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第32話 少女の暗躍を防げ!新たなる旅の目的

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


今回も少しだけ長くなってしまいました。キャラ1人1人の見せ場を作りたいと思ったのですがそれを考慮した上で物語を書くと言う難しさを実感しております……。


次回から新しい舞台に突入です!相変わらずノープランですが大丈夫かなぁ(汗)プロット考えるよりも思いつくまま書いた方が早いんです。ぐだぐだになるのが欠点ですが……。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「背後を取られるとは、同業者として情けない限りですね」


 フィニィの背後に淡々とした声と共に2つの影が現れた。手には小刀。その切っ先は左右から挟むようにしてフィニィの首元をしっかりと捉えている。


 フィニィからは余裕の笑みが消え、驚いて目を見開いていた。


「プロクスさん、エクレールさん!?どうしてこんなところに」


 城で刺客探しをしていたんじゃないのか。驚く俺に2人はフィニィの首元にナイフを押し付けたまま平然として答えた。


「私が施した魔術が発動したことを感知し、陛下の御身が危ういと判断し参りました」


「城内での探索はミハエル殿にお任せしておりますのでご安心を。助太刀いたします」


 ミハイルに任せてって、それはそれで大丈夫なのか。城内に仲間がいる可能性はあるよな。仮に仲間がいたとしてちゃんと対処するかなぁ。絶対ラピュセルさん以外守らない気がするなぁ。


 あと、いくら国王の命を狙う刺客だからって、子供相手にナイフを向けることができるってどんな精神構造してんの。


 怖いよ、アサシン……容赦がない。いや、戦場に置いて情けとか容赦は無用なんだろうけどさ。例え修羅場をくぐり抜けて経験を積んでも俺にはできない行動だと思う。


「命を奪ってはダメよ。生け捕りにして。その子には聞きたいことが山ほどあるの」


 シャルム国王の毅然とした命令にプロクスさんとエクレールさんはナイフを構えたまま会釈した。


「「御意」」


 声をそろえて命令を受け入れた後、大人しくしているフィニィに視線を落としてやれやれと肩を落としながらプロクスさんが言った。


「暗殺を語りながらこんなに簡単に隙を見せるなど、まだ子供ですね」


「しかし、子供であるからと容赦は致しません。このまま城へ連行して色々と聞かせて頂きますよ」


 エクレールさんが厳しい言葉を掛けながらフィニィを拘束しようと手を小さな体に手を伸ばしたその時、フィニィは小さく笑って言った。


「お断りだよ」


「「!?」」


 首元を左右からナイフで挟まれているため、下手に身動きが取れないフィニィだが、正面を向いたままぬいぐるみを抱き上げ、それを背後に立つ2人に向けた瞬間、ぬいぐるみの口元が捕食するサメの様にぐわっと開き、眩く光ったかと思うと特大級の波動弾が飛び出した。


