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第30話 意外なる刺客の正体

この度もお読み頂き誠にありがとうございます。


もう1日おき投稿が当たり前になってきている(震)ですが、お仕事も大分落ち着いてきましたよ!まだ波がありますけど、何とかなりそう。


そんなことよりゲームのイベントの重複に苦しめられている毎日……。完走は無理でもストーリーと配布キャラの取得条件だけはクリアしたい。


あと、小説のアイディアもまとめたいですね。物語に矛盾があるとアレですので。読み返して修正しないとなぁ。と思います。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 シャルム国王に怪我を負わせた刺客探しをすることになったものの、そもそも何がどうなって傷を負うことになったかがわからない状況でどうするべきかと決めあぐねていた。


「闇雲に動くのはよくないわね。まずは作戦会議よ。この部屋は危険かもしれないからアナタたちが使っていた応接間を使いましょう」


 あんなことがあったのに、冷静に言い放つシャルム国王にその場の皆が頷いた。


「あら、みなさん。お帰りなさい。国王様はご無事でしたか」


 自分で自由に動けないラピュセルさんと、ラピュセルさんの危機以外に眼中のないミハイルは応接間に残っていたみたいだ。


 主従組以外は椅子に腰かけ、心配そうにするラピュセルさんに詳細を話し、今から刺客探しをすると伝えると自分たちも手伝いたいと申し出た。


 ミハイルは非常に嫌そうにしていたが、ラピュセルさんが大変やる気を出していたため、その感情を口に出すことなく、不本意そうに刺客探しに協力すると同意した。


「で、対案なんだけど、現状が把握できていない以上、変に行動を制限するよりスケジュール通りに動いた方がいいと思うのよね」


「ダメです。それは危険です!」


 あっさりと紡がれたシャルム国王の申し出をクラージュが即座に却下した。俺もどちらかと言えばクラージュに同意である。


 相手は刺客。内部犯か外部犯かはまだ不明だが、恐らく国王のスケジュールは把握しているだろう。命が狙われているのに決められた行動をとるなんて的になる様なものだ。危険度は最高レベルに高い。


「でも、アタシが狙われているのは確実なんだから、アタシが囮になった方が刺客を釣りやすいんじゃない?そもそも、アタシを守ることじゃなくて刺客を捕まえることが目標なんだから」


 心配そうにするクラージュを他所にシャルム国王が平然と恐ろしいことを言った。信じられねぇ……この人、自分が囮になるって言った。なんで平然とそんなことが言えるかな。下手をすれば死んじゃうかもしれないんですよ。命あっての物種ですよ。命、大事に。


 しかし、シャルム国王は決して間違ったことは言っていない。他にいい案も浮かばない俺は何一つ言葉を発することもできずにその場で座っていた。


 俺だけじゃない。この場にいる誰もが国王の身を案じながらも、最善策が思いつかず、毅然と囮になると言い張るシャルム国王を前にただ黙り込んでいた。


『なるほど、狙われているってわかっているからこそ、普段通りの行動をしても防御もしやすいってことだね』


「そうよ。一度不意を突かれたわけだし、城の外にいても中にいても同じ。それなら、自分の仕事を全うした方が効率がいいもの。仕事も遂行できて、刺客もおびき寄せられる。まさに一石二鳥よね」


