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第51話 地獄のブートキャンプ!プログラムその2 鍛えよフィジカル、拳こそ正義!!

本日もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


すっかり1日置きの投稿が定着してしまいましたが、投稿を続けられるぐらい仕事が落ち着いて良かったです。


仕事のせいで今月はソシャゲのイベントを落としそうになって焦りました。まあ、ゲームを6個掛け持ちしてる自分も悪いんですが(汗)


魔法学校編はまだ続く予定です。なんかこう、魔法学校らしいお話に持って行きたいんですけど中々難しい……。なんとか脳内のビジョンを形にできる様に頑張ります。


本日もどうそよろしくお願いいたします。

「おお、土壇場で魔術結界を張るなんてすげぇじゃないか。やっぱり能力を開花させるにはスパルタが一番だな」


 無自覚に自分が魔術を発動させたことに呆然としていると、ケイオスさんが豪快に笑って俺を褒めた。その表情にさっきまでの乱暴さや殺気は感じられない。どうやら本気で褒めてくれている様だ。


「あ、ありがとうございます」


 褒められたので御礼を言ってみたがこの返しで合っているのか?

 それに自分のやり方が正しかったぜ!みたいな表情をされてますけど、スパルタは良くないよ。精神的にも肉体的にも死にそうだったよ。


 もうスパルタは勘弁して欲しい。切実に!逃げ疲れとツッコミ疲れが凄いので。

 心臓をバクバクさせながら息を整えているとケイオスさんが指でコンコンと結界を叩いて言った。


「で、そろそろコレ解除してくれないか。外に出たいんだが」


「えっ」


 その言葉に落ち着きを取り戻していた俺の心臓がヒュッとなった。体も硬直したのがわかる。

 

 明らかに動揺した俺を見てケイオスさんがキョトンとしていたが俺は心の底から思った。いやいや!ダメだろ、解除したらまた襲ってきますよね!!?


 真っ青な顔で首を左右に勢いよく振る俺を見て心情を察したのか、小さく舌打ちをした後に言った。


「安心しろ。()()()()()()一旦終了だ。結界を解除してもお前に襲いかかるなんてしねぇよ。それは約束してやる」


「ご、自分で脱出できるのでは」


 別にケイオスさんを疑っているわけではないがここは念のため警戒しておこう。それにこの人はさっき結構な力技でシュバルツの術を突破していた。その証拠にさきほどケイオスさんが叩き割った地面が俺の視界でちらついて、あの時の恐ろしさを思い出させる。


「それが出来たら最初からそうしてるさ。でもな、この結界に触って魔術の流れを確認して解った。この結界内で攻撃をすればそれが暴発する術式が組まれている」


「ほ、暴発!?」


 俺の魔術でそんな恐ろしいことに!?ただの相手を閉じ込めるための箱じゃなかったのか。


「ああ、見てろよ」


「え、見てろって……」


 ケイオスさんは瞬く間に自分の周囲に結界を施した後、すっと息を吸って拳を構えた。え、何が始まるの。怖いんですけど。


「唸れ俺の拳!燃やせ、打ち砕け!業火の衝撃波インフェルノ・インパクト


「ええええええっ!?」


 ケイオスさんの拳から爆炎が上がる。熱くないのかアレ。腕まで燃えてるけど!!でも漫画の必殺技みたいでかっこいい!!


 あの拳の炎はどれほどの熱さなんのだろうか。ゴウゴウメラメラと言う音は聞こえるし、最初はオレンジだった炎の色があっという間に紫に色を変えていた。


 俺、聞いた事があるそ。紫の炎ってかなり高温なんじゃなかったか。そんなん拳から出して大丈夫なのか!?多分、ケイオスさんの魔術なんだろうけど危なすぎませんか。当たったら相手解けませんかソレ。


