第58話 解放、最強ヒロインの実力
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
やっぱり技名って考えるの難しいですね。私が考えるといい感じに中二になるしどっちかって言うとダサいので恥かしいわ、悲しいわで目を覆いたくなります。
どうかダサさと中二感には目を瞑って頂き、お読み頂けると幸いです。
本日もどうそよろしくお願いいたします。
「シ、シルマ!?どうしてここに」
この空間は外界と断絶されているから助けは来られないんじゃなかったのか?それとも極限状態過ぎて幻覚でも見ているのか俺は。
嬉しさと不思議さと、動揺。色々な気持ちが俺の中で入り混じり、ただ目の前で俺を守って立ち塞がるシルマを凝視することしかできない。そんな俺に振り返り、シルマは穏やかに微笑んだ。
「アンフィニさんがフィニィさんらしき人物を追いかけた時、クロケル様がついて来ていないことに気がついて私だけ戻ったんです。そうしたら、微量の魔力反応を感じて……」
「おや、おかしいですね。ここへお招きしたのはクロケルさんだけのつもりでしたが。私の気配も他の方には悟られないようにしていたつもりですが、どうやってこちらへ」
ゆっくりと説明をするシルマの言葉に割り込む様にしてライアーが少し苛立たしげに言った。
一旦は攻撃する気が失せたのか。手に集まっていた禍々しい黒の球体は消えており、俺を始末するチャンスを奪ったシルマを鋭い眼光で見つめていた。
その殺気に一瞬ひるんだシルマだったが、勇気を振り絞る様にぎゅっと己の杖を握りしめて、負けじとライアーを睨み返して言った。
「町中を見渡してもクロケル様が見当たらず、嫌な予感がしたので千里眼で町を視てみたところ、クロケル様が時空に飲み込まれるのが見えたんです。私はその後を追って時空に飛び込み、ここへ来ました」
「ほほう。あなたも千里眼をお持ちで。あなたはレアリティが低いと判断して始末する順位を下の方にしたのですが、ヒトは見かけによらないと言うことでしょうか」
そりゃあレベル500だもの。今は聖のジャミングでステータスが見えていないかもしれないが、多分見たらあいつ卒倒するんじゃないかな。
「せ、千里眼と言っても精度は高くないですけどね。私は魔術師なので疑似千里眼を持っているんです。低レアの私でも集中すれば千里眼を使いこなせるんですから」
シルマの言っていることは大体本当だが、千里眼は相当なレアスキルである。別に低レアが持っていても不自然ではないが、それは低レアの中でも相当特殊な存在と示しているだろう。
そしてそういうことも含め、自分が低レア高レベルであることがライアーにバレてはまずいと思ったのか、早口になりながら必死に訂正していた。うん、そう言う態度が一番不自然で怪しく見えるぞ、シルマ。
「はあ、まさかこんなイレギュラーなことが起こるなんて……ステータスにジャミングがかかっていると言うのはもどかしいものですね。思った様に作戦を遂行できない」
ライアーはシルマの誤魔化しスルーし、やれやれとため息をついた。そして、スッと目を細めてこちらを見据える。
「しかし、こちらへ来られたのはあなただけの様ですね。ならば、ここでお2人とも始末いたしましょう」
なんでそうなる!2対1だぞ。どう考えても戦力的に不利だろ諦めて帰れよ。いや、俺は戦力に入らないけど。でも!お前はそれを知らないはずだろ、丁度いいからまとめて片付けようとするな!俺たちを解放してはよ帰れ。
心の中で激しくツッコむ俺に対してシルマは少しずつ後退しながら小声で言った。
「あのヒト、戦う気満々の様です。ここは応戦するしか道はないと思います」