「危ないっ」


 無意味な俺の絶叫が響く。ぬいぐるみの至近距離にいた2人だが、異変気がつくのか早かったためか間一髪でそれを避けて事なきを得た様だった。


 2人が避けたことにより的を失った波動弾は周囲を囲む木々を容赦なくなぎ倒したて進んでいたが、次第に勢いを失い消滅した。


 波動弾が通った場所には木の1本も残っておらす、何なら新しい道ができている。道と言うか(うね)か。とにかく綺麗にえぐり取られているのだ。


 俺だったら確実に消し炭だったと思う。戦闘中は子供相手でも油断してはならないと学んだ。甘さなんて捨てないと生きていけない、なんて世知辛いんだ。


 飛び退く形でフィニィから距離を取った2人はすぐさま体制を立て直し、先ほどよりも鋭い視線を浴びせながら構えた。


「なるほど。手練れの様ですね。ならばこちらも本気で行きます」


 エクレールさんの両手から青い稲光がバチバチと音を立てて現れた。時折飛び散る火花がその電圧の強さを物語る。


「走れ、閃光我が主に仇なすものに天誅を」


 両手を振り抜く様にしながらエクレールさんは祝詞を唱えてその雷をフィニィめがけて放つ。


 稲光は目標に向かって一直線に進むそれは途中で枝分れし、幾万の雷の鞭と鳴ってしなりながらフィニィを襲った。


「わあ!雷の鞭だよ、お兄様。命中したら大変だね」


 しかしフィニィはぬいぐるみに話しかけながら楽しそうに笑いステップを踏みながらそれを避ける。


「エクレールの攻撃を見切るなんて、あの子中々やるじゃない」


 戦いの様子を見ながらシャルム国王は感心していた。


「いや、感心している場合じゃないでしょ。それって状況的にやばいってことですよね!?」


「まあ、そうね。強い相手を見ると心が躍ってしまうのは私の悪いクセね」


 俺のツッコミにシャルム国王は気まずそうに答えた。やっぱりあの子は「強い」のか。


 そうこうしている間にもフィニィは最後の1本を避け、キメポーズのつもりなのかスカートをつまみ上げてお辞儀をする。


 まるでショーでも終えたかの様に優雅に顔を上げるフィニィを待たずにプロクスさんが間髪入れずに祝詞を唱える。


「業火よ、手加減はなしだ。かの者を焼き尽くせ」


 言い終わると同時にプロクスさんが掲げた手から火炎放射が放たれる。離れた位置にいる俺たちまで伝わるその熱気にめまいがしそうだ。と言うか熱気で空間が歪んで見えるぞ。


「わぁ!危ない。ヒトが挨拶をしている時は手を出したらダメなんだよ。大人なのになんでわからないのっ」


 文句を言いながらもプロクスさんの攻撃を宙返りで軽やかに避け、頬を膨らませて地団太を踏んでいる。


「プロクスの炎も避けるなんて……」


 信じられないとクラージュが震えている。その反応を見て、この状況は異常なのだと言うことを認識させられる。


 人工魔術師ってそんなに強いのか、でもフィニィはほとんど魔力を使っていない。能力が未知数過ぎる。


 誰もが同じことを思っているのか、ぬいぐるみを抱きしめながら佇むフィニィを警戒しながら各々が構えている。

 

 今度は誰が攻撃するのか、フィニィはどういう手に打って出るのか。戦いの緊張感が最高潮に達した時、フィニィが大げさなぐらい大きなため息をついた。


「あーあ!ざぁんねん。国王様が一番近づきやすかったから簡単に始末できるかと思ったけど、やっぱりそう甘くはないなぁ。さすが主様に勝ったヒト。反吐が出そう」


 フィニィは毒を吐きながらもこちらを見ながらクスクスと笑っていた。ひとしきり笑った後、お兄様と呼ぶ人形をぎゅっと抱きしめ、フィニィは残念そうな表情で言った。


「こんなにガードが堅いとやりにくいなぁ。もぉ面倒だし、ターゲット変更しよう。ね、お兄様。その方がいいよねっ」


「ちょっと。この状況で逃げられるとお思いかしらっ」


 誰かと喋っている様で独り言を言うフィニィに向かってシャルム国王は言い終わると同時に冷気を込めた左手を薙ぎ払う。


 同時にガラスがぶつかり合う様な高音が鳴り響き、場の温度が下がったかと思うと1メートルはあるであろう氷柱が轟音をならし地面を突き破って木の上に佇むフィニィを襲う。


 フィニィを捕え様と瞬きする間もないほど高速で突き進んでいた氷柱だったが、攻撃が命中する寸前、フィニィはくすりと笑った。


「うふふっ、氷の使い手なのに血の気が多いなんて変なの」


 同時に木の上に佇んでいたフィニィの姿が一瞬で掻き消える。目標を失った氷柱はそのまま木に衝突し、太い幹は巨大な爪で引っ搔いた様に木くずと土煙を上げながら大きく抉れた。


「ちっ、避けられた」


 常に上品且つ優雅な視線を崩さないシャルム国王が忌々しそうに眉間に皺を寄せて舌打ちをした。よほど悔しいらしい。


 おいおい……なんだよ、この状況。二次元の世界において子供だけど強いです的な展開はよくあるけど、実際にその光景を目の当たりにすると「ありえない」と言う気持ちが先行し、ひどく狼狽えてしまう。