 突然の光景にテンパる俺を他所にケイオスさんは俺が張った結界の壁めがけて思いっきり炎の拳を打ち付けた。


 ガィィィンと壁と拳がぶつかり、鉄板を殴った様な音が響く。結界は攻撃を受けると強度が増す仕様なのか、先ほどケイオスさんが軽く叩いた時よりも重く鈍い音を立てていた。


 ケイオスさんの拳をまともに捉えた俺の結界はわずかに振動していたが、拳の炎が風でも受けたかの様にブワッと音を立てて逆流した。


「け、ケイオスさん!!」


 逆流した炎はそのままケイオスさんを飲み込み、結界内は紫炎(しえん)の海と化した。まさか、これが暴発……。結界の中は大火事だ。


 とんでもない光景と突拍子のないケイオスさんの行動にただ呆然とする事しかできなかったが、直ぐにとても重要なことに気がついた。


 ケイオスさんが、まだ結界の中にいる。やばい、どうしよう!何とかしないと。俺の魔術でヒトの命が奪われる。そう思うと心に焦りが生まれる。


 まずは結界の解除か!?でもどうやって解除するんだ。他にできること……水、とりあえず水が必要か。でも、今の俺にそんな都合のいい魔術は使えない。なら、シルマに頼んで……。


 俺が助けを乞おうとシルマに視線を送ったその時だ穏やかな声が辺りに響いた。


「風よ、水よ、燃え盛る炎を鎮めろ」


「えっ」


 燃え盛る炎の方に視線を戻すと、結界の中で風と水が交互に渦を巻き、最終的にはスプリンクラーの如く結界の中で雨を降らせた。


 あれだけ燃えていた炎はすっかりと消え去り、水浸しの結界の中から平然と佇むケイオスさん現れた。


「ふう、自分に防御魔法と結界を重ね張りしていたけが、ちょっと熱かったかな」


 呑気にそんな事を言ったケイオスさんに俺は結界越しに詰め寄った。


「いやいやいや!ちょっと熱かったではなく!危ないじゃないですか。何してるんです。自分で暴発するとか言ってましたよね!」


「いや、実際に目で見てもらった方が分かりやすいかと思ってな。一応、防御魔法と結界で自分の身は守っていたぞ。実際に平気だったろ。あと、お前の術の効果も分かったし、なにも損はしてないじゃねぇか」


 なにケロッとしてんだよこのヒト。目の前で知り合いが炎に飲み込まれる恐怖をなんと心得るか。自分の実力に自信があるかは知らんがやって良いことと悪いことがある。


 それにこう言うのは損得の問題ではない。なんだったら損はある。俺の寿命が縮んだわ。


「今の感じだと物理攻撃と魔術攻撃どちらにも有効みたいだな。カウンター系の術ってところだ。この中で下手に抵抗すると、閉じ込められている奴が痛い目に遭うって言う寸法だ」


 えげつない、なんと言うえげつない魔術……。実演されたせいで余計に恐怖が増したわ。俺ってば土壇場でなんつー魔術発動させてんだよ。


「しっかし……よくもまあ、無意識でこんな複雑な術を編み出したな」


「はあ、自分でもびっくりです。でも、あの……俺、術を発動させたは良いんですけど、解除の仕方が分からなくて」


 そう、そうなのだ。さっき気がついたが実のところ解除の仕方が全く分からない。そもそもどうやってこの技を発動させたかも理解していない状態で解除なんてできると思うか?無理だろう、普通。


 身を小さくして申し訳なさそうにする俺を見てケイオスさんが腕組みをして盛大なため息をつく。もう、それを聞くだけで不機嫌MAXだと言うことが伝わって俺は更に身を縮めた。


「はあ~、しょうがねぇな。まあ、本来なら術者の命を奪うのが一番手っ取り早いんだが」


 不穏な発言が聞こえて背筋が寒くなる。ケイオスさんがチラリと俺の方を見たので更に背中が冷たくなる。


 結界に隔てられているので速攻で命を取られるわけがないのだが、怖いもんは怖い。ケイオスさんならこの状況でもさらっとそれをやってのけそうなイメージがある。


 そう思うと変な緊張が体を駆け巡り、俺は生唾を飲み込んで後退した。それを見てケイオスさんが馬鹿にする様に鼻で笑った。


「おいおい。冗談に決まってるだろ。ビビんなよ」


「び、ビビッてませんっ」


「ビビってんじゃねぇか」


 すっごい。なんかヤンキーに絡まれてるみたいだ。いや、今まで絡まれたことないからよくわからんけど、アニメとかドラマでこんなやり取りみたことある。それと腕組みをしたまま圧をかけないで下さい。威圧感が半端ないです。