あまりに冷静な態度で最悪の提案をされてしまい俺は戸惑いと不安が隠せなかった。それをライアーに悟られない様に小声で返す。
「お、応戦って、どうするんだ。お前も知ってるだろう。俺は戦力外だし、仮に剣を振るえたとしてもあいつの攻撃が当たれば一発アウトだぞ。かと言ってお前が戦うとお前の実力が色々バレるんじゃないのか」
俺の言葉を聞いてシルマは眉間に皺を寄せて考え込む。やはり、自分の実力が相手にバレるのは躊躇われるらしい。なんでそこまでして隠したいんだ。いいじゃないか、レベル500。相手に対しての威嚇にもなると思うけどなぁ、と言うのが低レベルな俺の無責任な発想である。
レベルが高ければヒトに頼られたり、今の俺みたいに(俺の場合は相手が見かけに騙されているだけだが)敵から必要以上に狙われたりする場合もあるから、平穏無事に暮らしたいと思うシルマの気持ちも分からなくはない。と言うか俺もそっち派だし。
「こうしましょう、私がクロケル様のサポートをするフリをしながらあのヒトに攻撃します。なのでクロケル様も戦うフリをして下さい」
シルマが渋い顔のまま、苦し紛れの提案をしてきた。俺の不安が一気に加速する。不信感MAXで俺はシルマに聞き返した。
「それ、無理がないか。そもそも戦うフリって何をどうすればいいんだよ」
シルマの発言の意図が全く汲み取れず、半ばパニック状態の俺にシルマは言いにくそうに自分の考えを述べた。
「えっと、体術でも剣術でも構いません。とにかくあのヒトに攻撃して下さい。それに合わせて私が魔術を使います」
遠慮がちに紡がれたその言葉にサァッと血の気が引いた。血が冷えるってこういう感覚何だな。この世界に来て何回か体験してるけど気持ち悪いわぁ~。
「ちょおっと待て!簡単に言うけど、適当に攻撃して相手に反撃されたらどうするんだ」
大声で叫びそうになったのをグッと抑えて俺はシルマに小声だが声を荒げて詰め寄った。そんな俺に怯みながらもシルマは懸命に返して来た。
「クロケル様が攻撃している間もキチンと防御魔法もかけますので安心して下さい」
「で、でもっ」
そんなリスクが伴うようなことに簡単に頷けるわけがない。ライアーの実力は未知数だ。シルマの防御魔法がどこまで通じるかはわからない。
もしものことがあったらとシルマの提案に中々首を縦に振れずにいるとライアーさんのわざとらしい高らかな声が響き渡る。
「コソコソと作戦会議ですか?そちらが来ないならこちらから行きますよ」
そう言うと前触れもなく黒のエネルギー弾を複数出現させ、こちらへと飛ばして来た。目視で数十個はあるそれがもの凄いスピードでこちらに迫って来る。
「盾の女神の加護」
シルマの防御魔法が全ての攻撃を防ぐ。金の防御壁は傷1つ付いていない。視線の先でライアーが悔しそうに顔を歪める姿が見えた。
呆然と立ち尽くしているとシルマが俺の方を向き直り、迷いのない真っすぐな瞳で俺を見据えて力強く言った。
「大丈夫です。出会った時にお約束しましたよね。あなたが私の身代わりになってくれる間は私があなたをお守りしますと」
や、やだぁ……シルマってばイケメン。普段は大人しくて穏やかなのにいざと言う時はかっこいいとかヤバくない?そしてどこまでも情けない俺っ。
「私を信じて下さい。クロケル様」
「シルマ……」
そんな迷いのない視線を向けられると困ってしまう。し、仕方ない。この状況を打開するにはそれしかないと言うのなら、それに乗るしかない。役立たずで無能な俺にできることはただ1つ。シルマを信じることだ。
腹をくくれ俺。ここでシルマを信じないと足を引っ張ることになるぞ。根性だ、頑張れ俺、やればできる!やるしかない!
