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女神ヘルミアの加護

作者: すのーきゃっと

レイア・フリューゲル伯爵令嬢。

それが私。

そして私の目の前にいる優しげな瞳を釣り上げている人はエリオン・ヘーゲル侯爵令息。

私の婚約者だ。


「レイア。私の婚約者でありながら義妹であるメルに散々な嫌がらせをしてるらしいな。」


びっくりして目を見開いてエリオン様の隣にいるメル様を見ると口の端の口角が一瞬あがったのが見える。


「そのような覚えはありません。もし、私がメル様に嫌な思いをさせてしまったのであれば謝ります。」

私はこの場をおさめるために頭を下げた。


嫌がらせをさせられてたのは私のほうだ。

周りの方々もそれは知っている。


メル様のお母様が侯爵家の新しい侯爵夫人となって半年。

そのお子様であるメル様。

エリオン様とメル様は血のつながりのない兄妹である。


メル様と義理の兄妹になるまでのエリオン様は本当にお優しく私の事を常に考えてくださる方だった。

なので私もエリオン様の婚約者として相応しい振る舞いができるようにと礼儀作法や教養すべて全力で取り組んできた。


メル様がこの学園にきて半年の間。

エリオン様が見てないところで嫌がらせをされていた。

侯爵家の令嬢となった事で取り巻きが取り入ろうとメル様の周りには子爵や男爵家の令嬢がちやほやとしてきた。

それで勘違いしてしまったのだろう。

ただ、公爵家や侯爵家の方々は冷ややかな視線を向けていたのは気づいていないみたい。

目に余って注意する公爵令嬢にたいしてもエリオン様に甘えてエリオン様が公爵令嬢に対して、行き過ぎた言動は控えてほしいとお願いしたそうだ。


エリオン様の婚約者である私に対してはじめから冷たい態度だった。

伯爵令嬢ごときがエリオン様の婚約者など身分違いもいいところだとか、あなたにはこんなもの相応しくないわと私の私物を無理やり奪おうとした事があった。

それは祖母からの大事な宝物だった。

だから私は他のものは奪われてもそれだけは無理だと必死に抵抗した。

それが気に食わなかったのかエリオン様にどういう風にいったのかわからないのが私に対して冷めた目つきで厳しい事をいう。


「メルの大事な物をうばったようだな。それを返せ。」

そう言う。


「メル様の大事な物など奪った事はありません。ではお聞きします。メル様。私があなたから奪った大事な物とはなんですか?」


私の言葉ににやりと笑って

「あなが今も堂々とつけてるそのパープルの石のついているブレスレットですわ。あれは私が母から貰った物なのに。」

そう言うと泣いてるふりをしてエリオン様にしがみつく。


でも、エリオン様は固まった。

それはそうですよね?

私のブレスレットがどんな意味かこの学園にいる方ならわかってるはずですもの。

フリューゲル家に代々受け継がれる物なのですから。

女神ヘルミア様に愛されし一族の女性に代々受け継がれるブレスレット。


「メル…。君は私に嘘をついていたのか?」

真っ青な顔のエリオン様。

「嘘などついてません。」

二人のやり取りなど聞いていたくもなくて


「そういう事は侯爵家に戻っていただいてからやってもらってよろしいでしょうか?それとエリオン様と一生添い遂げることなどとうていできない事案ですので婚約について父と相談の上、ご連絡さしあげます。婚約者の話を聞こうともせず一方的な話だけで人のいる場で断罪してくるなどそんな方とは思ってもいませんでした。では。」


