表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/187

第38話 暗殺者を誘い出せ!危険な学校案内

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


今回の内容とタイトルが一致しているかどうかは微妙なところですが、どうかご容赦ください。毎度タイトルを考えるのって難しいですね……。センスが欲しい。


あと、設定が活かせていない気配がしてきて頭を抱えております。こんな内容ですが、少しでも多くの方にお楽しみいただければ幸いです。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

『人工魔術師を救うってそんな簡単に言うけど、そんなこと本気でできると思ってるわけ?』


「本気じゃないとこんな研究なんてできませんよ」


 刺々しい聖の言葉にケイオスさんがはりついた笑みで返す。怖い……今、確実に空気が凍ったぞ。


「こればっかりはそこのAIと同意見だな。ヒトが生み出した罪をヒトが償おうと知る心意気は買うが、実現できてないんじゃ偽善者の夢物語だな」


 止まり木上からミハイルが嫌味がたっぷりとこもった声で言った。聖もミハイルも当たりが強い。


 ヒトが気に食わないのは理解してやるが自ら喧嘩を売りに行くスタイルはやめろ。そして売るなら売るで相手を選んでくれ。


 喧嘩を売られたケイオスさんが化けの皮はがれる寸前だから。笑顔の奥から暗黒オーラが漏れ始めてて怖い。眉と口角がすっげぇピクピクしてる。


「んんっ。中々厳しいことをおっしゃる。そうですね、確かに人工魔術師を救う研究はまだまだ初歩段階です。実現には至っておりません。お二人の意見を真摯に受け止めて精進していきます」


 あ、耐えた。ケイオスさん耐えたよ。咳払いで怒りを飲み込んだ。流石、えげつないレベルの二面性の持ち主。精神力が違う。


「ケ、ケイオスさん。フィニィを捕えるためには具体的にはどうすれば良いと思いますか」


 無駄な険悪ムードはよろしくないと思った俺は無理やり話を進めることにした。敵の素性が分からない状態で内輪モメは勘弁して欲しい。切実に。


「そうですね……人工魔術師の共通弱点は体力がないことと力に持続性がないことだと思います」


「人工魔術師は長期戦には向いていない、と言うことですか」


 シルマが聞けばケイオスさんが首を縦に振った。


「はい。魔術師はどんなに魔力を消費しても随時自分で魔力を生成できますし、例え使いすぎても自然回復できますが、人工魔術師は元々魔力適正がないので力は消耗品なのです」


「消耗品ってことは使ったらもう新しい魔力は作られないってことですか」


「中には特殊なケースもあるとは思われますが、私たちの研究ではほぼ間違いなく事実です」


 丁寧なケイオスさんの説明を聞いて俺はフィニィと戦闘になった時のことを思い出す。そう言えばあの時はフィニィ自ら攻撃してくることはなかった。攻撃していたのは全てこちら側。


 過去に握手をした際にシャルム国王に術を施したことがあったぐらいで、それ以外は攻撃を躱しているだけだった。あれは使える魔力に制限があるから攻撃ができなかったと言うことか?


『あの戦いで攻撃を仕掛けて来たのはぬいぐるみだったもんね。あの時の攻撃はフィニィの魔力によるものじゃなくてぬいぐるみの力だったのかもしれない』


 聖の考察に俺も納得する。

 やっぱりフィニィとぬいぐるみは別個体でそれぞれ別々の魔力を持っていると言うことになるのか。


 つまり、相手をすべき相手は実質2人と言うこと。これは大変な展開になってきたぞ。この件は絶対すんなり解決しない自信がある。


「じゃあ、アレか?お前の作戦は相手に魔力を使うだけ使わせておいて、体力消耗・魔力切れになった時に捕まえる、とか言う安易なものと理解していいのか」


 ミハイルが刺々しく且つ嫌味たっぷりの口調で言えば一瞬だけビキッと青筋を立ててイラついたケイオスさんが、色々と堪え笑顔をキープしたまま返した。


「それも1つの方法だとは思います。ですが、無暗に魔力を使わせてしまうと周囲に危険が及びますし、何より術者に負担がかかります。フィニィと言う少女の保護が最終目的ならば、それは避けるべきだと私は思います」


