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第65話 サイバーダウン!?電子の国の危機!!

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


珍しくお昼に投稿できました!今日はお仕事がいつもより少なめで嬉しいです。もうずっとこの状況が続けばいいのに……。


そう言えばジェネレーションギャップって怖いですね、先日年下の子とオタクな会話をしていて「そのアニメが放送された頃は生まれてないんです」って言われて「エッ」ってなりました。


別に年を重ねるのは嫌ではないのですが、ちょっとビクッってなりますね。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 なんと、まさかの不合格。俺の行動は全て無意味だったのだ。恥を捨てて一緒懸命に歌ったのに、高いテンションをキープしていたはずのラピュセルさんに冷たい態度で評価された。


 辛い、辛すぎるぞ。自分的には音も外していなかったし、普通には歌えていたはずだ。何が悪かったのだろうか。


「あ、あの。どの辺がお気に召しませんでしたか」


 自分では見当もつかないため、確認するとペセルさんはうーん、と声に出して頭を捻り、そしてズバリ言った。


「全部かな。言ったよね、心に響く歌が聞きたいって。頑張っているのはわかったけど、ペセルちゃんの心にはなぁーんにも届かなかった」


「ぜ、全部……」


 頑張って最後まで歌いきったのにまさかの全否定。ひどい、ひどすぎる。ああ、これは精神的大ダメージ。そしてすっごい恥ずかしくなってきた。


『大丈夫だよ、クロケル。君は頑張った』


「はい。私は好きです、クロケル様の歌」


「ボクも、好きだよ」


「気を落とすな。私も悪くはなかったと思うぞ」


 精神滅多打ちで項垂れる俺を聖、シルマ、シュバルツ、シュティレが声が慰めてくれる。みんな優しいな。でも何でだろうな、その優しさですら今は痛みになるよ。


「でも普通の歌唱じゃ心には響かないだろう」


「確かに、ただ歌っているだけと言う印象は受けたな」


 ミハイルとアンフィニの言葉が俺の言葉を刺す。普通普通とやかましい。まだ下手だと罵ってくれた方がマシである。


「ふむ。我も歌自体は悪くなかったとは思うが……しかし悪いところは全部、とはちと抽象的な表現過ぎないかのう。もう少し具体的な指摘をしてやったらどうだ」


 シェロンさんがペセルさんにそう申し出てくれた。うん、まあ具体的な指摘は欲しいがちょっと聞きたくない様な、これ以上のダメ出しは俺の精神が粉々になる様な気がする。やめてくれ!俺のライフはもうゼロなんだ。


「具体的って言われてもなぁ、心に響かないって表現以外言葉が見つからないんだよねぇ。ほら、配信を見てくれたヒトの評価もいまいちでしょ」


 そう言ってペセルさんは何もないところに手を触れ、電子画面を空中に立ち上げる。そこには先ほど歌唱した俺の映像が映っていた。ライブ配信だったが、後から見られるようにもなっている様だ。


 再生回数を確認してみると先ほどライブ配信が終わったにも関わらず、2億とか言うえげつない再生回数を叩き出していた。


「なんだ、このデタラメな再生回数は」


『ペセルの知名度は国内外問わないからね。ネット中心のアイドルだからネットをやらないヒトは知らないかもしれないけど』


 とんでもない数字に驚愕する俺に聖が言った。そう言われてチャンネル登録者を確認すれば2億どころではない数字が表紙されていた。数字の羅列でゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。目がチカチカする。


「ペセルさんが歌った動画ならこの再生回数も納得だが、俺の歌唱動画だぞ。何で億も稼げるんだ」


『さあ?視聴者からすれば“ペセルが投稿した”って言う事実が大事なんじゃないの。ああ、ペセルが君の歌を評価してって“お願い”したのも大きかったのかも』


 聖の言葉で俺はハッとした。そうだ、評価だ。ペセルさん曰く、評価がいまいちだったらしいけど。と言うか、俺は2億人にいまいちな評価をされたと言うのか。


 せめて1人ぐらいに刺さってくれてもよくない!?そんなことを思いながら俺は動画の下にある評価・コメント欄に目を通した。


“聞いたことのない歌だった、新しい!このヒトのオリジナルかな”


“斬新な曲だけど、歌は普通。下手じゃないから聞けないこともないけど”


“ペセルちゃんのお友達イケメンだー”


“イケメンの歌唱、いいな”


