第73話 不思議の国のクロケル
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
書きたい話がある→書いている途中でアイディアが湧く→加筆する→まとまりがなくなる
この謎現象をなんとかしたいです。イラスト何かもっとひどい、描きたい描写は浮かぶけどそれを自分で表現できないと言う……。
何事も努力が大事ですがそれが実るのはいつなのでしょうね?中学生ぐらいの時からこの現状に頭を抱えているのですが。
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
「待て、アリスっ」
ウサギを追いかけて全力疾走するアリスを追いかけて全力疾走した俺たちが行き着いたのは木製で重厚感のある両開きの扉の部屋の前だった。
その扉が僅か数センチほど開いており、ウサギはその小さな体でいとも簡単に扉の隙間に潜り込んだ。
「うーちゃん!」
アリスは再度呼びかけたが、ウサギが戻って来ることはなかった。悲しそうに扉の前で佇むアリスの姿は気の毒だと思いながらも、俺は目の前の家庭内にあるとは到底思えない雄々しい扉が気になって仕方がない。
「なあ、アリス。ここ、何の部屋なんだ。随分しっかりとした造りの様だが……」
「あ、ここは家族共通の書斎なんです。私も含めてみんな本が好きで……趣味も似ているのである程度の図書はここに集めて共有しているのです」
ウサギのことが気になるのか、少し言葉と表情に元気がなかったが質問にはしっかりと答えてくれた。
「そうなのか……でも、扉が少し開いているな。誰かいるのか?」
アリスに断りを入れてから扉の隙間から中を覗いて見たが、明かりは点いていない。書斎は真っ暗な闇に包まれ、物音ひとつしない。ウサギの気配どころかヒトの気配すらない。
「一族の歴史が書かれた貴重書等もありますので、普段は鍵が閉まっているハズなのですが……」
「え、でも、ご家族共通の書斎なのですよね。鍵が閉まっていると好きな時に本が読めなくて不便ではないですか?」
アリスも俺の真下に屈み、隙間から書斎を確認して、おかしいですねぇ……と首を傾げていた。そんなアリスに対して不思議そうにシルマが聞く。
「書斎の鍵は個人で鍵を1本ずつ所持して各々が好きな時に書斎を利用しております。同じ理由で掃除も使用人ではなく私たちが定期的に行っております。中に誰もいない状態で鍵が開いていることはないはずですが……」
「単純に閉め忘れなんじゃないのか」
投げやりな態度で言うミハイルに対し、アリスはしっかりと首を横に振った。
「いいえ。の開閉は厳重に、と言う共通認識がありますので、お父様もお母様も、お姉様も、もちろん私も。今まで鍵はおろか扉を開けっ放しにしたことなんて一度もありません」
「それは今までのだろ。今回はウサギだ何だってバタバタしていたみたいだし、うっかり閉め忘れる可能性はあるだろう」
アリスの否定の言葉に対してミハイルは更に論破した。その可能性はある、そう思ったのか、アリスはしゅんとして押し黙ってしまった。
「まあ、普段はしっかり鍵がかかっている扉が何故開いていたかは一旦置いておこう。まずは、この中に入ったウサギを追うぞ」
大人しいアリスがはっきりと主張しているのだから、鍵のかけ忘れは限りなく低い可能性だと思う。何故鍵が開いていたかは分からないが、この中にウサギが入って言ったのは事実だ。なら、追いかけるしかないだろう。
「アリス、扉を開けるぞ」
「はい、お願いします」
アリスに許可を貰い、俺は大きく重い扉を力を入れて引いた。ギィッと扉の軋む音と共に扉が開く。廊下の明かりが書斎の中を僅かに照らすが、やっぱり中は真っ暗で何も見えない。
「悪い。アリス、電気を点けてもいいか」
「はい。スイッチは入って右の壁に……」
アリスが俺の傍を擦り抜け、電気を点けようと身を乗り出した瞬間、小柄な体がガクンと下に傾いた。
「きゃあっ!!」
