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第27話 デスゲーム、開幕!?

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。

やはり1日空きますね(汗)昨日はちょっとだけ体を休ませておりました。


そしてまたもや次回予告詐欺……。ノープラン執筆はこれだからダメですね、大いに反省です。

それに伴い、26話の予告内容も微妙に変えております。

次回こそは予告通りに書き上げたい!


本日もどうぞよろしくお願いいたします、


 宿泊棟から出た俺たちは車に揺られて城へと戻り、朝食を頂くことになった。昨晩の夕食も十分豪華だったが、朝食もキラキラで豪華なもので、大変光栄で魅力的だとは思ったが、何度みても慣れない光景にやっぱりちょっと引いた。


 デニッシュ、バケット、ハニートーストなどの数種類のパンはお代わり自由、温かいカボチャのスープはミルクが多めなのかクリーミーで口当たりがよく、飲みやすい。


 彩が美しいサラダはレタス、パプリカ、スライスたまねぎ、ハムときゅうりのポテトサラダだ。それを数種類のドレッシングで頂くシステムで俺は酸味があるシソ系のものを選んだ。


 そしてやはりここでも肉。広辞苑かってぐらいの太さのベーコンが油を滴らせながら塊のまま皿に置かれていた時は目を剥いた。こんな大きなベーコン見たことない。どこの部位だよ。そもそも何の肉だよ。


 その隣には和風の庭園でよく見る置き石のようなデカさと存在感を放つローストビーフがこちらも固まりのままドデンと置かれている。


 それらの肉の塊を食べたいと申し出れば、何枚でもメイドや執事が好きな厚さに手際よく切り分けてくれるのだ。もう至れり尽くせりである。


『朝から肉って重くない?』


「ばか!せっかく用意してもらったのに何言ってんだ。国王様、申し訳ございません」


 食べもしないくせに聖がこのご厚意に文句をつけたので俺は慌てて空中のタブレットを抑え込んで苦笑いを交えつつ謝罪する。

 

 お前は知り合いかもしれないが、俺にとって他国の国王さまなんだよ。無礼を働くな。ハラハラさせんな!


 色々と怯える俺と失礼な聖の言葉など気にする様子は微塵もなく、シャルム国王はしれっとした態度で言った。


「お肉のたんぱく質を摂取することによってエネルギーがチャージできると言うのは大前提。しかも朝に食べればエネルギー消費によってカロリーが消費されるのよ。それに、お肉に含まれるタンパク質が一段と体脂肪を燃やす手助けをしてくれるから、体の美と健康を保つには理にかなった食べ方なのよ」


 そう言って何枚目かのローズトビーフを優雅に口に運んだ。確かに、昔テレビで女優が朝からステーキを食べていると言っていた気がする。


 確かにその女優は美人で健康的なヒトだった。朝から肉なんて胃にのしかかりそうでありえないと思っていたが、理にはかなっていたと言うことか。


 しかし、量は食べられないな。肉の他にもおかずはあるし、既にお腹いっぱいになりつつある。


「安心してください。お肉は全て良質なものを使っておりますので、肉汁まで飲めると思います。とても健康的になれますよっ」


 クラージュはニコニコとしながらちょっとだけズレた発言をする。そりゃあお前は嬉しいよな。肉が大好きでいっぱい食べるもんな。


 俺は宿でのクラージュの食欲を思い出して苦笑いをした。ところでクラージュさん、なんですかその皿の上の肉の岩は。それ、1人で食べるおつもりで?