“曲は良いけど歌唱は普通”


“評価しにくい普通さwww”


 そこには目で追いきれない量のコメントが並んでいた。草を生やされているものや「普通」と評価されているものは多かったが、俺の心を抉るレベルの批判的なコメントは今のところ特に見当たらない。


 なお、画面のすぐ下に動画を“ヨイネ!”もしくは“イマイチ”で評価できるボタンがあるが、今のところヨイネ!の方が多い。


「総体的に悪くないですね」


 俺の隣で画面を覗き込んでいたシルマが言った。確かに、提示された画面を見る限りでは視聴者からはそれなりの評価は貰えている様な気がする……ちょっと嬉しい。


「表面的な評価を見ないでよ~。よく見て、みんなが評価してるのは曲の物珍しさとクロりんの容姿だけ。歌を評価しているヒトはいないでしょ」


 どこがいまいちなのか見当のつかない俺を見て、ペセルさんが腰に手を当て、頬を膨らませながら画面を俺に近づけて詰め寄る。


「え、ああ。本当だ……」


 ご立腹なペセルさんに言われて改めてコメントを見直すと、俺の「歌唱」を評価しているものは1つもなかった。


 評価もされていなければ批判もされていない。「普通」と書かれていることが多く、関心が向いていない様な気がしなくもない。


「ね、みんなの心にも響いてないでしょ」


 納得したかな?と笑顔を向けて来るペセルさんだが、どんなに数字で証明されてもやはり納得ができない。


「でも、やっぱり素人の即席歌唱で他人の心を打てるとは思いません」


 こちらは練習も何もなく、ここへ通されて早々に準備もできずに歌唱したのだ。俺もノリ気じゃなかったし、無茶振りもいいところである。


「そんなことないよ。そんな考えじゃどれだけ練習をしても、


 不満をぶつける俺にペセルさんはアイドルスマイルを封印し、真剣な眼差しでキッパリと言った。


「クロりん、ずーっと面倒くさいって思ってなかった?早くこの時間が終わればいいのにって思いながら歌ってたでしょ。全然歌と向き合ってなかった」


「えっ」


 ギクリ、と俺の心臓が鳴る。確かにペセルさんの言う通りだ。俺は歌唱前も歌唱中も“とりあえず”歌っておけばいいと思っていた。


 適当に歌っていたわけではないが、この試練に疑問を持ちながら歌っていたことは事実だ。そう言う意味では歌と向き合っていなかったのかもしれない。


 思い当たることだらけで、なにも言い返せずに黙り込む俺にペセルさんがぷくっと頬を膨らませながら言った。


「ホラね、やっぱりそうでしょ。それが伝わって来たの。自分のことしか考えていないヒトの歌が誰かに届くわけないもん」


「返す言葉もありません……」


 ペセルさんの言葉に間違っているところは1つもない。ないのだが……やっぱり素人だから自分にいっぱいいっぱいになってしまうのは仕方がないことだと思わなくもない。反省すべき点はあるが解せないといえば解せない。


「ってことでミニセルちゃんのお渡し会はお預け。リベンジ、お待ちしておりまーす★」


 ペセルさんがそう言うと手のひらの上でぴょんぴょんと跳ねていたミニセルさんがポンッとポップな音を立てて消えた。


「そんなぁぁぁぁぁ」


 両手両膝を地面についてうな垂れて絶望する俺の肩をポンポンと叩いてペセルさんが言った。


「ガッカリしないで!歌について色々掴めるまでペセルちゃんのおうちに居ていいからね。暫く滞在するならお部屋もベッドも貸すから!」


 なんでそんなにいい笑顔なんですか。飴と鞭が良い感じに俺の精神を削って来る。ワザとやってるのかな。天然ならそれはそれで質が悪い。


「そう言えば、ここどう言う構造になっているんですか。海の中にあるし、球体だし……見た感じ部屋は1つしかないみたいですが」


 精神的疲労を抱えながらも俺は辺りを見回した。海の中に飛び込んだ先に存在した謎の球体の中にゆめかわワンルームがあったと言う違和感はまだ拭えていないのだ。


「海の中におうちがあるのはペセルちゃんが売れっ子アイドルだからだよ。人目を避けて暮らしたいからそうしたの」


『電脳体なんだから住む場所なんていらないだろうに……ヒトの真似事が好きなのは相変わらずだねぇ』


「む、アっくんひどーい!!ペセルちゃんはヒトと同じがいいの。ヒトが電脳体に憧れるのと同じで、電脳体もヒトに憧れてるんだよ。否定されるの悲しい」


 ペセルさんがわざとらしく顔に手を当てて涙を流す仕草をする。ああ!もう、また話が逸れる様な事をする!!