 皆が黙り込む中、ただ1人聖だけがシャルム国王の意見に賛成する様な態度を示し、シャルム国王も賛成意見が出たことに気を良くしたのか嬉しそうに頷いた。


「だ、旦那様は真面目過ぎます。もし、旦那様に何かあったら私……」


 王国騎士らしからぬ弱々しい口調で涙目になりながら声を震わせるクラージュをそっと抱きよせながらシャルム国王は甘く、優しい口調で言った。


「大丈夫よ。さっきは油断してしまったけど、護身と回復魔術には自信があるし、それにアナタのことも信頼しているの。だから、傍でアタシを守ってくれるわね」


「は、はい!命に代えても旦那様を守ってみせますっ」


 シャルム国王の言葉を受け、クラージュは零れそうになっていた涙を自らの腕で乱暴に拭い、力強く言った。


「命に代えられちゃ困るわ。自分の命もしっかり守って。アタシも自分を守りながらアナタを守るから」


「旦那様……」


 え、ナニコレ。空気が甘すぎるんですけど。刺客がどうのって話でしたよね。どうなったらイチャイチャに発展できるの。


 クラージュ真っ赤じゃん。王国騎士の欠片もないぐらいメロメロ妻モードじゃん。本来の目的、忘れてないよな。


「盛り上がってるところすみません。さっきみたいに突然手が切れる、みたいなことになったらどうするんですか。見えない攻撃からは流石のクラージュも守れないでしょ」


 甘い空気をぶった切って小さく手を挙げながら俺は現実的な意見を述べる。


「はっ、そうですね。お話によれば気配はおろか殺気もなかったとか。確かに護衛は慎重に行う必要がありますね」


 頬を朱に染めてすっかり妻モードだったクラージュが騎士モードに戻り、真剣な表情で考え込む。


「まだ刺客とやらが城内に、いや下手をしたら姿を隠してこの部屋にいるかもしれないし、普段通り動くと言うのであればその辺も考えた方が安全です」

 

さっきは本当に突然前触れもなく攻撃されたのだから。俺はともかく、死線を潜り抜けてきた聖やシャルム国王が敵の気配に気づけなかったのはおかしい。


 果たして、刺客はどうやって攻撃したのか。あの部屋のには鍵代わりの結界が張ってあったはずなので、元々部屋に潜んで姿を隠していて犯行に及んだのか。


そもそもシャルム国王による不審者を感知する結界魔術が施された城に侵入してきた時点でものすごく手練れの可能性がある。


 未だに脳裏に過る真っ赤な血に震えて恐怖を覚えていると、プロクスさんが丁寧な口調で言った。


「そのことについてですが、あれは厳密に言うと見えない攻撃ではございません」


「え、そうなんですか」


 驚いてプロクスさんを見ればゆっくりとした頷きが返って来た。んん?なんでそんなことが言えるんだ。


 俺が首を傾げているとシャルム国王が言葉を補足する様に言った。


「プロクスは魔族であり、魔術にも詳しいの。さっきアタシの体を簡単に検査してもらったんだけど、アタシの体にかすかに魔術が施された痕跡があったらしいの」


「魔力の痕跡、ですか。どうしてそんなものが……」


 シルマが眉をひそめて不安な顔をすれば今度はプロクスさんが淡々と続けた。


「単純に考えれば陛下に接近した誰かがつけた、と言うことになりますが、陛下に近づいて気付かれない様に魔術を施すなど普通は不可能です」


『国王に近づくことができる人間なんて限られているもんね。じゃあ、あなたたち使用人の中に刺客が紛れ込んでるってこと?』


 聖はシビアな疑惑を直球でぶつけた。俺もそう思ったがなんでそんなにストレートに聞いちゃうかな。もっと聞き方があるだろ。オブラート突き破るなこのAKY(あえて空気読まない)!!


