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第70話 次なる目的地を目指したいのに人間関係ギッスギス

本日もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


ラブコメっぽく書いてみたい。そう思って今回このお話を書いてみたですが、全然ラブにもコメディにもならなかった悲しみ。故に小休止的なお話と思って頂ければ幸いです。


ラブを書こうと思う場合は恋愛経験が豊富でないとダメなのでしょうか?二次元じゃダメ?あ、ダメかぁー。でも、現実のラブは夢も希望も少ないような?(個人の意見です。参考にしないで下さい)


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「何が悪いかわかっていないのにとりあえず謝るのは良くないぞ」


 シェロンさんが楽しそうに笑いながら俺に注意を促して来た。その言葉にも一理あると思いつつ、内心で呟く。なにわろてんねん。


 確かに、俺にはシルマとシュティレがご立腹な理由がわからない。自分の行動を振り返っても、何が悪いのか見当もつかない。


 可能性があるとするなら、アムールを設定する時に長らく無視をする様な行動を取っていたことぐらいだが、無視と言っても時間は数分から数十分程度ぐらいだ。それにそれぐらいで怒るような2人ではないと思うが……。


 静かに圧をかけてくる女性2人を前に恐怖と戸惑いを感じながらも必死で怒らせてしまった原因を考えていると俺の隣で浮かんでいた聖が苦笑いで呟いた。


『うーん。近いような、遠いような』


 聖は2人が怒っている理由がわかるのか!?よく考えればシェロンさんも原因が分かっているっぽい言い回しだったような。当事者(?)の俺は思い当たらないのに周りが気づくほどの原因ってなんだよ!!


「ご主人様、お困りですか?わたしにできることがあるならお申し付けください」


 プチパニック状態の俺の掌の上でアムールが心配そうに俺を見つめ、頭を下げた。人懐っこい性格に設定しているからなのか、謎の圧をかけられてしおしおになっている俺を気遣って凄くグイグイくる。


「ありがとう、でも大丈夫だ。多分、原因は俺だから」


「そうですかー、残念です……では用事ができたらいつでもお声がけ下さい。わたしはいつでもここにおりますので」


 今は特に用事はないと告げると、アムールは残念そうに肩を落とした後、俺の掌から腕を掴み、小さな体でよじ登り始めた。

「お、おい。何してるんだ、危ないだろう」


 落ちては大変だと俺の腕をよじ登るアムールの体を支える様に添えれば、大丈夫です!と微笑んでそのまま登りきり、俺の肩にちょこんと座った。


「えへへ、今日からここが私の特等席です」


 両足をパタパタとさせ、満足そうに笑う姿に小動物的可愛さを感じた俺は人差し指の腹でちょんちょんとアムールの頭を撫でる。


「好きにしてもらって構わないが、風呂とトイレの時は離れてくれよ。一応、プライベート空間だからな」


「ご安心ください!()()()はご主人様が困るようなことは一切いたしません」


 そう言って元気いっぱい笑った。俺に笑いかけた後にシルマとシュティレにも笑いかける。場に漂う変な空気を察したのだろうか。だとしたらそうとう優秀なAIだな。


ふとシルマとシュティレの方へ視線を向ければブリザードの威力を更に強めてこちらを見つめていた。そのあまりの迫力に今度は声も出せずにその場で固まってしまった。


「お前も大概懲りないな」


 青ざめて震える俺にアンフィニが溜息をついて言った。


「俺は寧ろなぜこいつがそんなに慕われるのか謎だよ。人間は変わった趣味をしているな」


 ミハイルも呆れて首を横に振っていた。まさか、この2人もシルマとシュティレがご立腹の理由がわかるのか!?そしてやっぱりこの状況は俺のせいっぽい。


 えぇぇぇ!?なんでみんな理解してるのに俺だけわからないんだ。ダメじゃん!無意識にヒトを怒らせるとか人間として一番ダメだよ。もういっそその怒りの原因を教えて下さい。きちんと謝りますから!!


『うーわー。ちょっと性格ヤバ過ぎじゃない?なんであんなことになってるの。初期設定で変な操作した?』


「ええ~?変な操作なんてしてないよ。クロりんの要望で人懐っこい性格にはしたけど、それ以上の感情が向くように設定した覚えは……あ」


 ビビりまくる俺の近くで聖とペセルさんが呑気に会話をしていた。設定がどうのとか聞こえたかと思えば、いつの間にかアムールの設定画面を立ち上げていたペセルさんが「あ」と言う状況によっては聞きたくない単語ナンバーワンを口にした。


『なに、なんか面白いことになってたの?』


 聖がワクワクとした声色で画面を見て停止するペセルさんに近づいた。俺も気になったのでアムールを肩に乗せたまま画面を覗き込む。


「好感度……100パーセント?」


 俺が画面に映し出された文字をそのまま声にして読んだ。好感度、ひゃく!?仲間になった瞬間から!?