同時に叫び声、視線を落とせばアリスが床に吸い込まれて行く姿が見えた。否、床ではない。床があるはずの場所には真っ黒で底なしの空間が広がっていたのだ。
その闇を目視しただけでも吸い込まれそうな感覚に囚われ、言い得ぬ恐怖から一瞬たじろいでしまったが、間一髪でアリスの腕を掴むことに成功した。が、俺の体もグンッと傾き闇の中に落ちそうになる。
「うわっ!?」
「アリス!クロケルさん!」
異変に気付いたカルミンが顔面蒼白になりながらも慌てて俺の腰に手を回し、俺とアリスが落ちない様にその場で踏ん張る。
それに続いてシルマ、シュティレ、シュバルツも俺とアリスの腕や体をがっしりと掴んで何とか引き上げようとするが、これだけの人数でも謎の闇空間の引力には叶わず、俺たち全員がそのまま団子状態で闇の中へと真っ逆さまに落下した。
「きゃあああああっ」
「うわああああああああっ」
それぞれの叫び声が重なる。最後の力を振り絞って上を見上げると、タブレット、ぬいぐるみ、ふくろうと言う体であるが故に俺たちを支えることができなかった為、落下に巻き込まれなかった3つの影が見えた。
『クロケル!みんな!』
聖が叫ぶ声が聞こえたが、何の魔力も持たない俺はただ落下することしかできず、闇の中へ体と意識が吸い込まれて行く状況を受け入れるしかなかった。
「う、うううっ。はっ!みんな、無事かっ」
意識が覚醒した俺は勢いよく体を起こし、まずは自分と一緒に落ちて来た仲間たちの身の安全を確認する。
頭がまだぼんやりとする。どれぐらいの間落下していたかはわからないが、どうやら落下途中で気を失っていた様だ。
俺の呼びかけに反応し、地面に倒れ伏していた仲間たちが体を起こす。俺と同じく、頭がぼんやりとするのか、みんな頭を緩く振るっていた。見たところ、特に大きなけがを負っている者はいない。
「簡易メディカルチェック、完了。みんなさん特に怪我はないようです。脳にも目立った影響は見られません」
淡々と紡がれた声に驚いて肩を見ればアムールが深紅の瞳からチキチキッと機械音を漏らし、この場の全員に謎の光をスキャンさせてから言った。
「アムール!よかった、お前無事だったんだな」
アムールは俺の肩が定位置となっている。落下した際に巻き込まれたのだろう。一応、落下の衝撃でどこかへ飛んで行かない様に必死で支えていたが、何事もなさそうでよかった。
「はい、この通り元気ですよ!落下中、ご主人様が守っていて下さいましたから」
ありがとうございます。と言いながらアムールが笑顔でぎゅーっと俺の頬に抱き着いて感謝の気持ちを伝えて来る。
無事でよかったと言う意味合いも込めて頭をよしよしと撫でながら、ここにいる面々を確認する。
書斎に出現した闇に落ち、ここへ辿りついたのはアリス、カルミン、シルマ、シュティレ、そしてシュバルツだ。要は俺とアリスを助けようとした全員が巻き込まれたと言うことか。
「ううう、体が痛い。でもびっくりした……何、床でも抜けたの?危ないじゃん、アリス」
ヨロヨロと起き上がりながらカルミンが言えばアリスは首を左右にブンブンと振りながら必死で返す。
「し、知らないよ。屋敷の定期点検はきちんとしてるからあんなこと起こらないはずだよ」
「いやいや、床が抜けたとか言うレベルではないだろう。アレは」
パニックからか、言い合いを始めそうな2人をツッコミを交えながら宥める。何が起こったのかよくわからないが、なにもわからないこの状況で仲間割れは非常によくない。
「みなさん、一応回復魔法をかけます。こちらへ」
シルマもなんと起き上がり、落下の衝撃で心身共ヨレヨレな俺たちを一か所に集めて回復魔法を施す。シルマが杖を振った瞬間、頭がすっきりして、体のダルさが解消される。
「ありがとう、シルマ。まだ体調が悪いヤツはいるか」
一応確認してみたが、シルマの回復術が効かないなんてことはまずないと思う。誰も手を上げなかったのでこの場にいる全員の無事を確信して俺は本題に入った。
