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第35話 傍若無人、腹黒校長ケイオス

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


何とか文字数を抑え気味(5000文字を超えているのを押さえているかどうかは置いておいて)に投稿できてよかったです。


無駄な文章が多いと言うのは自分で読み返してもわかるのですが、かと言ってどこかを削れば物語全体が崩れると言う奇妙な展開に頭を抱えております。


至らぬところは多々ありますが、もっと頑張って少しでも多くの方に楽しんで頂ける物語を紡いで行ければと思います。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

『君さ、わざわざ僕とクロケルをディスるために呼び出したわけ?歪んだ性格は直ってないんだね。寧ろ斜めに真っすぐ成長したんじゃない』


 散々大爆笑した後に椅子深くもたれ掛かり、投げ出す様に足を組むと言う誰がどう見てもデカ過ぎる態度のケイオスさんに聖が嫌味フルスロットルで言ったが、けろりとした態度で返答があった。


「二面性があるのは個性だろ。変える必要がない」


 うーん、すっごい暴論。例え第三者から見て短所でも自分がそう思っていなければ直す必要がないと言いたいんだな。


 微妙。すごく微妙な考え方だ。良く評価すれば自分をしっかりと持っている。悪く評価すれば自己中心的な思考の持ち主。


 さすがちょっとアレと評価されるヒトだ。


「それに俺のオンオフは完璧なんだ。今までボロが出たことは一度もないから問題ない」


 ケイオスさんは胸に手を当てて何故かドヤ顔で言った。


『ぐぬぬ、相変わらず腹黒の自信家だな。クロケル!君からも何か言ってやって!』


「えっ、いやぁ……」


 突然話を振られて俺は言葉に困る。何か言ってやってと言われても、初対面の成人男性に噛みつけるほどの精神力は生憎と持ち合わせていない。

 

 困惑して口ごもる俺にじれったさを感じたのか聖がイライラした口調で俺に詰め寄って来た。


『なんでそんなに遠慮してるの。無能って言われたんだよ!そこは怒るところでしょ!』


 タブレットが俺の顔面にビターッと張り付いて来て俺の頬の肉が持ち上がる。近い、そして痛い。


「近けぇよ!そして痛てぇよ!離れろ。そして落ち着けこの馬鹿」


 鷲掴みにして聖を引きはがすと、注意をされて少し冷静になったのかヒートアップしていた聖がクールダウンした。


『ご、ごめん。昔からこいつのこう言うところに振り回されて来たから、積年のイラつきが爆発して』


 積年のイラつきってなんつーパワーワードだよ。一応仲間だったろ、世界を救ったんだろ。昔に何があったかものっそい気になるんだけど!?


「もう済んだことだろ。最後まで付き合ってやったんだから、あれやそれは水に流せよ」


『水に流すかどうか決めるのは僕だし、君が命令することじゃないし!』


 一切悪びれることのないケイオスさんに聖の怒りの感情に再び火がつく。向こうも向こうですっげぇ煽って来るじゃん。しかも笑ってるし。何をそんなに楽しげにしているのデスカ?


「まあまあ、落ち着けよ。その前に本題に入ろうか。別にお仲間の前で話しても良かったが、お前たちには色々隠し事がある様だし、念のため席を外してもらった。俺の気遣いに感謝しろよ」


「はあ、ありがとうございます」


 なんでかな、シャルム国王も上から目線なところはあったけど、特別なにも思わなかったし、すんなりと受け入れられた。でも、このヒトの上から目線はちょっとだけ、イラッとする。態度か?態度のせいなのか?


 小さなイラつきを燻ぶらせる俺にかまうことなくケイオスさんは悠然と口を開く。


「本当は聞きたいことはたくさんある。アキラがタブレットになっていたり、別次元から来た無能クン……」


「クロケルです」


 失礼な仇名のまま話を進めようとしたので俺は食い気味で訂正した。ケイオスさんはへらっと笑ってから続けた。


「これは失礼。別次元から来たクロケルくんのことも気になるけど、それは一旦流すことにして……シャルムから聞いたよ。前長の家族と名乗る少女が現れたんだって?」


『うん、僕もシャルムもそんな事実があったなんて知らなくて。君は心当たりはある?』


 ヘラヘラしていたかと思えば突如、真面目な表情になったケイオスさんに聖も苛立つことなく真剣に質問をした。


「いや、俺にも心当たりがない。そんなことは初めて聞いた」


 ケイオスさんは首を横に振って否定した。やはりそうか、と思う。

 長は他者との関わりが制限される。それ故、長と言う存在自体がベールに包まれている様なものだ。仮に特別な理由があってあの少女と暮らしていたとしても、その事実は極秘に取り扱われていたに違いない。