「ああ、そう」


 若干声が震えていたが丁寧な返答にミハイルは自分の暴言を詫びることなく、寧ろ興味がなさげに短く相槌を打った。


 態度悪っ!このフクロウここに来てからずっと態度悪っ!そんなにラピュセルさんと離れたくなかったのか。なら我がまま言ってでもグラキエス王国に残ればよかったのに。


 俺たちに同行する様に言ったのはラピュセルさんだが、もっと強めに拒否すればラピュセルさんだって聞き入れてくれたと思うし。


 渋々とは言えついて来るって決めたのに周りにキレ散らかされてもこっちが困るわ。俺たちの迷惑も考えろ。


『大好きな人からのお願いには逆らえないんだよ。きっと』


「そんなもんか?」


 俺の心を読んだ聖が俺の耳元で小声で呟いたが、その分析を聞いてもミハイルの心情はよくわからなかった。


「外野、なんか言ったか」


 小声で返したがミハイルにはしっかり聞こえた様だ。流石フクロウ、中々の聴力である。でもそんな今にも襲いかかりそうなオーラを出して睨まないでくれ。怖いから。


「おや、そちらのフクロウさんには想い人がいるのですね。それは興味深い」


「お前に興味持たれても嬉しくねぇよ。人間」


 よくもまあ、全方向に睨みを聞かせながら毒を吐けるな。もっと心を穏やかに持て。その方が気持ちが楽だぞ、たぶん。


「おっと、話がズレてしまいました。戻しましょう」


 今はミハイルの相手にするべきではないと判断したのか、ケイオスさんがその存在を無視して話を戻した。


「とにかく、魔力切れと体力切れを狙うのは、相手の身体に及ぼすリスクと、こちらの犠牲を押さえたいと言うことを考慮しても得策ではないと思います」


「そうですね、相手側もこちら側も犠牲が出ないことが一番望ましいです」


 シルマがコクコクと頷いて力強く言った。シルマって変なところで前向きだよなぁ。その強さ(物理)と前向きさで自信を持って生きて行けばいいのに。


 死にたくないって気持ちはわからなくもないが、実力があるのに逃げ腰で、それでも救いたい命はあるってもう、よくわからない心情だし。シルマが優先したいことってどれなんだ。


 改めてシルマの人間性に疑問を持ち、頭を悩ませている俺を他所に話は進んで行く。


「それに、相手がアンプルを持っている可能性もありますので。魔力切れを期待しすぎるのも良くないと思います」


「アンプル?」


 1人別のことに意識を向けていたがその不穏な言葉に意識が引き戻された。アンプルって液体とか入れる容器のことだよな。小瓶みたいなやつ。


 なんだろう。オタクな自分が見て来た作品にて来るアンプルとか薬ってあんまりいい印象がない。


 そもそも「人工的に強化された存在」と「アンプル」と言う言葉の結びつきが既に不穏で仕方がない。


「適合性の高い者には追加で魔力を注入して補うことが可能らしいのです。フィニィと言う少女がいた施設は既に国が介入し、取り壊されていますが、こちらの資料によりますと何本か盗まれた形跡があったそうですので」


 ケイオスさんが分厚い資料をめくりながら冷静に言う。

 

「それはあの子がアンプルを持ち出したと言うことですか」


 シルマが眉を下げて悲しそうに聞けば、ケイオスさんはしっかりと頷いてそれを肯定した。


「あくまで推定ですので恐らくそうだ、としか言えません。もしアンプルを所持しているのであれば魔力の充填が可能ですので、魔力切れは弱点とは言えません。まあ、所持するアンプルの数にもよりますが」


「そのアンプルって、打ちすぎると身体的に悪影響を及ぼしますよね」


 展開が読めたので恐る恐る聞いてみれば、想像通りの言葉を返してきた。


「はい。もちろんです。そもそも魔力を強制充填すると言う行為自体がよくないですからね。死期が早まるのは間違いないです。


 やっぱりそうか。こう言う状況では強大な力に頼りすぎて身の破滅を迎えるキャラが多い。無理やり力を手に入れて望むものを手に入れたキャラなんて、俺の知る限り1人もいないぞ。