「みんなはどう言う経緯でここに来たか覚えているか」
「えっと……うーちゃんが書斎に入っていくのが見えたのでそれを追いかけて」
「アリスが電気を点けようとしたらそのまま下に落ちた」
アリスとカルミンが状況を思い出しながら言い、シュバルツもうむむと唸りながら2人に続いて口を開く。
「それで、クロケルがアリスを助けようとして一緒に落ちそうになってボクたちがそれを止めようとして、一緒に落ちたんだよね」
「ヒトの体を支える術がないアキラ殿たちは落下に巻き込まれなかったみたいだな。しかし……ここは一体どこなのだ」
シュティレが溜息交じりに辺りを見回す。俺もそれに倣って改めて自分がいる場所の風景を確認する。
見れば見るほどそこは異質な世界だった。ここは恐らく森の中なのだろうが、周りの木々は奇妙にねじ曲がり、所々にある木々のシミや堀が苦悶の表情を思わせて気持ち悪い。色々な色がぐちゃぐちゃに混じったよくわからない花も見ているだけで何だかぞわっとする。
一番気持ち悪いのは“世界の色”そのものだ。黒と紫が混じって世界全体の雰囲気をおどろおどろしくさせている。太陽の様なものはあるが、それも紫に染まっており、光も温かさも感じない。
世界全体が全体的に暗く、見知らぬ場所に迷い込んだ俺たちの不安を増殖させる。腹の底がぞわぞわしてとんでもなく不快な気分だ。不安と緊張からなんか吐きそうなんですけど。
「ここは多分、異世界ですね」
不気味な世界で全員が周囲を気にして戸惑う中、アリスが1人冷静にポツリと言い、その場の注目を集めた。
「異世界?アリス、この世界に心当たりがあるの?」
カルミンが優しい口調で問いかけるとアリスはぎこちないながらもこくりと頷き、ゆっくりと口を開いた。
「うーちゃんが異世界の扉を開くとき、必ず大きな穴が出現するのです。書斎の床に現れたあの大きな闇は、それに酷似していました」
「つまり、ウサギがいつも通り異世界の扉を開いて俺たち、いやアリスを異世界に引き込んだと言うことか」
「はい、私にとってはいつものパターンですね。ただ今回はみなさんを巻き込んでしまったようです。申し訳ございません」
俺の言葉を肯定した後、アリスは深々と頭を下げて謝罪をする。
「いや、お前が謝るようなことは何もない。寧ろ異世界に慣れているお前がいれば俺たちも心強いよ」
「クロケルさん……そう言ってもらえると嬉しいです。異世界転移の経験者として、脱出するための力になれるように頑張ります」
アリスは嬉しそうに微笑んだ。脱出、そうか……脱出だ。いきなり異世界転移なんてしたせいで全く頭が回らなかったが、いつまでもこんな気持ちの悪い世界に居られない。危険が伴う可能性もあるし、早く元の世界に戻らなければ。
「この世界から出られる方法はわかるのか?」」
「方法はただ1つです。先ほどちらっと話しさせて頂きましたが、うーちゃんがこの世界を満喫するしかないですね」
そう言いながらアリスは苦笑いを浮かべながら肩を落とす。それを聞いたその場の全員の表情が曇る。
「うーちゃんを満足させるって……どうやって?」
「そもそもウサギさん、ここに居ませんものね……」
カルミンが眉間に皺を寄せて首を傾げ、シルマも辺りを見回してから苦笑いで言った。そんな2人の反応を見て申し訳ないと思ったのか、アリスは視線を下へと移してモジモジとしながら言葉を紡ぐ。
「うーちゃんを満足させる方法は好き勝手に行動させることしかないです」
「ウサギを満足させたら確実に元の世界に帰ることができるんだな」
これは一番重要なことである。アリスが俺たちを異世界転移に巻き込んでしまい、後ろめたさを感じているのは分かるし、この現象に慣れている存在だからと質問攻めにして神的に追い詰めるようなことはしたくないが、これだけは確認はしておきたい。
これ以上アリスの罪悪感を刺激しない様になるべく優しい口調で、動揺や不安を悟られない様に冷静を装って確認する。
