第25話 鏡の姫の新たな居場所
この度もお読み頂いて誠にありがとうございます。
投稿が1日空いてしまい申し訳ございません。本日は投稿できました!
しかしまた長くなってしまった……まあ、キャラの名前が長いからって事にしましょう!うん(逃)
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
自分が救った人物とは言え、一目惚れをした女性を地下に監禁なんてとても褒められる行為ではない。しかもラピュセルは鏡から出ることはできないから無抵抗だろう。
同じ男として過度な束縛はいかがなものかとげんなりする俺の横で、衝撃の事実を知らされたシャルム国王は眉間に皺を寄せて頭を抱えていた。
「おじい様の暴挙を止めなかったのはどうしてなの」
よろめきながらシャルム国王がミハイルに問えば、ぶすっとした明らかに拗ねた回答が返って来た。
「それば、ラピュセルがあいつを傷付けたらだめだって言うから」
チラリとミハイルに視線を送られたラピュセルさんは苦笑いで言った。
「私の封印を解いてくれた上に外の世界に連れ出してくれたかたですので、恩を仇で返したくなかったのです。それに……素敵な方でしたので」
モジモジとし始めたラピュセルさんを見て俺は察した。そして頭を抱えたままのシャルム国王に確認をする。
「あの、バチェルさんてイケメンだったりしますか」
「このアタシの血縁よ。美しくないわけがないでしょう。まあ、度が過ぎるフェミニストでもあったけれどね」
うわー、凄い自信満々に一族自慢したよ。この国王。
でも、やっぱりな。ラピュセルさんの目にはバチェル前国王は相当魅力手にな男性に映ったみたいだ。何だったら確実に胸キユンしている。
まあ、危機的状況から助けてもらえた時点で憧れに近い何かは抱いていたんだろうけど。ラピュセルさんにとってバチェルさんは闇から救い出してくれた光なんだろうな。
そりゃミハイルも拗ねるよ。自分もラピュセルさんを助けたのに、お友達判定だもんな。うん、二次元で言うところの完全に幼馴染ポジだな。最近は男女ともに結ばれる場合もあるみたいだけど、近すぎて恋愛対象から外されるって悲しいよなぁ。
「なるほど。生前おじい様がこそこそしていたと思っていたけど、ここでアナタと密会していたのね。合点がいったわ」
「み、密会って……」
どこまでも言葉が刺々しいシャルム国王に苦笑いしか返せない俺とは違い、クラージュ小首を傾げながらが冷静に言った。
「でも、バチェル様がお亡くなりになってからもラピュセルさんはここにいたんですよね。幽霊騒ぎが起きたのはここ2~3年。空白の期間がすくなくとも10年以上はありますよ。どうしてそんな長い間、どなたもその存在を知ることがなかったのでしょうか」
クラージュの疑問は最もだった。同じ敷地内のことなのに、随分と長い間シャルム国王の耳にすら届いていないのはおかしい。
全員の疑問の視線がラピュセルさんに集まる。彼女は困った様に眉を下げ、のんびりとした口調で少しだけ切なげに言った。
「どうしてでしょうねぇ。私もそんなに月日が過ぎているなんて思いもしていなくて。そうですか、ここへ来てから10年以上も経っているんですね」
長い間ここにいたせいで時間の感覚がマヒしてしまっているのか、ラピュセルさんはまるで他人事の様に捕えている様に見えた。
どこまでものんびり彼女を見ながらため息をついてミハイルは言った。
「しっかりしろよ。全部バチェルのせいだろ」
「そうだったかしら。バチェル様はお優しい方だった記憶しかないけど」
思い当たる節がないと首を傾げるラピュセルさんにミハイルは諦めた様に首を左右に振っていた。
「もう少し詳しく教えてくれないかしら。全く状況が掴めないのだけれど」