「レイア!待ってくれ!」


慌てて追いかけてこようとするエリオン様。

そして、私の腕を掴んだ。

でも、その手が緩む。


「レイア…。」

「残念です。お慕いしていたのに。」


私はそう言うとその場を後にして伯爵家へと戻っていった。

真っ青な顔をしたエリオン様の瞳には涙で濡れた私の顔がうつっていた。


〜〜〜


「まあ、あの夫人を侯爵家に迎え入れた時からこうなるような気はしていた。」

お父様は私の話をすべて聞いたあとにそう言いながら私の頭を撫でている。


「傷物の令嬢になってしまい、申し訳ありません。女神ヘルミア様にも申し訳なく思ってます。」


「レイアが傷物などありえない。それにお前と婚姻したいという者達は後をたたない。」


「それは女神ヘルミア様の加護を子孫に残したいだけです。そんな方達とは縁談は…。」


「わかった。レイアが落ち着くまで西のミレイユの別荘へ行くのはどうだ。お前が元気になる頃には全てが終わっている。」


「それもいいかもしれません。」

そして後はお父様にまかせてミレイユの別荘へと向かったんだ。


〜〜〜


「ここは本当に心が洗われるわね。リューク。」

「ですね。レイア。」


私がミレイユに来て1ヶ月。

着いてすぐに別荘の近くの湖に来て出会った人がいた。

それがリューク。

身分も何もわからない。

彼も私のことは知らず、私も彼の事は何も聞かない。

ただ、名前がリュークということだけ。

どこかの貴族なんだとは思う。

でも、服装は領民達と変わらない。

身のこなしや話し方が良く教育されてる人だとわかる。

私も村娘のような身軽な服装なのできっと貴族だとは思ってはいないと思う。


「君は何も聞かないんだね。」

「あなたも何も聞かないわ。」


リュークの言葉に微笑んでそう言う私。


「私は探してるんだ。」

「何を?」

リュークは私の言葉にふわりと笑うと

「見つけられた気がする。」

そう言ったの。

そのふわりと笑った笑顔に心が少し暖かくなった。


「私は忘れに来たの。色んな事を。」

「忘れに?きっと辛い思いをしたんだね。」

優しい声色でそう言われると胸につっかえていたものが溢れ出しそうになる。


「大丈夫。ここにはレイアと私しかいない。」

そう言うと私の頭を優しく撫でる。

ブワッと涙が溢れてきた。

どんどんととめどなく溢れる涙。

優しく抱きしめてくれるリュークの腕の中でわんわんと子供のように泣いてしまった。

エリオン様に相応しくなるように色々と我慢していた。

淑女とはこういうものだと教えられていたからこんな風に子供のように泣いてしまうなんて言語道断だった。

だけど本当はこんな風に泣きたかったんだ。

そんな私を受け入れてくれたリューク。

私は少しずつリュークに心を開いていったんだ。


2週間リュークには会っていない。

暫くこちらに来れそうもないと言っていたリューク。

会えないと気になっていつもリュークの事を考えてしまっていた。

会いたい気持ちが募る。


そんな時、思いがけない人が別荘へとやってきた。

「ヘーゲル侯爵令息様。お久しぶりでございます。」

少しやつれた元婚約者の姿に少しびっくりした。

「レイア、そんな他人行儀な呼び方やめてほしい。」


「もう婚約者ではありませんのでヘーゲル侯爵令息様も名前で呼ぶのはおやめください。」

私の言葉に傷ついた顔をした。


「君を一方的に傷つけてしまい申し訳なかった。何を言ってももう許してもらえるとは思っていない。ただ、もしできるのであればもう一度婚約してもらえないだろうか?」


「それは女神ヘルミア様の加護を子孫に残す為ですよね。ヘーゲル侯爵様に怒られたのですか?すでにエリオン様のお心はメル様に移ってらっしゃったお見受けしましたが。申し訳ありませんがそういうお話でしたらお帰りください。お約束では私を見つけたとしても話しかけないというお話だったのにわざわざ来られてそんなお話するなんて。お断りさせていただきます。」