「すみません。こいつデリカシーなくて……無視してください。それでその……海の中に家って不便じゃないですか」


 話が逸れてなるものかと俺は無理矢理に話題を続けた。ペセルさんは手を顔から離し、にっこり笑って言った。やっぱりさっきのはウソ泣きだったんだな。


「厳密に言うと海の中じゃないんだけどね。ここは現実と切り離された空間にあるの。シャロちゃんが住んでる竜の谷と同じだと思ってもらっていいよ。その証拠に飛び込んでも冷たさとか、息苦しさは感じなかったでしょ」


「そうですね。あ、でも……体が少し浮いた様な……」


 あの時は唐突に海に飛び込めと言われて気が動転していたこともあり、変化を感じる余裕もなかったが、今思えば飛び込んだ瞬間、体が浮く様な感覚に囚われた気がする。


 水が持つ浮力ではなく、風と言うか衝撃波というか。前から目に見えない何かが流れて来たような感覚だった。


「それは多分空間の流れを感じたんだね」


「空間の流れ?」


 ペセルさんがさらりと笑顔で言った。内容がファンタジー過ぎて異世界初心者な俺は説明の度に質問で返さざるを得ない。


「実はね、クロっちたちが飛び込んだ海は本物の海なんだよ。でも、ちょこっとAIにアクセスして操作をすればバーチャルに空間に書き換えられるの」


「は、はあ……えっと、つまりどう言うことでしょうか」


 ただでさえよくわかっていない状況で横文字を交えての説明はやめてください。理解ができません。


「うーん。わかりやすく言えば、クロりんたちが本物の海に飛び込んだ時にバーチャル空間に繋げてペセルちゃんのおうちにワープさせたってコト」


 眉間に皺を寄せ、頭上のはてなマークが消えない俺を見兼ねてペセルさんが更に噛み砕いた説明をしてくれた。


 ああー、なるほど。要は海に飛び込んだ瞬間バーチャル空間に生身のまま飛ばされたってことだな。


「あの海は言わば玄関だね!広いでしょ」


「まあ、海が玄関だなんて素敵ですねぇ」


 シルマが両手を合わせて瞳をキラキラとさせながら言った。シルマってたま~に感覚がズレている時があるよな。天然なのかもしれないけど。


 と言うか海が玄関とか広大過ぎるわ。それに俺たちが飛び込んだ時にペセルさんが空間を繋げてくれていなかったら溺れていた可能性もあるってことだよな。命がけの訪問じゃねぇか。


「この家はペセルちゃんのお手製!空間をちょちょっといじって外面は真珠っぽくして、中身はゆめかわワンルームにしたんだ。バーチャル空間だから好きにいじれるんだよ。みんなが泊まれる分の部屋もすぐに作れるから、安心して泊って行ってね」


「はい……ありがとうごさいます」


 ペセルさんの厚意はありがたいと思うが、要はペセルさんと彼女のファンの心に響く歌が歌えるまで手助けをしてもらえないと言うことだ。


 今のところ誰かを感動させる歌など全く歌える自信も確信もない。宿代がかからないのはいいが、だからと言っていつまでもこの国に滞在するわけにも行かない。

 

 戦力の強化・補充はしておきたいところだが、最悪俺が条件を満たせなかった場合はライアーをこの国から退けて敵の今後の動向を把握するのも手かもしれない。


 神殿で仲間を募集できるらしいが、俺たちは個々に色々な事情を抱えすぎていると言うのが最大のネックとなっている。


 俺は異世界の住人(極秘)、シルマは低レアレベル500のチート(本人は隠したい)、竜の一族の騎士(竜族は貴重種なのでヒトのフリをしている)と、秘密だらけの集団なのである。


 加えて魔族のフクロウと元人間のぬいぐるみ、異世界のアニメキャラの姿を模した擬態モンスターまでいる。


 更に言えば協力者には一国のトップ、この世界で一番優秀な魔法学校の校長、竜の一族の長、電脳アイドルとえげつないラインナップでその全員がかつて神子と世界を救っていると言う過去を持っている。