「はい。うーちゃんが満足すると異世界の扉が再び開きます。帰るときは穴ではなく、白い光の扉が現れて、そこに飛び込めば自分がいた世界に帰ることができます。少なくとも、今までは問題なく帰ることができました」
アリスはこくりと頷き、元の世界に帰れることを暫定的に保証した。よし、イレギュラーが起こらない限り、元の世界には帰ることができそうだ。絶対に起こるなよ、イレギュラー。
「うーむ、ウサギさんからすれば異世界をお散歩している気分なのですかねぇ」
「ぷらっと異世界に行くことを散歩と言って良いのか?しかも毎回アリスを巻き込むことに何の意味があるんだ」
「ご主人様であるアリスさんと一緒にお散歩したいとか」
「そんなアホな」
小首を傾げて若干天然な発言をするアムールに脱力していると、シュティレがガチャンと鎧を鳴らして腕組みをし呆れた口調で提案した。
「なんにせよ、元の世界に戻るためにはウサギを見つける必要があると言うことだな」
「ああ。そうだな、でも……何つーか気持ち悪い場所だな」
改めて辺りを見回して見るが、植物も、世界の色も、空気も、やっぱり寒気がするほど気持ちが悪い。
「ボクもここ、怖いな。怖い空気を感じる」
青い顔をしたシュバルツがぎゅうっと俺の服の裾を掴む。指先から震えが伝わって来たので安心させるために頭を軽く撫でてやったが、その言葉を聞いた俺も気が気ではなかった。
考えても見て欲しい。シュバルツはヒトのナリをしているがれっきとしたモンスターである。動物的いやモンスター的な勘は研ぎ澄まされているだろう。それ故、彼が嫌な空気を察知した事実が余計に恐ろしく感じる。
ここは見た目だけが怖いのではなく、確実に何かがある場所だと察してしまい、俺は泣きそうになった。
うう、こう言うとき聖がいたら嫌味を言ってきて気持ちが楽になるだろうが、残念ながら今ここにその頼りになるがウザい親友の姿はない。しかも俺のレベル事情を知るのはここのメンバーではシルマだけなのである。
こんな見知らぬ不気味世界で高レア(これは事実だが)で高レベルと言う嘘をつき通しながら身の安全を守りつつ脱出なんて不安でしかない。と言うか無理ゲー過ぎる。例えるならゲームを初見からエクストラモードでクリアを目指す様なものだぞ。
「この風景、覚えています。ここは恐らく不思議の国です」
今後に待ち構える不安や怒りに震える俺の隣でアリスがきっぱりと言い切った。その言葉に全員が反応する。
「ここに来たことがあるのか」
「はい。ああ、不思議の国と言うのは私が勝手にそう呼んでいるだけなのですが……。こちらに自分用のメモがあります。それにこの不気味な風景は一度見たら忘れることなんてできません」
アリスは顔を青くして頷きながらポケットから少女の手に収まるぐらいの赤い薔薇のマークのメモ帳とウサギのキーホルダーがぶら下がるペンを取り出し、みんなにメモ帳の中を見せる。
そこには異世界に来た日付を始め、イラストと文字を交えて見やすく、わかりやすいメモが記されていた。顔の様な染みがあるねじ曲がった木、紫と黒で包まれた混沌とした世界のことが詳細に書かれており、それは確かに今いる世界のことを示していた。
「同じ世界に来ることはありえることなのか」
「はい。どこに行きつくかはうーちゃんの気分次第ですので。同じ場所を訪れることもありますね」
異世界移動にすっかりなれているアリスは平然として答え、メモの新しいページを開いて今日の日付を書き込み始める。
「え、お前何やってるの。まさか、この状況をレポートに収めるのか」
驚く俺にアリスは真面目な表情で頷いた。
「はい、一応。異世界の全てを回れるわけではないですので。ワンダーミラ家に生を受けた“アリス”として、責任を持って毎回しっかりとレポートして少しでも多くの情報を集めなければ」
先ほどまで俺たちを巻き込んだ罪悪感に押しつぶされそうになっていた少女の姿はどこへやら。アリスはフン!と荒い鼻息をしながら“アリス”としての使命感に燃えていた。
ヤダ……この子、真面目過ぎない?