「今から解除の仕方を教えてやるから。俺の言う通りにしろよ」


「は、はいっ」


 そう言われて俺の背筋がピンと伸びる。手招きをされたので俺は結界に閉じ込められるケイオスさんの目の前まで近づいて数センチのところで足を止めた。


「魔力に慣れていないお前は落ち着くことが重要だ。まずは深呼吸、心を落ち着かせて自分の魔術の流れを読め」


「はい、わかりました」


 俺は言われた通りに深呼吸をして、なるべく心を落ち着かせるように努めた。自分の魔術の流れを読めと言う抽象的な表現はよくわからなかったが、とりあえず目を閉じて集中力を高める。


 流れ……魔術の流れ……。そうやって必死に念じているとまた青色の脈の様な映像が脳裏に浮かんだ。思わず肩をピクリと動かせば変化に気がついたケイオスさんが声をかけて来た。


「読めたか?」


「えっと、青色の脈みたいなのが見えます」


 俺は目を閉じたまま答え、それを受けたケイオスさんが言葉を続ける。


「じゃあ、その脈に向かって、消えろと念じろ。なるべく強くな」


「はい」


 確かに見えている青い脈。俺はケイオスさんの指示通り、それに向かって強く消えろと何度も念じた。何度目かの念じでその脈がフッと消えたのを感じた。


「き、消えた」


 そう思って目を開ければそこには結界から解放されたケイオスさんの姿があった。よくやったと言わんばかりに微笑んでいる。


「術の発動、術の解除、ともに成功だな。今の感覚を忘れるなよ」


「あ、あの。さっきの青色の脈って何なんですか」


 何が起こっているのかよくわからないのでケイオスさんに聞いてみる。


「何って、お前の魔術回路だろ。普通は意識する必要はないんだが、お前の場合は慣れるまでその脈をイメージ、意識しながら使うしかないな。1回見えたんだから次もいけるだろ」


 さらっとそんなことを言われても、俺には魔術を使った実感も解除できた実感もない。次もいけると言われても素直に喜べないし、さっきの結界を張る自信もない。


 ちょっと怖いけど、体が覚えている内にもう少し鍛錬を続けてもらうべきか。でもさっき鍛錬は一旦終了って言っていた気がするし……。


 鍛錬を延長してもらうべきか頭を悩ませているとケイオスさんが意気揚々と言った。


「よし、じゃあ、鍛錬プログラム第2弾と行こうか」


「なんですと!?」


「鍛錬プログラム第2……」


「それは聞こえてました!どういう意味かって話ですよ。鍛錬は一旦終了って言ってませんでした!?」


 動揺を見せる俺にキョトンとするケイオスさんに俺は全力で抗議した。プログラム第2弾ってなんだよ。聞いてない、全然聞いてないぞ。


 確かに思ったよ。もうちょっと鍛錬した方が良いかなって。でも、冷静に考えて思った。一瞬だけそう思ったのは魔術が使えてテンションが上がっていたからちょっとやる気が出ちゃっただけだと。


 でも改めて己の本心と向き合ってみれば、ケイオスさんから逃げ回ったせいで俺もう既に体力と精神力に限界が来ている。


 鍛錬の続行はもう無理です。頼むからもう勘弁して!


()()()()()()一旦終了。今から始めるのは体術の鍛錬」


「は、体術?」


 要は格闘訓練ってことだよな。なんで急にそんな話になっているんだ。魔力の使い方をわかっていない俺の魔術訓練がメインだったんじゃないのか。


「いやな。俺もお前は魔法騎士なわけだし、魔術力を鍛えるべきだって思ってたんだが、お前を甚振、ンンッ鍛錬している最中にふと思いついてな。戦に慣れていないお前はまず闘争心から身に着けるべきだと」


「闘争心、ですか」


 さらっと甚振ると発言しようとしたことには目を瞑るとして……。


 確かに俺に闘争心なんてものはない。レベルを上げたいのも前の世界とは違い、モンスターと言うトンデモ生命体が存在している分、自分が弱ければ弱いほど命の危険があるから必要最低限のレベルになりたいだけだし。