「そっかー。ここの設定忘れてたよ。デフォルトでは100になってたんだった」


「なんで初期設定に好感度が……」


 と言うか初期段階で好感度をいじれるのはいかがなものか。こういうのは戦いや旅を重ねて上がって行くものだと思っていた。


 というか、普通はそうじゃないのか?アイテムを使って好感度を上がりやすくするならわかるが、初期設定からメーターぶっちぎり設定が可能とかいかがなものか。


「うーん、何でって聞かれるとペセルちゃんも困っちゃうけど……、でも高い分には損はないと思うんだよね。自分に懐いてくれるAIってかわいいでしょ」


 ペセルさんは好感度の存在を忘れていたことを誤魔化す様テヘペロしながら右手で拳を作って自分のこめかみを軽く小突いた。反省する様子はない。


 まあ、ペセルさんの言う通り、好感度が低いよりも高い方が接しやすいだろうとは思う。そもそも人懐っこい性格に設定したのに好感度が低かった場合はどうなってたんだ。ビジネスパートナーみたいな割り切った関係になってたのか?


『ほほう。アムールのこのクロケルすきすき~はそのせいなのか』


「いや、その言い方には語弊がある様な気が……」


 聖が興味深く頷き、納得していたが“すきすき~”の部分には違和感しか覚えない。だって俺の経験、現実でも二次元の世界においても好感度=恋愛感情ではないからだ。


 それを言ってしまえば、普段から俺にくっ付きまくりのシュバルツからの好感度も半端なく高いと自覚しているが互いに抱くものは恋愛感情ではなく友愛。愛は愛でも似て非なるものだ。


 確かにアムールの行動からは若干行き過ぎた愛情を感じなくはないが、それは人懐っこい設定かつ好感度が高いからの行動だろう。


『ええ~、それ本気で言ってるぅ~?』


 心を読んだ聖が俺のことをタブレットの角でツンツンと突きながらからかう様に言った。正確に言えば言ってない。心の中で思っているだけだ。


「本気だし、事実だろ。少し懐かれているからって何でもかんでも恋愛に結びつけようとするな」


「そんなことないですよ。わたしはご主人様が大好きです」


 しっかり否定した俺だったが、肩に座るアムールは俺の頬に抱き着くようにピトッと己の頬を摺り寄せて来た。


「あのな、アムール。好きだって言ってくれるのは嬉しいが、行動には気をつけろ。突然すりすりするのも控えてくれよ」


「ええっ、わたしのデータによると相手に好意をするには惜しみなく愛情表現をすることが重要とあるのですが、違うのですか?」


 ちょっとかわいいと思いながらも俺が行動には注意する様に指導するとアムールは心底驚いたのか元からくりくりしている目をさらに丸くした。


「どこのデータだよ。うん、間違ってないかもしれないけどオープン過ぎると引いちゃうヒトもいるからほどほどにな」


 性別や種族に関係なく、他人にグイグイくる肉食系は時としてプレッシャーや、あらぬ誤解を与えてしまう場合もあるので十分に気をつけてもらわないといけない。そう思って俺は重ねて注意した。


「はぁい。気をつけます」


 アムールはあまり納得できないのか、唇を尖らせながらも俺の注意を受け入れた。


『ねぇ、好感度だけも調節できないわけ?僕としては面白いからいいんだけど、色々と弊害が出そうだよ?』


 弊害、と言いながら聖は冷たくドス黒い視線をこちらに送り続けるシルマとシュティレに視線を移しながらペセルさんに言う。


「それが……この子は一応、ペセルちゃんの一部で精密なプログラムだから、ハッキング防止のために設定の上書きはできない様になっているの。再設定したいなら、また初期化するしかないけど……その場合また名前を付け直す必要があるから大変かも」


 だからやめた方がいいよ?とペセルさんは小首を傾げて微笑んだ。


『なにそれ、名前の付け直しはできないってこと?』


「うん。初期化するってことは、もうこの子と言う存在は消えるってことだから。次に設定する時は同じ姿をした違うミニセルちゃんだから、アムールって名前を受け入れるとは限らないの」