 大概はどこかでしっぺ返しを食らっている。ああ言うのを見ていると、自分の実力よりも超える力を不用意に手に入れ様としてはいけないんだと思う。


『確かに。僕がアナライズした時、彼女の魔力回路はひどく乱れていたから。何度かアンプルは使ったんだろうね。体に限界は来ているのかもしれない』


 ケイオスさんの言葉に続き、聖も深刻な口調で言いう。聖曰く、魔力回路とは血液みたいなもので回路を持つ者は、魔力が体の中を循環しているらしい。


 元々魔術師ではないフィニィは無理矢理魔力回路を開き、



 その場に何度目かの沈黙が流れる。静かすぎて「シーン」と錯覚の音が聞こえる。


 もうヤダ!この重い空気。人工魔術師のことを知れば戦いのヒントが得られるんじゃなかったんですか。現状ノーヒントだよ。ただ辛くなっただけだよ!


解決策どころかフィニィに対してすごく複雑な感情を持ったし、こんな感情で戦えるか不安になって来た。


 でもこちらに戸惑う気持ちがあっても、向こうは本気で襲いかかって来るだろうから割り切って気合いを入れないと、こっちが負ける可能性がある。


「ううう、課題が多すぎて胃が痛い」


 思わず腹を押さえて蹲っていると、気落ちしているシルマを始終気にしていたシュバルツがサアッと青ざめ、小走りで俺の隣に移動して来た。


「クロケル、痛いとこあるの?シルマに直してもらう?」


 シュバルツがオロオロとしてシルマの方に視線を向ければ気落ちしてぼんやりしていたシルマもハッとして俺の方を見た。


「はい!治療なら私にお任せくださいっ」


「うん、ありがとう。2人とも。でも大丈夫、精神的なものだからすぐに良くなる。多分」


 ガッツポーズで俺に詰め寄って来たシルマと、何故か俺にぎゅーっとくっついているシュバルツを宥めながら俺は2人にわからない様にこっそりとため息をついた。


「考えていても仕方がないですね。辛く難しい話はここで終わりにしましょう。せっかくですので魔法学校を案内させて頂きますよ」


 ケイオスさんが山積みの資料を手早く整理しながら穏やかに言った。俺はその言葉に耳を疑う。


「学校案内って、いつフィニィが襲ってくるかもわからないのにそんな悠長な……もう少し対策を考えた方がいいのでは……」


 未知なる敵を相手にするんだから、それなりに対策を用意しておいた方が突然の奇襲にも絶対対応できる。


 と言うかさっきも思ったが、人工魔術師への対策を考えるためにこの話を始めたんだよな。何も意見が出ないまま話を終わりにするのか!?


 内心で文句を言いつつ頭を抱えている俺の心を悟ってか、ケイオスさんはにこりと微笑んで言った。


「悠長にしていられないから、学園案内をするのですよ」


「えっ」


 予想外の言葉が帰って来て呆気に取られる。シルマもシュバルツもキョトンとしてケイオスさんを見つめていた。


 聖とミハイルは小さく唸ったかと思えば窓の方を見てそのまま同時に黙り込んでしまった。


 先ほどまでの重苦しい空気と異なる、モヤッとした様な、気持ちが悪いような、妙な空気がその場に流れる。


 ケイオスさんは微笑みをキープしたまま落ち着いた様子で続けた。


「学園内の霧に微妙な揺らぎを感知しました。外部から侵入があったようですね」


「そ、それってフィニィがこの学園に侵入したってことですか!?」


 何と言うことか。何も対策が練れないままフィニィが近くまで来てしまった。俺はまた胃が締め付けられる感覚を覚えた。


『うん。この魔力反応はフィニィだね。間違いない。彼女はこの学園のどこかにいる』


 聖が追跡機能を使って確認したことにより、ケイオスさんの言葉が裏付けられる。


「なるほど。であれば私が囮になりましょう。ターゲットである学園内をうろついていればその内襲撃してくると思いますし。学園案内はそのついでです」


「なんですと!?」


 驚愕のあまり俺の口から大げさな音量で驚きの声が漏れる。


 囮になるついでに学園案内ってどういう神経してんの。ついでって何。何がついで?それに襲撃されたら近くにいる俺たちも被害被るよね。こっちはノープランだよ!?