「ど、どこに行ったんだ」


「クロケル、上だよ」


 姿を消したフィニィを探し焦りを覚えながらも辺りを見回しているとシュバルツが俺の服の裾を引っ張って真上を指さした。


 同時に頭上からクスクスと笑う子供の声がし、その場の全員が弾かれた様に上を見上げる。


「あははははは、すごいねぇ。強いねぇ。国王様の相手はまた今度してあげる。でも今は戦略的撤退。じゃねー」


 クマの人形をギュッと抱きしめ、フィニィは友人に別れを告げるかの様にヒラヒラと手を振ってその姿を消した。


「な、なんだったんだ」


『……』


 誰もいなくなった空を茫然と見上げる俺たち。そして聖は何か思うことがあるのか、怒りを含んだ様な声で低く唸っていた。





「前長に家族がいたなんて初めて知ったわ」


 刺客騒動がモヤモヤを残したまま一段落し、俺たちは城に戻って客室で話をまとめることになった。


 城内に残っていたラピュセルさんとミハイルにも外で起きたことをざっと話した後、シャルム国王は盛大にため息をつき、眉間を指でつまんで憂鬱な表情を浮かべる。


 俺たちの前には紅茶と軽食が用意されているが、シュバルツを除き誰もそれに手を付ける気にはなれなかった。


「人工魔術師なんて初めて聞きました。よくわかりませんが、あまり良い印象を受けませんね」


 ラピュセルさんが痛ましそうに言い、ミハイルが嫌悪感丸出しで吐き捨てる様に言った。


「遺伝子をいじくって人工的に魔術師を造り上げるなんて、人間って頭がおかしいのな」


 ミハイルの言うことは最もだ。より良い何かを造り上げるために生命を実験台にするなんてとんでもないことだと思う。同じヒトとして恥ずかしい。


 ましてや、あの子はまだ幼い子供だった。あんなに幼い子供を使ってまで人口魔術師を造る価値などあるのか。多分、需要があるからそういう研究機関があるのだろうが、凡人の俺では全てに置いて理解ができない。


「しかもその少女には逃げられたんだろ。これからどうするつもりだ」


「ミハイル、そんな態度はダメよ」


 乱暴に聞くミハイルをラピュセルさんが宥め、ミハイルは納得がいかない様子で明後日の方を向いた。


『無収穫ではないよ。あの子の目的はハッキリした。向こうも隠す気は全然なかったみたいだし。寧ろ宣戦布告をされた様なもんだよ』


 聖は非常に不服そうだった。タブレットなので表情は確認できないが多分むくれている。口を尖がらせて面白くなさそうにしている光景がなんとなく想像できる。


「そうね、プラスに考えれば相手の目的が明確になった分、こちらも警戒がしやすくなったわね」


 状況を前向きに捉えようとするシャルム国王だったが、その表情は曇ったままだった。


「そもそも長は家族を持つことは可能なのですか。私たち一般人には長と言う存在は殿上人過ぎてわからないことが多くて……」


 シルマが困惑の表情を浮かべて言えば、それに聖が答える。


『それに関してはYESともNOとも言えるね。基本的に長は自分の身を護る必要があるから、誰とも関わらない。基本的に誰とも会わないし居場所も教えない……いや、教えてはならない。長になったヒトに家族がいたなら長と言う立場になった時点で会うことは叶わなくなるだろうし、家族がいなければ誰かと家族になることは多分、一生叶わない』


「ほうほう、つまり長になった人物で元々家族がいるヒトは長としてのルール的に家族と添い遂げることは叶わない、いないヒトは誰とも会うことができない故に家族を持つことは不可能と言うことですね」


 聖の回りくどい言い方をクラージュが、顎に手を当てて頷きながら簡潔にまとめた。すごく分かりやすかった。


「うーん。それは中々複雑だな」


 家族はおろか誰とも会えない。世界を守るなんて重い任務を背負わされた挙句に孤独で寂しい思いをしなければならないなんて、どれほど辛いことだろう。俺なら気が狂いそうになる。


 でも、よく考えたらそれだけ誰かと関わることを制限されているのなら、聖のこの状況はかなり異例なんだろうな。直接会っていないし、居場所も教えられているわけでもないけど。


 そう言えば本人もかなりグレーなことをしているみたいなこと言ってたな。俺を転生させたことも大分アウト寄りだったっぽいし。長のルールどうなってんだ。


 聖は俺に親友だし、いつまでこうして過ごすことができるかはわからないが、少しでも孤独を紛らわすことができていればいいなと思う。 

 

 ……待てよ。前長が世界の消滅を望んだ原因ってまさか。


 何か閃きそうになったがそれは聖の言葉によってかき消された。


『まあ、前長があの子とどうやって出会い、どこでどう過ごしていたかはわからないけど、神子とその仲間を恨むぐらいの絆はあったってことは、きっと彼女たちは家族だったんだろうね』