 極めつけは身分を隠して喋るタブレットになっている世界を救った神子兼、世界の現長までいるんだぞ。濃すぎるだろ。外部から気軽にヒトを受け入れられる状況じゃないんだわ。仮に説明できたとしても理解してもらえないと思う。いや、理解できないと思う。


 それに神殿でヒトを募集すると言うことは「雇う」と言うことになる。そうなると給料も支払わなければならないし、コスト(人件費)がかかるのだ。


 余計な費用が掛かるぐらいなら、敵のターゲットでもある神子の仲間たちに協力を仰いだ方が状況も直ぐに理解できるし、費用もかからなければ信用もできる。


 まあ、ぶっちゃけシルマがいればワンパンじゃね?と思わなくもないが、レベルが高い=無双ではないからな。シルマが自分の力を他人に見せたくないと思っている限り、能力の最大開放はしないだろうし。


「聖、ライアーの動きはどうだ」


『うーんと、この国には到着したみたいだね。魔力反応が2つあるからフィニィさんも一緒にいるんじゃないかな』


 戦力補充は一旦お預けとなってしまったので、とりあえずネトワイエ教団の現在の状況を把握することにした。


「そいつら不信な動きは?」


『色々な場所を絶えず移動をしているみたいだ。動きが不規則で速いから、瞬間移動をしているのかも。目的地があるのか、僕たちが先回りをしているとわかっているから、あえて不規則に行動しているのかもしれない』


「それは不可思議ですね……。様子を見に行った方がいいのでしょうか」


 聖の言葉を聞いてシルマが口元に手を当て、不安な表情を浮かべながら言った。聖はそれに賛成する。


『そうだね、でも移動速度と出現場所がランダムだから、ある程度動きを予測して、何手かに別れた方が……』


 聖が言葉を言い終わる前、部屋の電気がブブッと音を立てて点滅した、そう思った瞬間、バチンと弾ける音がして部屋が真っ暗になる。


「な、なんだ。停電か」


「真っ暗ですね、何も見えません……」


「クロケルっ」


 近くで焦るシルマの声がして、突然暗闇になって動揺したのかシュバルツが俺の名前を呼びながらくっついて来た。


「大丈夫だ、シュバルツ。俺はここだぞ」


 安心させるために暗闇の中でシュバルツの頭を撫でるが、俺も少しだけ不安に襲われていた。暗闇が特別怖いわけではないが、急に視界を奪われてしまうと流石に焦る。しかも何にも見えない。感じるのは近くに居る仲間たちの気配だけだ。


『僕が明かりをつけるよ』


 聖の凛とした声がして、同時にあいつの声がした場所が光る。聖が自ら発行しているのだ。タブレットの体では部屋全体を照らすことは不可能だが、必要最低限の明かりは確保できた。みんなの顔が見える。


「これは……サイバーダウン!?」


 ペセルさんが驚愕した表情で言った。言葉が少し震えていたので動揺していることが窺える。


「え、停電じゃないんですか」


 俺も驚いて確認すればペセルさんは神妙な面持ちで首を横に振った。


「この国は優秀なAIが常に管理、監視をしていて生活に不都合が出ない仕組みになっているんだよ。停電もサイバーダウンもこの国ができてから1度も起こったことがないもん。誰かが意図的にダウンさせたんだ」


『誰かがって……ここのセキュリティはどこも万全のはずでしょ。この国もマザーコンピュータの場所は極秘だったはずだし、誰も近づけないはず……ありえないよ』


「それはペセルちゃんも思うよ。でもそのありえないことが起こっているから焦ってるの」


 早口で聖の言葉に答えるペセルさんを見て、これは火急の事態だと言うことを理解する。彼女のトレードマークであるアイドルスマイルは消え失せ、余裕のない表情を浮かべていた。


「あの、サイバーダウンが起きた場合、この国にどのような支障がでるんですか」


 この状況は俺が知るサイバーダウンにかなり近い。要はサーバコンピュータが何らなの理由で停止した、と言うことだよな。


「サイバーダウンはこの国の停止を意味するの。この国にありとあらゆる機能が停止。電機はもちろん通らなくなるし、ロボットやアンドロイドも止まる……携帯端末やタブレットも使えなくなる」