 クラージュの皿を凝視しているとシャルム国王がナプキンで口元を拭いてから涼しい顔で言った。


「それに、アタシもクラージュもヒトの倍ぐらい動くから、十分すぎるぐらいのエネルギーチャージは必要なの」


「はあ、そうなんですか」


 もう生返事しかできない。これ以上会話を繋ぐ自信も参加できる自信もないため、俺は黙って食事に向き合うことにした。

 今の内に豪華なものをたくさん腹に入れて置こう。これから旅を続ける中でこんな機会に恵まれることなんてほとんどないだろうしな。




「アナタたち、今日旅立つ予定なのかしら」


 大方皿も空いて来たころ、グラスに注がれた水を飲んでからシャルム国王が唐突に言った。その問いかけに俺たちは頷く。


「はい。そのつもりです」


「どこを目指して旅をする予定なのかしら」


 矢継ぎ早に質問をされて困ってしまった俺は苦笑いで返す。


「い、いやぁ、特には決めてなくて」


 そもそもこの旅をするにあたって目的地など決めていない。最優先事項は俺のレベル上げ。そのために必要な素材を集める旅なのだから、その目的を達成するために色々なところに行くことにはなるだろうけど。


 しかし、シャルム国王には俺がレベル1だと言うことは伝えていないし、言いたくもない。知られたくもない。


 下手に答えて事情を聞き出されでもしたらどうしようと、心臓をバクバクさせながら必死で動揺を隠す。


 隣に座るシルマを見れば、同じ様に表情を硬くして座っていた。シルマも自分の実力が最強クラスだとしられたくないので当然の反応だと思った。


「そう、決まっているのなら送らせてあげようと思ったのに、残念だわ」


 シャルム国王は特に追及する様子も俺たちの態度や言葉に疑問を持つ様子もなく、涼しい表情で話を流した。


「はは、ありがとうございます。お気持ちだけで結構です」


 俺は丁重に御礼の言葉とお断りの言葉を述べた。


「そうそう、アナタたちへの正式な御礼も忘れていないから安心して。とりあえず50,000,000ゴールドほど用意したから」


「ありがとうございます……って、ごせんまん!?」


 しれっと告げられた言葉だったので一瞬聞き流しそうになったが、脳がその言葉を理解した時、俺は固まった。


 動揺して挙動不審に辺りを見回せばシルマも手を口元に当て、目を瞬かせて思考を停止させていた。そりゃそうなるよな。


「ご、ごぜんまん、50,000,000ゴールドって言いましたかっ」


「ええ。足りないかしら」


「足りる。寧ろ足りすぎますよ。国家予算とか大丈夫なんですか」


 そもそも御礼って何の御礼だったっけ、そうだ。確かクラージュのペンダント奪還を手助けしたんだっけ。俺は何もしてないけど。

 

 ちょっと大分、太っ腹過ぎませんか。ちょっと困っているところを助けただけでえげつない額を寄こさないで下さい。なんか怖いです。


「アタシ、結構やり手なのよ。交易も貿易も上手くやってるの。国の資産は潤沢よ」


 国家予算と言う言葉に反応したシャルム国王がドヤ顔で言ったが、違う。俺が気にしているところはそこじゃない。


「他に欲しいものはある?用意できるものであれば何でも言ってちょうだい」


 お金に加えてまだ何か用意すると言うか。この国王は。結構な額のお金を頂いているのにこれ以上要求できるか!


「い、いや。お金だけで十分……」


『はい!はい!じゃあ、この中の素材を用意できるだけ頂戴』


 止めどなく出て来る御礼に恐縮し、断りの言葉を述べようとした時、元気が良すぎる生の声に邪魔をされた。


「はあ!?お前何言ってっ」


 慌てて聖の発言と行動を止めようとしたがもう遅かった。聖はシャルム国王のところまで凄い勢いで飛んで行き、自らの画面を見せていた。

 