 シルマ並みに強くなって世界を救おうとか、クエストをバリバリこなして多額の収入を得ようとか、そう言う未来への向上心も全くない。ただ無難に平和に暮らしていければそれでいいと思っている。


 まあ、その淡い望みもシルマと出会った時点で綻び始めて、俺の平和が現在進行形で崩壊しているけど。謎の教団と関わって戦う流れになった時点で無難とは程遠い人生になりつつある気配しかない。と言うか人生ハードモードで確定だ。


「お前は闘争心がまるでない。特にお前は魔術者としても騎士としても素人だ。そんな奴が“なんとなく魔術を使いたい”。みたいな心持ではいつまで経っても何も身につかない」


「う、まあそれはそうかもしれませんが」


 ド正論を突きつけられて俺は返す言葉もなく口ごもった。


「そこで、俺はお前を追いかけまわしながら新たなプログラムを考えた」


 勝手にプログラム組むな。変更がある時は事前告知をお願いします。後、なんか段々ノリノリになって来てないか。このヒト。


「ってことで、魔術を使う前に心と体を鍛えることにした。俺と手合わせをしよう。ああ、もちろんお互いに魔術や武器の使用はナシだ。身一つで戦ってもらう」


「えええええええええっ」


 待って待って!俺、これからケイオスさんと素手で手合わせするの?自分の馬鹿力ご存じですよね。ダメだよ。俺、死んじゃうよ。


「体を鍛えることは良いことだぞ。それにある程度の体術を習得していれば例え武器を取り上げられても対抗できるからな。力こそ正義!拳こそ世界を制する!そう思わないか?」


 いや、力説されても。ハッキリ言おう、思わない。拳と武器なら明らかに武器の方が有利だろ。殺傷能力が違うし、飛び道具にはどうやって対処する気だ。


 ああ。そう言えばこのヒト、さっき囲まれた時に素手で武器を持った相手を制圧してたな。飛んできた弓矢は掴んで折るし、振りかざされた剣も指で挟む様にして受けてへし折ってたな。弾丸も余裕で躱してた。


 うん、確かにフィジカルは鍛えておくと得……なわけあるか!いや、得かもしれないけど無理無理!誰もがケイオスさんみたいな化け物級の戦闘能力を手に入れられると思うなよ!


「ケイオスさん、もう少し現実を見ましょう。俺にあなた並の戦闘力が習得できるとお思いで?」


「んなのやって見ねぇとわかんねぇだろ。それに俺に並ぼうと思うから自信がなくなるんだ。自分に合ったレベルで習得すればいいじゃねぇか」


 くぅぅぅっ。ケイオスさん、理不尽な様で毎回正論をおっしゃる。何も言い返せない。悔しい。


「で。お前、武術の心得は?」


 ああ、話がどんどん進んで行く……俺に拒否権はないんですね。わかります。

 

「残念ながらなにも。運動はまあ、そこそこできますが」


 どんなに頑張ってもこの特訓からは解放されないことを悟り、俺は質問されるがまま答えることを決めた。どうとでもなれ精神だ。


「そうか。ま、確かにお前、見た目の割に筋肉がないもんな」


 そう言いながら俺の体を無許可でベタベタと触る。筋肉を確かめているんだろうが、せめて触っていいかの確認をするのがマナーでは?とは言えず俺はされるがままじっと立っていた。


「足の筋肉はあるな。でもそれ以外は並みだ。多分その辺の女性格闘家(ファイター)の方が上だぞ。と言うか比べ物にならん」


「あははは、そうですかぁ」


 足の筋肉があるのは普段から色んなモノから逃げ回っているからだろうなぁ。シルマと出会うまでの間も散々モンスターや盗賊に襲われて全力ダッシュしてたし。あんなのでも筋肉がつくんだな。意外だわー。