「ライフラインが全て止まるってことですか」


「うん、そう言うことになる」


 とんでもないことを聞かされ、焦って事実確認をする俺にペセルさんは硬い表情のまま頷く。


 俺の世界ではサイバーダウンが起こった際は専門の知識を持つ人間が復旧作業に取り掛かるが、聞いた話だとこの国を管理しているのはAIだ。つまり、管理者ごと機能が停止しているから早期の復旧は見込めない、と言うことを意味することに気がつく。


「何とかして原因を突き止めて復旧しないと……生身で暮らすヒトたちは蓄電があるだろうし、まだ余裕があるけど、電脳体になってここに来ているヒトたちが危ない」


 ペセルさんが顎に手を当ててそわそわと同じ場所を歩き回る。


「あ、危ないって言うのは?」


 嫌な予感しかしないが、状況を把握するべく俺が恐る恐る聞くとペセルさんはピタリと足を止め、不安を表情に浮かべて静かに言った。


「電気回線が遮断されているから全ての機械が機能しない。意識をこの国に残したまま体に戻れなくなっちゃう可能性があるの」


「えええっ」


「そ、それは大変です!」


 ペセルさんの言葉に焦りを覚える俺とシルマの横でミハイルが冷静に質問した。


「だが、電脳体の奴らはここでは意識だけの存在なんだろう。どこかにある本体が無事なら、とりあえずは問題ないんじゃないのか」


「暫くはね、でも長い間体と意識が離れるのは良くないよ。ざっくり言えば別空間に意識を飛ばす行為は一種の気絶に近いんだ。1日2日ならともかく、もしこの状況が長引く様なら最悪脳死状態になるかもしれない」


「脳死!?」


 恐ろしい言葉に目を見開く俺の隣でシュティレが無表情のままスッと手を上げて口を開いた。


「すまない、ペセル殿。先ほどの話では一般家庭には蓄電があるとのこと。ならば、サーバーの方にも補助電源機能があるのではないか。この状況をそれで凌ぐことはできないのだろうか」


 それは確かに思う。こう言うコンピュータに頼るシステムの場合、もしもの時に備えて蓄電や補助電源が備え付けられていることが多いはずだ。それを活用できないのだろうか。


 全員の視線がペセルさんに集まるが、返って来たのは力なく首を振っての残念な否定の言葉だった。


「ペセルちゃんもそう思ってさっきから頑張ってるんだけど、町にアクセスできないの。電子回路にシャッターが閉められている感覚」


『電子回路をジャミングされてるってことか』


「うん。掴めそうで掴めない、もどかしい感覚」


 聖の言葉にペセルが頷く。そして眉を下げ、悲しい表情を浮かべて続けた。


「それに、仮に蓄電や補助電源が使えたとしても、転移ポッドを使うだけでもかなりの電力を使うから、直ぐに電気の貯蓄が尽きると思う。いつまでこの状況が続くかわからないから、よく考えて使わないとこの国のヒト全員の命が危険に晒されちゃう」


 突然の深刻な状況に、焦りと不安が重い空気を作り上げ、全員の体に重くのしかかる。どうすれば良いか必死で思考を巡らせる中、最初に口を開いたのはシェロンさんだった。


「とりあえず、外へ出て様子を見てみよう。自分たちの目で何が起きているか確認するのじゃ」


 その言葉にその全員が無言で頷く。今できることはそれしかない、俺たちはそれぞれ武器を手に、一斉に立ち上がる。


 ミハイルも翼を広げて移動準備を始め、アンフィニもシュバルツの体によじ登り、肩の上に座る。これで、全員の準備が整った。


「空間を移動するのは問題ないみたい。多少歪められてはいるけど、これぐらいならペセルちゃんが逆ハッキングで綺麗にできるから、問題ないよ」


「よし、行くぞっ」


 こうして俺たちは、不安と疑問を抱えながらも謎のサイバーダウンの原因を究明するため急いで町へと向かったのだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!クロケルの試練が失敗したと思ったら謎のサイバーダウン発生。その原因を確かめるべく地上へ向かったクロケルたちが目にしたものとは。そして何故サイバーダウンは起こったのか」


クロケル「俺には何となく予想がつくぞ。と言うか、原因ってそれしかないだろ」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第65話『スーパーチートアイドルペセル、怒りの絶唱』ねぇ、メタ発言やめない?そこは知らないフリしようよ」


クロケル「パターンが読めてるんだ。しょうがないだろ」


聖「うわ、面白くなぁーい」


クロケル「危険が伴う状況で楽しめるヤツの方が特殊だよ!」




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