「基本的にはそうなりますが、城の関係者でなくても旦那様に触れる機会はあるんですよ」


「そうなのか?国王に触れる機会ってどういう状況だ」


 クラージュの言葉に俺は耳を疑った。国王に触れる、なんて普通ではありえないよな。それこそ色々危険だし。意味が解らず首を傾げればシャルム国王が緩やかに立ち上がる。


「今からその光景を見せてあげるわ。そろそろ時間だし。クラージュ、外出の準備をして頂戴」


「……本当に行かれるんですか?」


 先ほどのシャルム国王からの甘々な行動ですっかり丸め込まれていたかと思ったが、やはり不安はある様でクラージュが悲しそうに言うが、シャルム国王はそれに微笑み返した。


「ええ。守ってくれるんでしょう」


「……はい。わかりました。予定通り準備をして参ります」


 照れた様な、渋々と言った様な複雑な表情を浮かべながらもクラージュは、一礼をした後に準備のために部屋を後にした。


 その背中を慈しむ様に見送ったシャルム国王は俺たちに向き直った。


「クロケルたちも一緒に来なさい。護衛は多い方が心強いし。その他は城内に刺客が潜んでいないかを調査して頂戴」


「えっと、同行するのは良いとしてどこへ行かれるんですか」


 こちらの意見や返事を聞かずに話が流れていくことには正直慣れたのでもうどうでもいいが、同行する以上は目的を聞きたい。


 俺の問いかけにシャルム国王は口角を上げ、毅然とした微笑で言った。


「城下よ。町を見て回るの」



数十分後


 準備が整も整い、俺たちは社シャルム国王と共に町へ出ることになった。シャルム国王によれば月に何度かの町視察は日課なのだとか。


 因みにラピュセルさん、ミハイル、プロクルさん、エクレールさんは城に残って城内にいるかもしれない刺客を探すことになった。


 城中の鏡を利用して手がかりを掴んで見せるとラピュセルさんは息まいていて、ミハイルはその様子を頭が痛そうに見つめて、しっかり守らないと呟いていた。ミハイルも実はちょっと苦労人なんだなと勝手に共感した。


 シャルム国王の隣をクラージュが、背後を俺、シルマ、シュバルツ、空中には聖と半ば囲う様な形で町を進む。


「あ、国王様だ!」


「国王様がいらっしゃったぞ!」


「相変わらずなんて麗しいのかしら」


 町に入った瞬間で注目の的になってしまった。買い物中の人も、店番をしている人も、その動きを止め、とにかく町中の人間がシャルム国王に声をかけたり、手を振ったり握手を求めたりしてきたことに驚いた。


 余程人望があるんだなと思いつつも、それらの声援全てに応えるシャルム国王にも恐れ入る。手を振り、握手をし、惜しみなく笑顔を振りまいている。


「なあ、なんで国王自らがわざわざ町中を歩いているんだ」


 シャルム国王の隣でキビキビと歩みを進めるクラージュになるべく小声で聞いてみれば、歩きながら視線だけこちらに向けた状態で返答があった。


「旦那さ……いえ、国王様は定期的に城下に降りて町の状況を見て回るんです。何か困ったことがないか、苦しんでいる人はいないか、自分の目で確かめたいと」


 なるほど、時代劇における坊将軍とかお裁きをする方々みたいなもんだな。まあ、あの人たちは身分を隠していたけど。


「それにしてもすごい人だな。みんなシャルム国王のことを尊敬してるし、大好きって気持ちが伝わって来る」


 感じたままを口にすればクラージュは胸を張って自慢げに言った。


「はい!国王様は民からの要望や意見に前向きに向き合い、改善するまさに有言実行のお方ですので。そう言うお人柄が民の評価を得ているのでしょう」


 うっとりとするクラージュを見つつ、シャルム国王のバイタリティに感服していると、シャルム国王から小声が厳しい注意の声があった。


「クラージュ、無駄話をしないの。それによそ見をしては失礼でしょ」


「は、はいっ。申し訳ございませんっ」


 話しかけた俺が悪いのだが、シャルム国王に注意をされたクラージュは背筋を伸ばして前を向いた。


 ……そう言えばクラージュは騎士であり妻なんだよな。王妃なんだよな。その辺の町人の認知はどうなっているんだ。


 気になるところだがこの状況で質問するのもなぁ。さっき無駄話をするなって注意されたばっかしだし。うん、後から聞こう。


 ふと視線を泳がせればクラージュはしっかりとガードしつつ、群がる町人を整理してなるべく多くの人がシャルム国王と交流できる様にテキパキと動いている。なんてできる妻兼騎士なんだな。


 ぼんやりとその様子を見ながらも、刺客のことを思いだした俺は周りを気にしながら国王の背後に続く。今のところ特に怪しい動きをするヒトはいない。


 と言うか、この群衆の中から不審者を見つけ出すのは至難の業だろ。ガヤガヤとしていて音も拾えない。資格に狙われている可能性を考えれば確かにこの状況は危険だ。クラージュたちがシャルム国王を止めたがっていたことにも頷ける。