「よし、シルマ。その作戦で行くぞ」
決心を固め力強くシルマの目を見てしっかりと宣言すれば彼女は目を丸くした後、嬉しそうに頷いた。
「はい。クロケル様」
俺は随分使っていない剣を抜き放ち、構える。初期装備で安物もいいところだが一応、手入れは毎日しているし多分使えるはず。
そしてたった1日とは言え、ケイオスさんの鬼鍛錬のおかげで以前よりも剣が軽く感じる。
「ライアー俺が相手だ、覚悟しろ」
口先だけでは格好良く、勇ましく。強い騎士を気取り俺は地面を力強く蹴り、自分の中の最速でライアーに向かって駆け出す。距離を詰め、剣の柄を強く握りしめる。
武器を使って戦うことには慣れていないし、型とかは正直よくわからないがとりあえずライアーに向かって剣を振った。
ド素人が適当に振るった剣をライアーは軽やかに避ける。やっぱり躱された、そう思った瞬間、俺の剣が火を噴いた。
「「!?」」
俺とライアーは同時に驚く。至近距離で放たれた火から熱気が伝わり、顔をしかめてしまうほどもの凄い熱さを全身に受けた。轟轟と音を立てて放たれたそれはかなりの火力で、まさに爆炎。下手をしたら俺まで火傷しそうだ。
残念ながらそれも間一髪で躱されてしまい、火がライアーを襲うことはなかったが、ほんの少しだけライアーに焦りが窺えた。流石に俺の剣から火が出るとは予想していなかった様だ。
当然である。俺も予想していなかったのだから。予想はしていなかったがどうしてこうなったかはわかる。ちらりとシルマを見るとシルマがこくこくと小さく首を縦に振っていた。
なるほど、俺の動きに合わせてシルマが攻撃するってこういうことか。タイミングばっちりだな。
「剣を振るった後に祝詞や呪文をなしに即魔術を繰り出せるとは流石、魔法騎士ですね」
ライアーは若干顔を引きつらせながら微笑み、俺を称賛した。さっきの攻撃は自分の実力でないだけに全く嬉しくない。
俺が強いと思い込んでいるからなのか、シルマの術の発動が自然だったからなのか、ライアーは俺たちの疑似攻撃作戦?影武者作戦?どう言う表現をすれば分からないが、このイレギュラーな攻撃のカラクリを見抜けていないらしい。
でも、こいつは馬鹿ではないと思うし、戦いが長引けば気づかれてしまう可能性もある。通常、戦いで焦りは禁物だが、この場合は早期に決着をつけなければならない。
緊張から早くなる鼓動を押さえつつ、俺は再びシルマに視線を移した。シルマも同じ事を考えている様で今度は慎重に頷き返した。
「早く仲間と合流したいんだ。悪いがこの戦い、一瞬で終わらせてもらうぞ」
焦っていることを悟られない様に、それっぽく恰好つけて剣の切っ先をライアーに向ける。刃物の先を他人に向けてはいけませんと教えてくれた両親、ごめんなさい。でも今はそれどころじゃないんです。許して。
「ふふ。やっと本気を出す気になって頂けましたか。大変光栄です」
俺の言葉を受けたライアーが満面の笑みでナイフを構える。笑顔なのに怖い。オーラが怖い。殺っちまうぞオラァッて言うオーラで押しつぶされそうだ。ああっ、足が震えて来た。
でもよかった。ちゃんと騙された。挑発と取られた様な気がしなくもないが、この際それもやむなしである。
「や、やあっ」
腕に力を籠め渾身の力で再びライアーに剣を振り下ろす。同時にシルマの魔術により風が衝撃波となり、ライアーを襲うもこれも軽々とかわされる。
シルマの魔術補助があってもメインで戦う俺の動きがヘッポコだと当たるもんも当たらんのかもしれない。だがだからと言って攻撃をやめるわけにも行かないので俺はもう一度、ライアーめがけて大きく剣を振り翳そうと大きく構えた。
「はっ、ダメです。クロケル様、その構え方ではっ」
シルマの焦った叫びが聞こえ、それに気を取られた瞬間、至近距離でゾッとするほど冷たい声がした。
「そんなに大きな構えでは、脇腹がガラ空きですよ」
「げっ」
いつの間にかライアーが小型ナイフを手に、俺との距離を詰めていた。その距離はわずか数ミリ。先ほどまで数メートル先にいたはずの敵が一瞬で距離を詰めて来たことに激しく動揺した俺はその場で固まってしまった。
ヤバい、そう思ったが最早自分ではどうすることも出来ない。完全に懐に入り込まれてしまい、それを防ぐことは叶わないと悟る。