 ペセルさんの言葉を聞いて俺は肩の上でにこにことしているアムールに視線を落とす。視線があって満面の笑みを返され、俺は思った。


 ヒトだろうがAIだろうが出会いは一期一会。出会ってすぐに初期化だなんて、アムールに失礼だよな。好感度が高くても戦闘には支障はでないだろうし、多分きっと問題はないはず。聖の言う「弊害」は気になるが、俺は決めた。


「大丈夫。俺はこのアムールと旅をするよ。せっかく設定して、名前も付けたんだし、好感度がぶっちぎっているってだけで消すのは可哀そうだ」


「うんうん、それがいいよ。クロりんは優しいなぁ。アムールちゃんを大事にしてあげてね!」


 ペセルさんは首がもげるのではないのかと思うぐらい深く頷いて、俺の肩にいるアムールを人差し指でちょいちょと撫でた。


『まあ、君がいいなら僕も何も言わないけど……せめてあの2人は何とかしなよ?』


 そう言われて俺はギクリとした。そしてさび付いた機械の様にギギッと固く、ぎこちなくシルマとシュティレに視線を移す。


 そうだった……俺まだこの2人が怒っている原因がさっぱり見当がついていなかったんだった……どうしよう、どうすればいいんだッ。


「あ、あのさ……2人共。俺、自分が何をしたかさっぱりわからないんだが、流石にこの空気のまま旅を続けるのは辛いんだ。だから、改めて謝る。すまない、何が悪いかとかは本当にわからないけど本当にごめんなさい!」


 必至に考えた結果、俺は2人に向かって勢いよく頭を下げて誠心誠意謝罪すると言う選択を選んだ。もちろん、肩に乗るアムールが転がり落ちない様にしっかりと支えながら。


 緊張で心臓がいつもよりも早く脈打つのがわかる。頭を下げたまま、ハラハラしながら俺は2人の言葉を待つ。


「……別に、怒っている訳ではないですよ」


「ああ、私も決して怒っているわけではない」


 ようやく口を開いた2人は先ほどまでの怖いぐらい凍てついた空気が少しだけ緩んでいた。俺が頭を下げたことが良かったのか、それとも時間の経過と共に怒りが治まったのかはわからないが、とりあえず良かった。


 ただ、シルマもシュティレも怒っていないと言いながらも気まずそうに俺から視線をそらしたまま目を合わせようとしてくれないので、まだ少しわだかまりがあるのかもしれないと不安に襲われた。


「あきら、オイ、聖」


 あんな寒くて冷たくて圧がある恐ろしい雰囲気はもう二度とごめんだ。そう思った俺は小声で聖を手招いた。


『ん、なんぞや~』


 のんびりと俺に体を寄せて来る聖に俺は小声で問いかける。


「なんでシルマたちはあんなに怒ってたんだ。何に対しての怒りだったんだ?考えても分からん。頼む、教えてくれ」


 それは恐らく世界で一番情けない頼みの言葉だとは思うが、どんなに情けなくてもわからないのは事実。とシュバルツ以外の面々は勘づいている様だし、今後こう言うことが起こらない様に努めたいので原因を究明したい。


『そりゃ君に対しての怒りでしょ。理由は……うん、野暮だから言いたくないな。将来的に彼女たちから聞いて理解するか、君の察しが良くなるかの2択しかない』


 全く答えになっていない返答があり、俺は頭を抱えた。察するって何をだよ!もう、わかんねぇーよ。誰か助けてくださーいっ!!


「まあ、いろいろ複雑な事情はあるが……アキラよ。ネトワイエ教団の動きはどうじゃ。魔力反応を追えるか?」


 難しい人間関係に絶望し、頭を抱えている俺を哀れに思ったのかシェロンさんが落ち着いた口調で話を進めた。


「うん。大丈夫、追えるよ。向かっているのは……星の国だ」


 聖夜も即座に気持ちを切り替え、真剣な口調で答えた。


 星の国、と聞いて俺の脳裏に浮かんだのはプラネタリウムや星座などの幻想的で神秘的な風景だ。なんだろう、名前の響きだけでちょっとワクワクしてしまうこの気持ちは。


「ふむ、やはりそこに向かうか……。しかし星の国とはなぁ。ここからはちと遠いのではないか」


 シェロンさんが小さく唸って首を傾げる。え、あれっ。てっきりまたシェロンさんが送って行ってくれると思い込んでいたが違うのか。


「我が送ってやりたいのは山々だが、そろそろ竜の谷に戻らなければならぬのじゃ。一応、谷の長じゃし、民が過ごす場所を長らく放置するわけにはいかぬ故」


 俺の心を読んだシェロンさんが申し訳なさそうに言った。いいえ、問題ないですよ。寧ろ図々しいことを思って申し訳ない。ここまで楽な旅を続けていたせいでいつでも送り迎えしてもらえるものだと思い込んでいたのだと思う。ホント、すみません。