「だよねぇ」


 聖が気だるげに言った。多分、タブレットの向こうで肩をすくめている様な気がする。


「シャルムから前長を倒した俺たちの命を奪うことが目的って聞いたけどそれは本当か?」


 ケイオスさんの問いに俺は頷く。


「はい。シャルム国王様が襲われかけました。変な魔術をかけられて負傷はしましたが、大事には至らず……その後に戦闘になりましたが事なきをえました」


『で、逃げたその子がこの国へと移動した痕跡があったから、次のターゲットは君かなって思って』


「ああ、それもシャルムから聞いたよ。その少女を捕えたいんだろ。そのために来たって聞いたぞ」


 事前にシャルム国王が詳細を伝えていてくれたため、ケイオスさんは今の状況をすんなり把握して受け入れた。


 話がスムーズに進んでいることが嬉しいのか、聖は気分よく頷いて話を続けた。


『そうそう、君たちが簡単に後れを取るとは思えないけど、あの子の力は未知数だし、忠告と護衛、そして少女の捕獲に協力して欲しくて』


 ケイオスさんはふぅーと息を吐いた後、面倒くさそうに項垂れ、そして顔を上げたかと思うと首をパキポキとならしてから言った。


「まあ、いいだろう。協力してやるよ。実際に戦ったことがある奴らがいた方が攻略もしやすいだろうし」


「あ、ありがとうございます!」


 特に否定されることもなく、寧ろ快くOKしてもらえたことが嬉しくて勢いよく頭を下げて感謝をすれば半笑いの反応があった。


「ははー、いいよぉ。そんな豪快に御礼を言わなくても。そう言うの暑苦しいからやめて。それで、戦った時に何か気になることはなかったのか」


「気になること……」


 トゲのある言い方をされたような気がしたが、とりあえずスルーをして、頭を上げて少女・フィニィとの戦いを思い出す。


 戦闘では役に立てないとわかっているので状況を覚えておこうと必死で目に映る光景を頭に入れておいてよかったと思う。


「5歳ぐらいの見た目の割に、凄く強かったと言う印象があります。シャルム国王やその従者の攻撃を余裕で躱していました。こう言う言い方は良くないかもしれませんが、戦い慣れていると言う感じがしました。」


 脳裏にクスクスと笑い、ダンスをする様に攻撃を躱していたフィニィの姿が蘇る。大人数に囲まれてるにも係わらず、焦る素振りを一瞬も見せなかったことが、とてつもなく不気味だった。


「ふぅん、なら見た目は子供なだけで中身は大人って可能性もあるのか」


 なにそのどっかの名探偵みたいな表現。多分偶然表現が一致してるだけだと思うけど真剣な顔でそんなこと言わないで欲しい。吹き出しそう。


 こみ上げる笑いを必死で耐えて震える俺を怪訝そうに見た後、ケイオスさんは再度質問をした。


「他に気になったことは」


『僕はあのツギハギだらけのクマのぬいぐるみかな。なんか不穏なオーラを持っていたから気にはなっていたんだ』


「クマのぬいぐるみ?なんだよ、それ」


 眉間に皺を寄せるケイオスさんに俺が補足する形で説明する。


「その子、クマのぬいぐるみを持っていたんです。巨大化して上からダイブしてきたり、口から破壊光線を出したり、普通のぬいぐるみではないと思います」


「うん。大分ヤバいぬいぐるみだな。もしかすると魔法具の一種なのかもしれないな」


「魔法具?」


 聞きなれない言葉に首を傾げればケイオスさんが簡単に説明してくれた。


「そのままの意味さ。魔法を使うための道具。大体は杖とか棒とかが使われるが、魔力が通れば媒体はなんでもいいからな」


『いや、それはない』


 顎に手を当てて思考を巡らせるケイオスさんの言葉を聖が一刀両断した。容赦がないな。もう少し優しい言い方をすればいいものを……。


「へぇ、そこまで言い切るってことはそれなりの理由があるってことだよな。聞かせてくれよ」


 自分の推理を秒速で否定されたことを怒っているのか、目が笑ってない笑みをたたえながら言った。背後から漏れる黒いオーラが怖い。漫画ならゴゴゴゴゴッと言う効果音が確実についている。