ダメだ。これは本当に終わった。異世界でレベル1のまま刺殺されるとか地味すぎる。命の危険を目の前に、世界が完全にスローモーション、この後にきっと脇腹に鋭い痛みが走って……走っ……らないな。なんでだ。
ふと自分の腹を見るとそこは金色の膜に覆われていて、ライアーのナイフをがっちりと止めてた。よほど硬い膜なのライアーがナイフを押そうが引こうがビクともしなかった。
「盾の女神の加護は部分的な防御もできるんですよ。クロケル様を傷付けることは許しません」
シルマが力強く言った。俺はシルマに心の中で盛大に感謝した。この戦いが終わったらきちんと声に出して御礼を言おう。あっ、今変なフラグ立ててないよな俺。今のなし、いや、御礼は言うけど「この戦いが終わったら」の部分キャンセルで。
「ふむ。彼女、中々の実力ですね。完全なサポート型と言ったところでしょうか」
ライアーがぼそりと呟き、遠くで戦況を窺うシルマを冷たく無機質に見やった。あっ、また寒気がした。
うん、いや。シリアスにキメているところ大変恐縮だが、彼女、サポート型ではないです。完全完璧高火力アタッカーですよ。上手く隠してるけど。
「強い方から倒そうと思いましたが、あなたの力を最大限に発揮させることができるあの方から片付けた方が良さそうですね」
「えっ」
な、何を言っているんだ。俺の思考回路が止まったその時、目の前にいたはずのライアーの姿が一瞬で消える。
驚いて辺りを見回すと、ライアーは俺に目もくれず、姿勢を低くしながら超スピードで一目散にシルマに向かって走って行く姿が確認できた。あいつ、シルマから片付けるつもりか。
「あ、危ない、シルマっ!逃げろ」
助けたくとも俺のスピードでは間に合わない。焦った俺はシルマに向かって必死に叫ぶ。
シルマはターゲットが自分になったことに気がつき、一瞬だけビクリと肩を震わせたが直ぐにキッと顔を引き締めて杖を構えた。
「響け、風の歌。風精霊の交響曲」
シルマの高らかな詠唱の後、シルマの杖の先、星の部分が淡い緑色に輝いて風が渦を巻いて竜巻となり、迫って来るライアーを襲う。
「おや、精霊の力を借りた魔術ですか。上位魔術ですか……」
ライアーはシルマの魔術を目の前にして目を見開いて少しだけ驚いた表情を見せたが直ぐに余裕の表情が戻り、走りながら黒い波動弾を迫り来る竜巻ぶつける。
「当たらなければ問題ありません」
何だ、その往年にロボアニメに出て来る仮面のライバルが言っていたみたいなセリフは!
などどしょうもないツッコミをしている間に波動弾は全て竜巻に命中し、竜巻が勢いを失ってその場で飛散する。シルマが悔しそうに表情を歪め、前を向いたまま数歩後退する。
ライアーは足を止めることなく、今度は小型ナイフをシルマに向かって投げつけたがシルマは魔法の杖でそれを全て叩き落す。
嘘だろ。防御壁なしでも攻撃を防げるのかよ。シルマって身体能力も高いのか。流石だなレベル500。と言うかめっちゃ勇ましい、かっこいい。
「さすが、異世界の騎士と旅を共にするだけありますね。魔術以外にも長けているようで驚きました」
シルマの杖捌きに関心しながらもさらっと俺のことをネタバレしやがった。俺がひた隠しにしてきたことをさらっとバラすとは……許すまじ、ライアー。
「異世界の、騎士?」
ライアーの言葉にシルマが一瞬だけ惑わされる。そう、シルマは俺の魂が異世界のものであると言うことは知らないのだ。言葉を疑問を持ち。不審に思っても仕方がない。
仕方がないがその瞬間、シルマに俺でもわかる明らかな隙が見えた。ライアーがそれを見逃すことはなく、にやりと口角が上がる。
「チェックメイトですね」
「あっ」
シルマの杖がライアーの小型ナイフで弾かれ、遠くに転がる。そして、ひと際大きな黒の波動弾が秒速でシルマに向かって繰り出される。完全に隙をつかれたシルマはその場で立ち尽くしてしまっていた。
「シルマっ」
手を伸ばした時、俺の脳裏に青色の脈が浮かぶ。同時に体の血管がぶわっと広がって熱くなる様な感覚に襲われる。この感覚はあの時の、ケイオスさんとの鍛錬でも感じたものと同じだ。
そう、俺が魔術を始めて発動させたときのあの感覚だ。そう思ったと同時に透明な箱がライアーを囲む。
「……っ!これは結界!?」
俺の唯一の魔術、防御結界の二度目の登場である。嘘だろ、この土壇場でまた発動したのか。ケイオスさんの言う様に俺は追い詰められないと力が使えないのか。我ながら何て面倒くさい体質!