 俺が神経質になったとて微塵も役に立てないと思うが一応、警戒心を高めているとギュウギュウに詰まっている人の間を小さな影が縫う様に進んでくる。


 その小さな影は先頭まで辿り着き、大人たちの足の間からポンッと顔を覗かせた。


「国王様、こんにちは」


 無邪気な笑顔でシャルム国王を見上げるのは5歳~6歳ぐらいの少女だった。黒地のフリルドレスには白いフリルが良く映え、リボンもたくさん施されているそれは俗に言うゴスロリと言うやつだ。


 その姿を見た時、俺は妙な違和感を感じた。この少女はかわいい。ゴスロリも良く似合っている。だが、俺たちを囲む町人の中にゴスロリのような目立つ服装の人物は見当たらない。


 動きやすい普段着の人が多い中、なんでこの少女だけはこんな格好をしているんだ。趣味か?それとも良家のお嬢様とか。だとしたら家族はどこにいるんだ。


 なんか腹のあたりがもやもやする。不安、というかハラハラと言うか、とにかく変な感じだ。


 黄色いヒナゲシの飾りが施された黒いヘッドドレスを付けた薄紫の髪をツインテールにした少女を見たシャルム国王はひと際優しい笑顔になって膝をつき、小さな少女に視線を合わせる。


「あら、あなたはこの前アタシにお花をくれたお姫様ね。こんにちは」


 どうやら少女は以前もシャルム国王と会って握手をしたことがあるらしい。お互いにそれを覚えていた様で、とても和やかな空気が流れる。


 シャルム国王に群がっていたヒトたちも2人に気を遣い、押し寄せるのをやめて2人の様子を見守る様な雰囲気になっていた。


「この前は握手してくれてありがとう!すごく嬉しかった!あの、また握手してくれますかっ」


 少女は眩しい笑顔で小さな手を差し出した。それを見たシャルム国王は優しい口調で言った。


「ええ、良いわよ。小さなお姫様」


 少女の愛らしい申し出を快諾し、小さなその手を握ったその時、一瞬だけシャルム国王の目が見開かれた。しかし、直ぐに驚きの色はすぐに笑みに戻ったため、見間違いかと思った……が違った。


「……そう、あなただったの」


「ッ」


 次の瞬間、握り返した小さな手をシャルム国王はグッと握った。表情も氷の様に冷たく、突き刺す様な鋭い声色と視線で少女を見据えている。よほど強い力で握られているのか、少女の体が苦痛で歪む。


「国王様!?何をやって……」


 今まで国民に優しい微笑みで握手をし、声援に応えていた態度とは一変した大人げない態度に俺は驚いたし、動揺した。


 ただならぬ雰囲気に回りを囲む町人も動揺し、ザワつき始める。しかし、シャルム国王はそんな周りの反応にもお構いなしに少女の腕を強く掴み続ける。


 少女はシャルム国王から逃れようと必死で体を仰け反らせているが、抜け出せる様子はない。


 クラージュも、シルマも、シュバルツもシャルム国王の行動に戸惑っている様だった。聖だけは小さな声で『へぇ、なるほど』と呟いていた。


「国王様、痛いです。離してください」


 少女は涙目で訴えていたが、シャルム国王は張り付いた笑みを浮かべ、少女の腕を掴む手に更に力を込めて言った。


「あら、ごめんなさい。でも離すわけにはいかないのよ」


「えっ」


 怯えきった少女が顔を青くしながらシャルム国王を見つめる。少女を気の毒に思った俺が仲裁をしようとしたその時、シャルム国王が笑顔から真顔になってスッと目を細めて言い放った。


「捕まえたわよ。小さな刺客さん」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告。意外と早く見つけることができたみたい!ここから物語は意外な展開に動き出したり……するかもしれない」


クロケル「何でそんなに曖昧な言い方なんだ」


聖「いや、この物語基本はギャグだし、グダグダするかもって思って」


クロケル「それは知らんが……しかし子供が刺客ってどうことだ?お前が治める世界は平穏を保っているんじゃないのか」


聖「いや、完璧な平和を保つのはさすがに無理だよ。生きていく以上は多少の危険はある。次回、レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第31話 『告げられた目的、動き始めた暗躍』なんか不穏な空気だねぇ」


クロケル「不穏!?今、不穏っていったか」




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