結婚に大してどう思う?」
「え、俺?」
「そうよ。結婚に憧れる女子の意見じゃなくて、フツーの男の子の意見が知りたくて」
「フツーか…オレは生まれがふつーじゃないから、親の記憶もないし、参考になるか分からないけど」
「あら、苦労してるのねぇ」
「私ね、付き合ってる人がいるの。友人もその事は知っているんだけど、友人がこないだ、私に婚約を申し入れてきたのよ。」
「は?友人って?」
「この街の町長の息子で、私も彼氏も3人とも、幼馴染なのよ。彼氏は一般人で、指輪を買うのに働いてからにするってことで、指輪買えるまでは……ってことで、先延ばしにしていたのよ。」
「別に正式な指輪じゃないと結婚出来ないってわけじゃないんだろ?」
「そうね」
「なら、モノに頼らないでとっとと籍入れるなりすればいいんじゃないのか?」
「私もそれでいいって言ったんだけど、彼のプライドが許さないみたいで…彼が納得するなら待ってもいいかなって思ってるのよ。」
待っても…って、人間はそんなに長生きするんだっけか?と一瞬疑問が過ぎった。
「友人の町長の息子にはその事は伝えてあるのか?」
「もちろん伝えたわ。でも納得してくれなくて、彼と決闘してやるー!なんて言ってて」
「そりゃまた、穏やかじゃないな。ソイツは何か急ぎの理由でもあるのか?」
「あまりに唐突だったから、そこまでは聞いてないわね。なにせ昨日の今日だったから。
ーそうよね、聞かないと分からないこともあるわよね。」
「頭ごなしに否定されて逆上する人もいるみたいだしな」
「そうと決まれば、いっしょにきてくれない?」
と言ってエリー(仮)の手を握るステラ。
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ステラに案内されたのは少し高台に建つすこし立派な屋敷だった。
警備員などは居ないようだ。
門でチャイムを鳴らすと、ライトブラウンの髪をした20〜30代の青年が出てきた。
「ステラ!来てくれたのかい?!ーって、誰だい隣りのコは?」
「こんな時間にごめんなさいね。昨日のお返事……というかお話がしたいのだけれど、いいかしら?こちらは相談にのってくれてるエリー(仮)ちゃんよ」
「……よろしく。」
ペコり
「こちらこそ、よろしく!僕はラーヴァスと呼んでくれ。」
と言って握って来た手はなんとなく力がこもっていた。
「まさかとは思うけど、ステラのこと狙ってるとか言うんだったら、僕が許さないから、気を付けることだね。」
鷹のような目付きである。
(……)
なんと擁護しようか悩んでいると、横からステラがエリー(仮)の肩を抱き寄せ、
「あら、それはないわよ。エリー(仮)ちゃんは弟みたいなだもの☆」
「?!」
(近い…)
「ス、ステラさん,それはどーいう…?」
「私、ずっと弟か妹が欲しかったんだけどね、エリー(仮)ちゃんて困ってる人をほっとけないでしょ?」
(それは仕事につながればいーかなーってぐらいに…あと胸当たってる……)
「ついそんなところに付け込みたくなるってゆーか、グチを聞けそうな姉妹もいないから。だから、そんなに動揺しないで。これからも仲良くしましょ☆」
「は、はあ。」
「ふふ、相変わらず、可愛いものに目がないんだな君は。そんなトコロが君らしくて好きだよ。」
「あら、ありがと。」
ラーヴァスの世辞と告白をさらりと受け流すステラ。
「まぁ、中に入りなよ」
応接室に案内されたところで、
―ピンポン
チャイムが鳴り、
「おや、また誰か来たようだ。」
ラーヴァスは壁際に置いてある電話機を手にすると、誰かと喋っている。
「あぁ、通してくれ。」
入ってきたのは黒髪の長身の男だ。
「ラーヴァス!あんたに聞きたいことがあるんだ!―ってどうしてステラがここにいるんだ?」
「あら、カズサ。じつは…(かくかくしかじかで)」
「何だって?!本当なのかラーヴァス!君がステラにプロポーズをしたって?」
「そうさ。そりゃ君たちが付き合っているのは知っているよ。けれど、君の今の金銭では、彼女を幸せにするなんて事、到底無理だろう?」
「バカにしないでくれるかな?!確かに君に比べればビンボーだけど、ステラを手放す気なんて更々ないからね!」
カズサに怒鳴られても、ラーヴァスはちょっと嬉しそうにしている。
「それはソーリー。でもね、君がそんな事言って何年が経つんだい? そんなんじゃ、ステラが可哀想だよ」
「私は……待てるわ…」
「ごめんよステラ。次のボーナス入ったらその時こそ…」
(思ったより先が長いんだな)
カズサの言った期間が割と長く、話を聞いているだけで、エリー(仮)は思わずげんなりしてしまった。
「いいのよカズサ。それより自分の体を気遣って貰いたいわ。」
「優しいなぁキミは。」
(天使か?!どこからそんな余裕出てくるんだ?)
「ところで、ラーヴァスあなた。私たちに隠してることがあるでしょ?
それも、女性絡みで」
?
いきなり突拍子のないことを言い出すステラに、
カズサとエリー(仮)は目を合わせた。
彼も知らないことらしい。
ステラに確執をつかれたのか、余裕あった彼が、突然目を泳ぎ始めた。
「じ、実は、親にね…見合いを進められたんだけど……どうも相手が金当てっぽくて、胡散臭いとゆーか」
「あんたみたいな金持ちに接触してくるのって、そういうのが目的なんじゃないのか?」
「そうなんだけど…」
エリー(仮)のツッコミにステラが説明する。
「ラーヴァスは、昔ひっどい振られ方をしたから、女性に奥手なのよ。あやうく全財産かすめ取られるトコロだったから。」
「女には気を付けないとな!」
キリっ
「その点、ステラなら僕のこと知ってるし,安心できるというか…」
「ラーヴァス…」
色目を使ってステラを見る彼を横から制止するカズサ。
「一応わかっているよ。でも、父さんは、『好きな人がいるのならとっとと連れてこい』って言ってて……」
「無理よ、ラーヴァス。」
きっぱりと言い張るステラ。
「私、あなたとは友達でいたいもの。貴方と一緒になったら、それこそお金に目がくらんでしまうわ。」
「ステラだったら構わないよ☆」
「あら…まあ♡」
「おいラーヴァス!僕の|彼女≪ステラ≫を口説かないでくれよ!ステラも‼」
「冗談よカズサ。そんなあなたの心配性なところが好きよ。」
「ステラ…」
「ステラがカズサに一途なのは分かったよ。僕も男だ。腹をくくるとにするよ。」
「がんぱってね。」
「お前なら大丈夫だ。何かあったらすぐ言えよ」
「ありがとう二人共。幸せになってね。」
仲直りをできた三人を他所に
「……俺がいた意味あったのか?」
つぶやくエリー(仮)の頭をそっとなでるステラ。
「いいのよ」
後日ー
ラーヴァスの見合い相手はある所の令嬢で、彼と気があったんだとか。
ステラとカズサも無事に結婚することができた。
「おめでとうステラさん」
「ありがとうエリー(仮)ちゃん。来てくれたのね」
ありがとうございます。
なんか、ふわふわっとした感じの話になりました。
次は8/16に更新したいと思います。