 ああああ、もう!何なんだよあいつ。余計なことするなよ!もおおおおおおおおっ!俺が顔面を押さえて天を仰いでいる間にも耳には2人の会話が届いてくる。


「なあに、強化素材じゃないの。それも貴重品ばっかり」


『うん、そう。ちょっと入用なんだよ』


 どうやら俺の強化素材を要求しているらしい。国王とは旧知の中だとは言え、その図々しさには感服した。


「ふぅん」


 シャルム国王は画面を興味深く覗き込んだ後にチラリと俺の方を見て、切れ長の瞳スッと補足させて呟いた。


「なるほどねぇ……。いいわよ。全部は無理だけど、いくつかは城に保管してある物を提供してあげる」


『わーい。ありがとう!やったね』


 聖はタブレットの体をこちらに向けながら嬉しそうに言うが俺はもう気が気じゃない。シャルム国王の懐が深くて本当に良かった。


 胸を撫で下ろしているとシャルム国王がおもむろに立ち上がる。


「さて、食後の休憩もすんだことだし、アナタたちもちょっと付き合いなさい」


「はい?」


「付き合うって、何をですか」


 立ち上がったシャルム国王を見上げながら俺とシルマが首を傾げると妖艶な笑みを浮かべて当然のことの様に言った。


「決まってるでしょう。朝のトレーニングよ」




 数十分後、俺たちは城内の中庭にいた。と言うか無理やり連れて来られた。最初に急ぐ旅ではないと言わなければよかった。悲しみ。


 因みに、中庭も車で移動しなければいけないほど遠いところにあり、そしてこれまたとんでもない広さだった。


 何ヤードだこれ。そもそも1ヤードってどれぐらいだ。わからん、わからんがゴルフ場と間違うぐらいの広さであることは事実だ。


 そんな緑あふれる広い場所で、俺たちはシャルム国と向い合せで立っていた。


「あ、あの。朝のトレーニングって何ですか。そして何故に俺たちはここに連れて来られているんでしょうか」


 なんとなぁーく、嫌な空気を察して恐る恐る聞いてみるとシャルム国王は長い髪を結いあげながら優雅に言った。


「朝に軽く体を動かすのがアタシ日課なの。アナタたちへの御礼を準備するまでの間でいいから付き合いなさい」


 予感的的中★

 流れ的に絶体にこうなると思った。あんまり聞きたくなかったけど俺はとりあえず顔を引きつらせながら質問する。


「体を動かす、と言うのは」


「基本は剣の打ち合い」


 朝から何てハードなことをしてるんですか。そりゃ肉のカロリー消費できるわな。


「ま、まさか、今からそれをするんですか」


 無理無理!剣の打ち合いとか俺には無理!型すらままなってないのにできるわけがない。態度には出せないので内なる俺が全力で首を左右に振る。


「それでもいいんだけど、今日は気分を変えてゲーム形式にしようと思うの。打ち合いに比べればそんなにハードじゃないし、付き合ってくれるわよね」


 優しげに、しかしどこか圧のある微笑みを受けた俺は蛇に睨まれた蛙の様にその場で固まってしまった。

 笑顔のはずのシャルム国王から「拒否権はねぇぞ」と言うオーラが伝わってくる。とっても怖い。


「う、うう。わかりました。お付き合いさせて頂きます」


 がっくりと肩を落とした仕方なく、本当に仕方なく了承すればシャルム国王はドス黒オーラを引っ込めてにこやかに言った。


「そう、じゃあ決まりね。実はもうどんなゲームにするか決めてあるの」


 話が早い。絶対最初からとレーニングとやらに俺を巻き込む気満々だったな。


「まずはチーム分けね。アタシはクラージュと組むわ」


「はいっ!頑張りますよ」


 詳しい話を聞く間もなく、話がどんどん進んで行く。まだ何のゲームをするかとか聞いてないんですけど。


 チーム戦ってことだけは分かったけど、相手がエグすぎません?どう考えても俺では勝てない面子ですよ。



「で、アナタのパートナーは」


 もうゴリゴリ話が進んで行くよ。つらい、何も言い返せないってつらいなぁ。

 シャルム国王は人差し指を口元に当て、スイッと視線をシルマに移動させたが、それを別の声が遮る。


「ボクがクロケルと組む!」


 シュバルツが右手をまっすぐ垂直に挙げて立候補する。みんなの視線が一気にシュバルツに集中する。


 ふん!と鼻息を荒くし、力みながら熱がこもった立候補に驚きと戸惑いをを隠せない。どうした、シュバルツ。なんで朝からそんなにやる気と自信に満ち溢れているんだ。


「あら、随分と威勢がいいわね。いいわよ、シュバルツのパートナーはアナタにしましょう」


 シュバルツのやる気を買ったシャルム国王が楽しそうに決定を下した。嘘だろ、ホントに朝のトレーニングに付き合わされるわけ。

 