「一度来たことがあるのであれば、ある程度の道は把握しているのではないか。アリス殿、見覚えのある道で構わないので案内してもらえるだろうか。ウサギを探そう」
マイペースになりつつあるアリスを前にしても一切の動揺を見せることなく、シュティレが毅然として提案し、アリスはそれに対してしっかりと答えた。
「はい、お任せください。ですが、行動する際は十分気をつけて。ここ、凄く面倒で変な生き物が多いですから。周りを警戒しながら、なるべく固まって歩きましょう」
待って待って!ちょっと待ってSTIP!!今この子、さらっと不穏なこと言わなかっなカナ?面倒で変な生き物って何さ。しかも多いってどういうこと。
「では、非常時に備え殿は私が。アリス殿は案内役故、前を歩いてもらう必要があるが、危険を想定してクロケル殿に護衛を頼みたい」
「えっ」
シュティレが適格に隊列を組むが待って、俺に護衛は無理よ?しかもこんな摩訶不思議な世界で対応なんてできませんよ?
驚きと動揺で思わず声を上げた俺を事情を知らないシュティレが不思議そうに見つめて来る。
「む、どうなされた。何か問題でも?ああ、クロケル殿が後ろにつくか?」
「い、いや、問題と言うかなんというか……あ、あと最後尾は遠慮します。ホント、勘弁して下さい」
モゴモゴとしながら時折早口になる俺を見てシュティレが訳が分からないと怪訝な表情で俺を見る。うわ、背中の汗がやっばい。暑いのに冷たい、変な感じぃ。
俺のレベルのことを暴露するにしてもこの状況下でそれをすれば全員の不安を煽るだけだ。ど、どうすれば良いんだッ。
「シュティレ様、私はクロケルさま後方支援を担当いたします。クロケル様のすぐ後ろにつかせて頂いてもかまいませんか」
成す統べなく頭を抱える俺の前にシルバが立ち塞がり、小さく手を上げながらそう口を開いた。突然の申し出に面食らっていたシュティレだったが、ちらりと俺の方に視線を移す。これは、俺に確認を求めているのか。
シルマの発言の意味も分からず、何と返すべきかと困惑しているとシルマが俺の隣にさっと近づく。そして、アムールが座っていない方の肩口に顔を寄せ、小さな声で言った。
「なるべく私がクロケル様のお傍に控えてみなさまをお守りします。なのでご安心ください。戦闘のサポートも致しますので」
心強い申し出に俺はガチガチに固まった体と心がマシュマロのごとく柔らかく溶け行く感覚になる。
そしてありがとうの意味を込めてシルマに向かって微笑み頷き、シュティレに向き直って返答する。
「ああ、シルマの後方支援は頼りになる。是非、俺の後ろに置いて欲しい」
「ああ、了解した。カルミン殿、シュバルツ殿は列の真ん中に。皆とはぐれないように注意してくれ。クロケル殿も問題ないな」
シュティレはキビキビと頷き、そして俺たちは決定した通りに列を作って出発の体制を整えた。
「よし、じゃあ、行くか」
まだ恐怖はあるが、勇気を出して歩き出そうとしたその時、俺のポケットに入っていた端末が音を立てて震えた。
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アムール「次回予告!深い穴の先で辿り着いたのはとってもセンスの悪い世界。異世界転移経験者のアリスちゃんの案内でウサギを探し、その世界を探索することになったんだけど、そこでご主人様たちは結構大変な目に遭うのです!」
クロケル「アムール!?なんでお前なんだ。聖は?」
アムール「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第74話『ウサギを探して何千里』諸々事情があるのでわたしが予告を担当させて頂きました★」
クロケル「ううう、大変な目ってなんだよぅ。無事に元の世界に戻れるのかな」
アムール「大丈夫です!アキラさんの代りにわたしがしっかりご主人様をサポートしますので!」
クロケル「ありがとう、アムール。頼りにしてるぞ」