『でも、同じ竜族ならシュティレちゃんもいるじゃない』


 図々しさに関しては俺の遥か上を行く聖が腕組みをしながら佇むシュティレを見やりながら言うと、彼女は組んだ腕をほどき、申し訳なさそうに肩を落とす。


「申し訳ない。私はシェロン様よりも体が小さい上に、ヒトを背に乗せて飛ぶことに慣れていないのだ。故に全員を乗せて飛ぶことは難しいのだ」


「ペセルちゃんも生身の人間を遠方までワープさせるような技術は持ち合わせてないから、遠い国まで送るのは厳しいな。あ、でも隣国までのリニアならこの国からでてるから、利用すればいいよ」


 しょんぼりシュティレに続き、ペセルさんは一瞬だけ困った表情を見せた後、思いついたと指パッチンをして提案して来た。


「隣国までですか……直通のものはないのですか?」


 シルマが聞くとペセルさんは眉を下げて複雑そうな表情を浮かべて言った。


「うーん、星の国を治めているヒトがねぇ、ちょっと気難しいヒトなんだよ。外部からの訪問者をあまり受け入れたがらないというか。まあ、禁止にしているわけではないんだけど、入国しにくい環境を意図的に作っているんだと思う」


「え、そんなんで俺たちは入国できるんですか。突然の訪問者もいいとこですよ。俺たち」


 常に笑顔のペセルさんがこんな微妙な反応をすると言うことは相当複雑な事情を抱えた国なのかもしれない。星の国へ行くまでにどんな苦労があるかは知らないが、苦労して行ったのに入国できませんと言われたら最悪である。


『入国はできるよ。ペセルも言ってたけど外部からの入国を禁止しているワケじゃないからね。入国審査的なものはあるけど、僕たちはパスできると思う……思いたい』


「ちょっと自信なさげな部分が気になるが、入国審査がパスできるかもしれないってどういうことだ。あ、まさか……」


 ちょこっと聞いただけでもお堅そうな国の入国審査に俺たちの様な異邦者がパスできるその理由は恐らく1つしかない。


『ご明察~。星の国の長はかつて神子と共にこの世界を救った人物だよ。今回のこのゴタゴタは既にシャルムから連絡が行ってると思うから、さすがに入国は許されるともうんだよね』


 聖夜はヘラヘラと答えたが“まあ、行ってみないと分からないけど”と小さく続けたのを俺は聞き逃さった。微妙に嫌な予感はするのは気のせいか?


「じゃあ、星の国を目指すってことで!リニアのチケットを用意してあげるね。えーっと……見た目がヒトの分だけでいいかな」


『いいんじゃない?それとも、この国は動物とぬいぐるみとタブレットからも運賃取るのかい』


「あはは~。だよね!でも一応、それぞれのフリはしておいてね。なんかややこしそうだし。じゃあ、ポチポチっと……はい、取れた。これでいつでもリニアに乗れるよ」


 ペセルさんが満面の笑みで指でOKマークを作る。なんと言う行動の速さ……アイドル業だけじゃかくてこう言う雑務も率なくこなせるなんて中々のやり手だ。やはり流石AIと言うべきか。


「ありがとうございます。えっと、それで隣国ってどこでしょうか」


「ああ、そうだった、それが一番重要だった」


 御礼を言いつつ、目的地を尋ねるとペセルさんはんんっと小さく咳払いをした後に飛びきり可愛いアイドルボイスでウィンクをしながら言った。


「おとぎの国だよ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!新たな国を目指して動き始めたクロケルたちの旅。リニアに乗って向かうのはおとぎの国。そこでクロケルたちはとある人物のとの再会を果たすのだった」


クロケル「とある人物?この世界で俺に知り合いなんてそういないが……」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第71話『おとぎの国の災難』ネトワイエ教団から離れて小休止……とは行かないみたいだね」


クロケル「“おとぎ”と言うファンシーな言葉の後に続く“災難”と言う不穏な言葉。ダメだ眩暈が……」


聖「踏ん張れクロケルー!!」


クロケル「世界一元気が貰えない応援だな」





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