すっかり青ざめる俺にケイオスさんは意地悪く笑って言った。


「さあ。危険な学校案内を始めましょうか」


 オレ、マダ、レベル1、コウゲギサレルト、イノチ、ナイ。


『なんで片言なの』


 心の声を読んだ聖からツッコミが入ったが、それに答える余裕はない。


 ああっ!どうして俺は毎回こんなに命の危機にさらされるんだ。誰か、誰か助けてぇぇぇー!!


 俺の悲痛な叫びも空しく、みんなが歩き始めたケイオスさんに続く。こう言うのに興味がなさそうなミハイルでさえシルマの肩に止まって退室準備を始めた。


こうして、俺にとっては地獄の魔法学校ツアーが始まったのだった。





 ~ 一方、クロケルたちの知らぬところでは ~


「うん?なにコレ、クマのぬいぐるみ?」


 学校指定の黒いジャケットの下に赤いパーカーの茶色いショートヘアの活発そうな少女が中庭の茂みに座り込んでいた。


「カルミンちゃーん、早く行かないと授業に遅れちゃうよ」


 座ったまま動こうとしない赤パーカーの少女にクリーム色をした腰までのウェーブヘアの少女が困り果てた様子で声をかける。


「ねぇ、アリス。これ見て、クマのぬいぐるみが落ちてる。あんたのこう言うの好きそうじゃん」


「ヒトの話聞いてないよね。早く行かないと先生に怒られちゃうよ」


 ウェーブヘアの少女が赤パーカーの少女の後ろから覗き込む形で唇を尖らせ、そしてぬいぐるみを視界に入れた。


「わ、ホントだ。ツギハギ仕様で眼帯のクマさん……ゴスロリチックで可愛い」


 赤パーカーの少女を急かしていたはずのウェーブヘアの少女の意識はすっかりぬいぐるみへと向いていた。まさにミイラ取りがミイラになる状態である。


「誰かの落とし物かな」


「うん。職員室に届けるべきかのしれないね」


 2人の少女が目を合わせて頷く。一瞬だけぬいぐるみから視線が外れ、次に2人が視線を戻した時、そこにぬいぐるみの姿はなかった。


「あ、あれっ。ぬいぐるみは?」


 少女たちが首を傾げたその時、チャイムが鳴り響く。それは本鈴だったらしく、少女たちはぬいぐるみの存在を忘れて慌ててその場を走り去った。


 その後、中庭の隅にある木の上で葉に身を隠す様にして座る人物がいた。その胸にはツギハギ仕様で眼帯をしているクマのぬいぐるみを抱いていた。


「偵察ご苦労様。お兄様」


 ぬいぐるみを労わる様に抱きしめるのは件の少女、フィニィだった。ケイオスの言う通り、彼女は既に侵入していたのだ。


「ここの校長の命を狙って来たのに、余計なモノもいるなんて嫌だなぁ。大勢で遊ぶのは楽しいけど、疲れちゃうもん。私を追いかけて来るとか、ストーカーなのかな。怖いねぇ。超メーワク!」


 少女はぷくっと頬を膨らませ、人形を抱え直してそして一瞬前の不満げな様子が嘘の様に明るい笑顔で笑って見せた。


「まあ、いいか。そんなに遊んで欲しいなら、相手をしてあげないと失礼だもん。うふふ、何人倒せると思う?楽しいねぇ。お兄様っ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告。ついにフィニィが学園に侵入。囮となったケイオス。そしてちょっぴり楽しい学園案内が幕を開ける!」


クロケル「はああああ、こんなにオドオドして学園を歩くのは嫌だ。もっと楽しく魔法学校を堪能したい」


聖「次回!レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第39話『ぬいぐるみの秘め事』ほらぁ、どんよりしない!」


クロケル「こっちは人生かかってんだよ。綱渡り状態でしかも傾きかけてんだよ!」


聖「なら僕が支えてあげるよ」


クロケル「途中で手ぇ離されそうだからお断りだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