 切なげに言い、シャルム国王もそれに腕組みをし、深いため息をつきながら同意した。


「そうね。確かに、アタシたちは世界を守ると言うことを名目に人の命を奪ったんだもの。恨まれても命を狙われるほど仕方がないわ」 


「いいえ、それは違います。神子様と旦那様たちの命を懸けたご尽力のおかげで世界は存続し、多くの命が救われました。けして恨まれる様なことはしておりません」


 クラージュがはっきりと物申したが、シャルム国王は緩く首を振った。


「ありがとう。そう言ってもらえるのは喜ばしいことだけれど、それはアナタの価値観よ、クラージュ。アタシたちが世界の存続を選択したことによって救われないヒトもいるの。その1人があの子。正義の定義はヒトによって変わるものなのよ」


『その通りだよ。救うと言うことは、何かを犠牲にしなくてはならないと言うこともある。神子たちの行動は必ずしも正しかったとは言えないと、僕も想う』


 シャルム国王と聖に詰め寄られたクラージュはたじろいだ。自分たちを庇う様な発言をした相手によくもまあ、そんな厳しい言葉が言えるもんだ。


「そ、そんなことは……」


 ないです。とクラージュは続けようとしたが、シャルム国王の言葉にも一理あると思ったのか、それとも敬愛する国王兼旦那様意見を否定するのはよくないと思ったのか、クラージュは言葉を濁した後に唇を噛んだ。


 そしてそのまま誰も口を開かなくなった。重い、これは重すぎる。ものすごく息苦しい。何か別な話題を出して空気を喚起しなければ精神衛生上よくない。(主に俺の)


「そ、それにしても、アキラさん、お詳しいんですね」


 必死で頭を回転させ話題を探していた俺よりも先に、数分無言の時間が流れて気まずくなったこの状況に気を遣ってか、シルマそう話を切り出した。


『えっ』


 聖が間に見えて固まった。話題を変えてくれてありがとう。ナイスだシルマ!と言いたいところだったが、その話題はダメだ。


 無自覚で神子&長ムーブした聖も悪いがさっきとは別の意味で気まずくなる。


 善意から出た言葉なのだろうが、有能AIを自称する聖が元神子で現長と言うことは俺とシャルム国王しかしらない。


 実はこのタブレット、現長なんでーす!なんてノリで言えるわけもなく、無自覚な鋭い言葉に重苦しかった空気が今度は氷ついた。


 俺も腹のあたりがヒヤッとしてその冷たさが背中まで伝わって来る。これぞ冷や汗。体は暑いのに汗をかいているところだけ変に冷たいぞ。隠し事があるってつらいなっ!


 ふとシャルム国王の方に視線を移して見れば眉1つ動かすことなく、平然と紅茶を口にしていた。なんと言うポーカーフェイス。人狼ゲームとかすごく上手そう……いや、俺が分かりやすいだけか?


 空気が凍ったことを察したシルマが何故かわからないと思いながらも取り繕う様に質問を続けた。


「え、ええっと……長のことについては明かされていないことの方が多いですから。性別や年齢はおろか、どうやって長になる人を決めているのかすら一般人には知らされていません。でも、アキラさんはご存じの様でしたので不思議だなぁと思って」


 自分の発言で変な空気になってしまったことに罪悪感を持っているのか、シルマの言葉は徐々に尻すぼみになって最後は身をすくめて申し訳なさそうにしていた。


 ごめん、シルマ。気を遣ってくれたんだよな。悪いのは割とデカめな隠し事を抱えるこっちなんだよ。ホントにごめん。


『あー、うん。僕は優秀なAIだからね。世界中のデーターベースをハッキングしたり、検索できるんだよ』


 聖はちょっとだけ苦しめだが、シルマの質問に当たり障りのない回答した。


「そ、そうですか」


 シルマは戸惑いを見せたまま納得し、同じく話を聞いているクラージュを始めとする主従組も特に追及をしてくることはなかった。


 さすが王国騎士。他人の事情には必要以上踏み込まないと言うその姿勢、立派です。


「話を戻すけど、あの子についてはまだわからないことだらけだから、警戒はする必要があると思うの。狙われているのはアタシと長を含めた世界を救った英雄と呼ばれる人たち。彼らが簡単にやられるとは思わないけれど、情報は共有しておいた方が良いと思うの」