「私を慕っていたと言っていただろう。」

「私のお慕いしていたエリオン様はもういません。お帰りください。ヒューお客様がお帰りです。」

「待ってくれ。私の話を。」

私の腕を掴むヘーゲル侯爵令息様。

そこに


「私のレイアから離れてくれないか?」

濃い銀色の髪。

深いブルーの瞳。

正装を身に纏ったリュークとお父様がそこに立っていた。


「リューク?」

「え!?」

そう言うとヘーゲル侯爵令息様は跪き深く頭をさげ

「リュシオン王太子殿下にご挨拶申しあげます。エリオン・ヘーゲルでございます。」

そう言う。

私も慌ててカテーシーをして

「リュシオン王太子殿下にご挨拶申しあげます。数々の無礼申し訳ありません。」

私も頭を下げようとすると


「レイア。待たせたね。今までどおりリュークって呼んで。」

そう言うとふわりと笑ってみせる。

会いたくて仕方なかったリュークの笑顔。

私も笑顔を見せる。


「殿下の勝ちのようですね。」

お父様は悔しそうにそう言う。

「お父様?」

「お前に縁談の話がたくさん来てるといっただろう?その中の一つがリュシオン王太子殿下からだったんだ。」

リュークの方を見ると

「身分を隠して近づいてごめん。でも、レイアの傷を癒やしたかったんだ。私が王太子殿下とわかったら君はそれどころじゃなかっただろう?」

「殿下はなぜ私と…。」

「君を守りたい。あとフリューゲル家もね。君の父上のような方は早々いない。フリューゲル家の女神ヘルミア様の加護を狙うものはたくさんいる。王家もその一つなのかもしれない。ただ、私は違う。君の傍にいてあらゆるものから君を守りたい。私は社交界に出ていなかった。第二王子であるレオンは王妃の息子であるからレオンが王太子になるべきだと思い諸外国をまわっていた。国王と王妃とレオン4人で話をした。真剣にこの国の行く末を。私は王妃が中々子を授からなかったので王妃自ら選んだ者を側妃とした者の子供なのだ。第一王子ではあるがレオンが王太子になるべきだと思っていたが皆から説得されてしまった。ただし、次期王妃となるものは私に選ばせてほしいとそれを条件に。」


だから、探してるんだって言ったのか。

私がどういう人物かを確認しに身分を隠してきたんだ。


「レイア。1ヶ月君と過ごした日は心穏やかで楽しい日々だった。君に会えない時間は寂しすぎた。私には君が必要だ。君は私に会えない時間どうだった?なんとも思わなかった?」


「私も…寂しかったです。今日会えたとき本当に嬉しくてお父様がいなければ抱きついていたかもしれません。」


私の言葉にリュークは頬を染めて視線を外す。

照れてるのかな。


「私もだ。」


見つめ合う私達にお父様がコホンと咳払いする。


「エリオンはもうこれで気が済んだであろう。ここから立ち去れ。」

お父様の言葉にエリオン様がいるのを思い出した。

エリオン様は頭を下げ別荘を後にした。


「では、殿下。私はこれから手続きがありますので帰ります。レイアも気が済んだら戻ってくるように。」

私は頷くと

「お父様ありがとう。」

笑顔でそう言う私に嬉しそうに目を細めるお父様。

きっとたくさん心配かけたんだろうな。


そして二人きりになった。

「レイア会いたかった。」

そう言うと私を強く抱き締める。

「私もです。」

私もリュークにしがみつくように抱きつく。


「会えなかった時間でこんな風に自分の気持ちが膨らんでいくなんて思わなくて。リュークに会いたくて仕方なかった。」

「そう思ってもらえて良かった。忘れられたらどうしようかと思ってドキドキしてたけど、あの私に向けられた笑顔を見たとき本当に嬉しかった。レイア好きだよ。もう離さない。」

「私もリュークが大好き。」


それから2年後リュークと結婚式をあげた。

王太子と王太子妃として。

その日一つの奇跡が起きた。


女神ヘルミア様の加護が降りてきた。

歓迎する人々に光り輝く花々が舞ってきて、王太子と王太子妃の門出を歓迎しているようだった。


そして歴代の国王王妃の中で唯一側妃をもたず仲睦まじい国王と王妃として語り継がれそして女神ヘルミア様の加護を受けた国の名はヘルミア王国として平和で幸せな国として栄えていった。

その時は国王はリュシオンそして王妃の名はレイアその名は色褪せる事なく国民に語り継がれ今も愛されているといわれている。

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