 シルマと組むならレベル的な意味で勝てるかなって思ったけど、まさかのシュバルツとペア。これはヤバいんじゃないかっ。主に俺の命が。


 え、ええっと。確か、国王が上限解放済のレベル200で、クラージュがレベル75、シュバルツが確か……レベル10だったよな。


 そして俺はレベル1。あかん、パワーバランスがめちゃくちゃですがな。ゲームの内容は知らんが場合によっては人生が終了じゃねぇか。


「あ、あの。まだどんなゲームをするか決めてませんが」


 死亡フラグを少しでもへし折りたいので謎に包まれているゲームの内容を聞く。頼む、イージーモードであってくれ。


「そうねぇ、客人に怪我をさせるのも忍びないし、フラッグゲームなんてどう?」


「フラッグゲーム?」


 聞き覚えがあった言葉だがトレーニングと言うには馴染みのない言葉に疑問系で返せばその詳細が語られる。


「ルールは単純。アナタたちは攻め、アタシたちは守り。この庭園で自由に動き回って制限時間内にアタシとクラージュから腰のフラッグを取ることが出来たら、そちらの勝ちよ」


 なんだ、普通のフラッグゲームと同じか。それなら死と隣り合わせでもないし、特別危険な目に遭うことはなさそうだな。


「ただし、模造刀とスキルや魔法を使うのはありよ。救護班も控えさせているから、死なない程度に本気で戦っていいわ。こちらもフラッグを取られないように全力で行くから」


 あっ、全力はダメです。俺死んじゃいます。戦闘能力ゼロのゴミカス野郎でスキルは1つしかないです。


 もうこれは自分が高レア雑魚と言うことを正直に言った方がいいのか。ここで恥をかいた方がマシなんじゃないのか。


「よし、準備完了。そっちも模造を持ってね」


「え、あっ!?」


 シャルム国王の言葉に顔を上げれば、その腰には青色のタグがつけられていた。クラージュの腰にも同じ物がぶら下がっており、2人の手には模造刀が握られていた。

 

 そして入念な準備運動まで始めている。


 どうやらわずかなプライドが邪魔をして、数分葛藤している間にすっかりゲームの準備が整っていたみたいだ。


 気配を感じて勢いよく隣を見ればプロクスさんが浅く頭を下げながら模造刀を差し出していた。自分の頬が引きつるのがわかった。


「わ!すごーい」


 即決で模造刀を受け取ることができず、挙動不審に視線を移動させれば初めて武器を持つのか、シュバルツが嬉しそうにそれを掲げていた。

 

 マジか、お前もやる気満々なのか。昨日ぐらいまでのオドオドはどこへ行ったんだ!


 

「制限時間は1時間。さあ、始めましょうか」


 穏やかさの中に氷の様な冷たさを感じる笑顔を向けられ、俺の背筋が凍った。

 こうして爽やかな朝日の下、シャルム国王のたおやかな声と共に死亡フラグゲーム(デスゲーム)が幕を開けたのだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖「次回予告!やっとお城から出立!と思ったら、訳も分からず始まったゲームに戸惑いが隠せないクロケル。しかも相手チームは結構強いぞ。本当に勝てるのか?」


クロケル「結構強いどころじゃねぇよ。レベル1、装備なしでラスボスに挑むようなもんだぞ」


聖「大丈夫だよ。シュバルツくんがいるから」


クロケル「は?なんでシュバルツ」


聖「次回レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第28話 『子供の成長は嬉しくもあり、寂しくもある』いやあ、子供の成長って目を見張るものがあるよねぇ」


クロケル「子供って……まさかシュバルツのことか?」

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