 思わず身震いしてしまったが、聖は慣れているのか何も気にする様子はなく平然として己の意見を述べた。


『一応、あの子だけじゃなくて人形の方もアナライズしたんだ。そうしたら、ぬいぐるみの中に何かの魂が宿っていた』


「は?」


 予想していなかった言葉にケイオスさんが暗黒オーラを引っ込めて呆ける。と言うか俺も聖を二度見した。


「俺もそれは初耳なんだけど」


『ごめん、ぬいぐるみに変なジャミングがかかっていて、魂が存在していると言う事以外は解析できなかったんだ。あまりにも情報が不確定だったから、一旦流したんだよ』


 ハッ、あの子が去った直後に黙り込んでいたのは、それについて考え込んでいたからか。

それにしてもいくらでも言う時間はあっただろ。聖なりに色々考えがあってのこととは思うがそう言うのは共有しておけ、流すな。


「魂か……あの子があのぬいぐるみをお兄様って呼んでいたことも関係するのかもしれないな」


 聖の発言を元に自分なりの推理を口にするればケイオスさんも意見を出す。


「普通に考えればぬいぐるみの中にある魂がお兄様ってことだろうな」


『そうだった場合、どうしてお兄様の魂がぬいぐるみに宿っているかって話になって来るけど』


「その少女が何者かと言うことを考えるには謎が多すぎるな。よし、一旦保留だ。他にわかっていることは?」


 即座に話を切り替えたケイオスさんに俺はフィニィについて1番気がかりだったことを切り出した。


「実はその子、人工魔術師と言う存在らしいんです。この学校は人工魔術師について研究していると聞いたのですが」


「ああ、してるな」


 ケイオスさんはあっさりと頷き、そして続けた。


「確かに、この学校は人工魔術師についての研究をしている。俺も校長兼研究者の1人だ。ああ、研究って言っても造っているわけじゃないからな。流石の俺も法律違反はしない。興味はあるけど」


『ケイオス!』


 聖が怒りを露わに叫べばケイオスさんは鬱陶しそうに右手をヒラヒラとさせてその怒りを振り払った。


「はいはい。長様は真面目ですねぇ。冗談だよ。話を戻すと、この学校では人工魔術師のメカニズムを研究しているんだ」


「メカニズムですか」


「そう。魔力のない人間にどうやって魔力を与えているのか。そもそも魔術適正や素質のない人間にそんなことをして大丈夫なのか。どんな副作用があるのか。そう言うことを過去の事例を元に研究している」


 メカニズムの研究か……でも何で魔法学校がそんな研究をしているんだ。そんなの学校じゃなくてもできるだろう。どうしてわざわざ校長がそんなことをする必要があるんだ。


 俺が黙り込んでしまったことを変に思ったのか、ケイオスさんが少し不機嫌になって言った。


「言っておくが、やましい考えなんて1ミリも持っていないからな。確かに、摘発された研究機関のデータを元に研究をしているが、国の許可をきちんと取っている。至って正当で真面目に人工魔術師について細部まで研究・解析をしているんだ」


 別に何も疑っていなかったが、こんな態度が返って来ると言うことは、そう言う勘違いをたくさんされて来たんだろうなぁ。


 でも確かに、人工魔術師の研究って言葉自体が不穏な印象を受ける。聞こえだけだと人工魔術師を量産してそうとさえ思う。たぶん「研究」と言う言葉が先入観を持たせているのだと思うが、そう言うのって怖いし、相手に失礼だよな。


 俺も変な先入観を持たない様に気をつけよう……。


「あの、人工魔術師について知りたいんです。差し支えなければ詳しく教えてもらえませんか」


「お、興味ある?そう言えばお前、魔法騎士なのに魔法が使えないらしいな」


 あはははっと馬鹿にして笑った後、スンッと静かになり真剣な顔をして俺を見据えて言った。


「いいぜ。話してやる。人工魔術師について……な」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!魔法学校の校長により語られる人工魔術師と言う存在。フィニィの手がかりになればいいと思うけど……」


クロケル「情報は多い方がいいからな。」


聖「それにしても、ケイオスが意外にあっさり話してくれてよかったよ。何か要求されるかと思ってたから」


クロケル「前回もそんなこと言ってたな。ケイオスさんってマジでどんなヒトなんだ。ただの腹黒キャラじゃないのか」


聖「うーん、シャルムも丸くなってたし、ケイオスも何かのきっかけで性格が丸くなった可能性がなきにしもあらず?」


クロケル「どっちだよ。あと疑問系やめろ」


聖「次回!レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第36話『人工魔術師の真実の真実』明かされた真実にクロケルは何を思うのか」


クロケル「なんで最後だけカッコつけたんだ」


聖「えへ、こう言う次回予告に憧れてたんだ★」




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