 聖の素性がバレそうな空気を察したのか、シャルム国王が自然な流れでまったく別な切り口で話を戻した。


「状況共有ってどうやって」


 助け船を出してくれたシャルム国王に感謝をしながら質問すれば、シャルム国王は紅茶を一口飲んで一息ついた後に言った。


「そうねぇ、一応、全員の連絡先は知っているからアタシから簡単に連絡はしてみるけれど、個人的にはあの子のことを調査したいの。そこで、提案」


 シャルム国王はにこりと笑った後にティーカップを置いて足を組んだ。

 あー、嫌な予感がするぞ。これから俺はまた面倒事に巻き込まれるんだ。お約束の展開に俺は半ば諦めた状態で死刑宣告、じゃなくてシャルム国王の言葉を待つ。


「アナタたち、旅のついでに英雄たちのところへ行ってくれないかしら。できれば先回りが望ましいわね。それであの子が現れたらその暗躍を阻止、捕獲して欲しいの。もちろん、それなりに御礼はするから」


 はい。キター!王様からの依頼。まさにRPGの鉄板、王道展開。

謎の強敵少女が現れた時点でこうなる予感はしてました。これは何かのフラグが立ったなーってあのシリアスな場面で不謹慎にも思っていました!すみません。


「えっと、俺たちがあの子のことを追うのは良いとして、国王様はどうされるおつもりで」


 まさか俺たちのパーティに加わりませんよね。いや、実力は確かだし、何よりもこの件の関係者だし?いてくれた方が心強くはあるけども。一国の主がパーティーメンバーとかあんまり現実的じゃない気がしないでもない。


「本当はアタシが自ら解決したいのだけれど、国王と言う立場である以上、ここから離れることは困難なの。それはクラージュたちも同じよ。彼女たちには個々の仕事があるから、アナタたちとは旅立てないわ。ごめんなさい」


 まさかの他力本願。でもこの展開も予想はしてた。してたけど、未知なる敵を相手にするってなるとまだちょっと決意ができないかなぁ。


 ターゲットは絞れるにしろ、聖の仲間はあと4人居るんだろ。あの子が次にどこの誰を狙うかなんて検討もつかない。


「先回りって難しいと思います。闇雲に動いてもあの子を捕えるなんてできないだろうし、俺たちが役に立てるかどうか」


 役に立つか立たないかで言えばレベル500のシルマがいる時点で、戦闘においては十分役には立てるだろう。


 だがシャルム国王は俺が高レア雑魚だと気づいているが、シルマが低レア最強と言うことは知らない。ならこれは役立たずだと言うことを理由に断るチャンスだ。


 事態が深刻だとは理解できるが、危険が伴いそうな案件は回避したい。できれば断りたい俺がやんわりと自分たちは役立たずだと遠伝えようとしたが、聖があっさりと言った。


『彼女の魔力反応なら()に記録しておいたからある程度まで痕跡を追うことができるよ』


「マジか」


 俺の口から色んな意味を込めてた「マジか」が出た。本当に?すごいなと言う意味と、余計な能力搭載してんなよ。断れなくなったじゃねぇか。と言う意味「マジか」である。


「マジマジ。えっと次の行き先は……うわぁ、ヴェレームトだ」


 聖は即座にフィニィの魔力を探知し、そしてものすごく嫌そうに言った。あからさまな反応に俺が首を傾げているとシャルム国王は意地悪な微笑みを浮かべて優雅に言った。


「あら、偶然。色々と丁度いいじゃない。ここから近いし、連絡もすぐに取れるから行って来なさい」


「丁度いい?」


何故聖は嫌そうなのか、何故シャルム国王はこんなにおもしろそうにしているのか、全く見当がつかず首を傾げるとシャルム国王は空中に浮かぶ聖に視線をやり、クスリと笑ってから言った。


「魔法国ヴェレームト。この世界で最も優秀と評される魔法学校がある場所よ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告。ぐだぐだだった旅だけど、ついに目標ができた!次なる目的は魔法学校!になるかもしれない。どうクロケル。ワクワクする?」


クロケル「まあ、楽しみではあるが……そもそも旅の目的は俺のレベル上げだろ、話逸れすぎだろ。まさか忘れてないよな」


聖「忘れてないよぉ。同時進行で行こう。次回レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第33話 『さらばグラキエス王国。新たなる旅路』さあ!新たなる旅立ちの始まりだよ!」


クロケル「はあ、やっと話が進むのか」



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