今度はライアーがその場で立ち尽くす。魔術を使って箱、俺の結界を壊そうとしたが、ふと何かに気がついた様で直ぐに力を使うのをやめた。
「この結界、魔術反射をする術がかけられていますね」
ハッと我に返った俺は足早に結界に閉じ込められているライアーに近づき、できるだけ毅然として言った。
「ああ、そうだ。この中で魔術を使えば暴発するし、俺を倒さない限り壊すことは叶わない。だが、こちらから攻撃は可能だ。よって、お前はここで袋叩きになる運命しか残されていない。どうする?」
後半は嘘である。結界の中にこちらの攻撃が通るかどうかなど知らない。だが、少しでも優位に立ちたいので願望も込めてハッタリをかましてみた。
ライアー穏やかな表情ながらもハイライトのない目で俺を睨み、肩を落としてはあ、と大きくため息をついた後にひどく残念そうに言った。
「わかりました。降参です」
「えっ」
両手を上げてあっさりお手上げのポーズを取る姿に驚いて声を上げるとライアーは左手を腰に当てて不遜な態度で言った。
「正直、あなたたちを見くびっていました。お供の魔術師さんは想像以上の実力者で、異世界の騎士さんは結界術まで習得しておられる。私の予想以上の人物です。少しでも馬鹿にしてしまったこと、誠にお詫び申し上げます」
「え、えええ……」
丁寧な所作で深々と頭を下げるライアーに戸惑いの感情しか持てず、どう返せばいいか困惑しているとライアーはニコリと笑った。
「あなた方を始末するのは、暫くお預けにさせていただきます」
微笑んだライアーがパチンッと指を鳴らすと空間が歪み、俺の結界も熱を帯びた飴の様にドロリと溶け出す。
「うわわっ」
「クロケル様っ」
足元がおぼつかず、バランスを崩した俺にシルマが駆け寄っ来る。俺たちは互いに支え合う形でその場で踏ん張った。
「今度はしっかりと対策をした上で勝負させて頂きます。さようなら。異世界の魔法騎士さん」
「あっ、待て!!」
あいつはネトワイエ教団のキーパーソンだ。何も情報を得れないままにがしてなるものかと、俺は慌てて手を伸ばしたがもちろんその手は届くことなく、ライアーは微笑みながら闇の中に姿を消した。
同時に真っ暗だった世界に光が差し、景色が明るさを取り戻し、ヒトがにぎわう市場へとその姿を戻す。そこで初めて元の空間に返って来たと言う実感が湧いて来た。
「お、終わったのか」
「はい、とりあえずは安心して良いかと思います」
シルマが周囲を警戒しながらもしっかりと頷き、俺はその場にへたりこんだ。いや、腰を抜かしたと言っても構わない。
「はあああ~。助かったぁぁぁぁぁ」
道行くヒトが道の真ん中で大声を上げて座る俺に注目する。ああ、よかったちゃんとみんな俺が見えているんだな。
よかった、本当にあいつから解放されたんだ。清々しいまでの安心感が胸に広がり、俺は精一杯外の空気を吸った。
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聖「次回予告!シルマちゃんのおかげで命を繋ぎとめたクロケル。僕たちとも合流でき、改めて向かった神殿で元ネトワイエ教団の幹部だと言う人物と出会う」
クロケル「マジで詰んだかと思ったけど、助かってよかった。本当にありがとうシルマ」
聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第59話『ネトワイエ教団の全貌』ついに物語に進展ありか!?」
クロケル「ピンチの後にまさかの急展開だな」
聖「少しでも有益な情報を得られてら良いね」