 情けない心当たりに乾いた笑いを浮かべているとケイオスさんが顎と腰に手を当てて考え込んだ。


「うーん、体術云々の前に筋肉をつけることから始めないとな。よし、まずは50キロの岩を背負ったままスクワット100回」


「えっ、ちょっ!ぐぇぇぇっ重っ!!!」


 ケイオスさんは俺に呆れた後すぐさまとんでもないことを言い出し、パチンと指を鳴らした。


 冗談みたいな特訓内容と数字が聞こえて来たので待って欲しいと言おうとしたが、残念ながらそれは叶わず、背中に俺の体を覆い隠すほど馬鹿でかい岩が無情にも圧し掛かる。


 突然現れたソレの重みを背中にダイレクトに味わった俺は情けない声を上げた後にその場に倒れ込んだ。


「あっ、ヤバい、これヤバい!重い、潰れるぅ~」


 倒れ込んだせいでさらに岩の重さを体に受けてしまい、意識が飛びかける。しかもこの岩、俺の体にしめ縄でがっちりと固定されているのである。


 どう足掻いても岩を退かすことは叶わず、助けて欲しいと地面を必死に叩いてアピールすればケイオスさんがにこやかに言った。


「たった数秒で音を上げるな。ああ、丁度いい。せっかく地面に伏したんだから、スクワットはやめてそのまま腕立てにしよう。もちろん、100回な」


「えっ」


 まさかの続行。無理だって、岩が重すぎて動けないし!息も苦しい。こ、こんな特訓100パー訴えられるぞ!こんなの時代遅れだからな、今は褒めて伸ばして優劣をつけない時代のはずだー!!


「ケイオスさん、目ぇ見えてますかっ!?俺、岩に潰されてるんですよ。鍛えるにしてももっと段階を踏んでですねぇっ」


 体に圧し掛かる重さに耐えながらも、生きるために必死で抗議をする。


「それだけ喋れりゃ問題ねぇよ。ほら、腕立て!ちゃんとやらないと岩は永遠にそのままだぞ」


 ケイオスさんは同情1つすることなく、地面と仲良しこよしな俺を冷たく見下ろしてそう言った。


「あ、あのぅ。因みにコレのノルマが達成できたら鍛錬は終わりですか」


 あまりに恐ろしい視線と言葉に俺は震えながら確認した。コレから逃れられないと言うのであればせめてそうであってくれ。


 この鬼モード腕立て伏せが終わったら鍛錬は終わりだと言う天国が待っている。そう思えば多分、なんとか頑張れそうな気がする可能性が無きにしも非ず。


 祈る様な心地の俺にケイオスさんは最大級に真っ黒な微笑みを浮かべた。ひぃっ!

こ、これが暗黒微笑(ダークネス・スマイル)というやつかっ。


「終わりなわけないだろ。腕立てが終わったら岩を背負ったまま今度こそスクワット、その後は懸垂をして、その後は岩を下ろして校庭ランニング30周の予定だ。まあ、頑張れ。最後まで付き合ってやるから」


 呑気な口調でスラスラと紡がれる聞くに堪えない地獄の鍛錬プログラムに俺は軽い眩暈と血の気が引く感覚に囚われた。


「じ、冗談ですよね」


 震えながら確認すると、ケイオスさんは暗黒の微笑みを一層真っ黒にしてハッキリキッパリ言った。

「冗談な訳、ないだろう?」


 ヒュッと俺の喉が鳴り、絶望が押し寄せる。


 鬼!このヒト鬼だーっ!!誰かっ、誰か助けてぇぇぇぇ!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告。ケイオスのフィジカルブートキャンプでヘロヘロで疲労困憊なクロケル。でも厳しさに耐えたおかげで根性がレベルアップ!したかもしれない。このまま最強騎士道を突っ走れ!」


クロケル「ヒトの人生を勝手に根性モノにすんな。と言うかこの鍛錬、意味があるのか?どんなに厳しい鍛錬をしても経験値は加点されないんだろ。この世界のシステムは」


聖「そうだねぇ。レベルアップするには素材を吸収するのが条件だからねぇ」


クロケル「ほら!俺が鍛錬した意味がないっ」


聖「次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第52話『3英雄の会議』意味がないことはないと思うけどなぁ。レベルアップって言葉に囚われ過ぎじゃない?」


クロケル「それでも俺はレベルを上げたいんだぁぁぁっーーーー!!」



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