中々話が進まないことに苛立ちを覚えたシャルム国王が不機嫌に腕組みをして言えば、ミハイルもにらみ返しながら不機嫌に返す。
「うるさいな。ちゃんと話してやるから黙って聞いていろ」
「あら、それは失礼したわね。あまりにゆっくり話すから、気を遣っただけよ」
シャルム国王は嫌味を交えつつ軽く流したが、クラージュは眉間に皺を寄せてそのやり取りを聞いていた。しかも腰に携えたレイピアに手をかけてご立腹のご様子だった。
「さっきから無礼な態度ばかり……フクロウって丸焼きにすれば食べられますかね」
「遠くい地ではカレーに入れるそうですよ」
「ジビエ料理は心得ております。お任せください」
なんでみんなして食べようとしてますのん。自分の主に不遜な態度を取られてご立腹なのは理解できるけど、あかんて。
抜剣寸前のクラージュの両脇でエクレールさんとプロクスさんが表情を崩さずに怖いこと言ってるし。どうやら穏やかな顔をしながらぶち切れていらっしゃる様だ。
「み、みなさん。落ち着きましょう。相手に敵意はないですし。クラージュも大人しく話を聞いていような」
殺気をバリバリに放つクラージュの肩に手を置いてなんとか彼女を落ち着かせようと頑張った。肩の力が強くて押し戻されそうになって焦った。
「クロケル、フクロウっておいしいの?」
長い話に退屈して来たのか、シュバルツが眠そうな表情で聞いて来る。
「ごめん、俺にはわからないかなぁ」
「そっか」
残念そうに言った後に眠たそうに目をこするシュバルツを俺は必死で支える。それに気付いたシルマがシュバルツの腕を引いて部屋の隅へと連れて行った。
俺が必死に従者組を宥めたり、シュバルツの面倒をみたりとてんやわんやしている中、ミハイルはこんなに殺気で満ち溢れる部屋でも動揺1つ見せず、眉間に皺を寄せて不機嫌に話を再開した。
「この部屋に鏡をしまい込んでも、バチェルのラピュセルへの優しい態度は変わらなかった。鏡をこの部屋の中央に置いてくれていたし、場所は変われど鏡とラピュセルを大切にしようとしていることは伝わって来たから、俺も最初の頃は容認してた……でも」
ミハイルは溢れ出そうになる感情を飲み込む様に言葉を切る。聞き耳を立てる俺たちに緊張が走る。俺なんて手汗がひどいし、なんだか胸の奥がモヤモヤするし冷たくて気持ち悪い。
緊張感が部屋を包む中、ミハイルは一呼吸置いてから言った。
「バチェルのラピュセルへの執着は日に日に増していった。ここはあいつのコレクション部屋なんだろ。たまに客人を連れて来て自分のコレクションを自慢していただろう?」
「ええ、確かに。コレクション収集からお披露目までがおじい様の趣味ではあったわね」
ミハイルに尋ねられ、シャルム国王は素直に頷いた。ミハイルの話は続く。
「誰にもラピュセルの姿を見られたくなかったバチェルは、ここにヒトを呼ぶ際は黒い布を被せて鏡ごと隠していたんだが、ただでさえ大きい鏡だ。どうしても目を引いてしまうんだよ」
あの黒布はバチェルさんが用意したものだったのか。そんなことをしたらラピュセルさんの視界も塞がれてしまうと言うのに。封印から解放され外の世界を知ることができたラピュセルさんの世界がまた闇に包まれてしまうと俺でも思うが、バチェルさんはそうは思わなかったのだろうか。
ここまで話を聞いていてもラピュセルさんの封印を解いたこと以外、全くいいところがないぞ、先々代……。寧ろ大分束縛クソ野郎だぞ。
「どこへ移動しようとも、布を被せて隠そうとも、目を引いてしまう鏡に嫉妬と独占欲を覚えたバチェルは鏡を部屋の隅へと移動した。そして、このコレクション部屋にも自分以外は入れない様に魔術を施したんだ。もちろん、毎日の施錠も忘れなかった」
「なるほど。鍵が吹き飛んでしまうのはおじい様の魔術のせいだったってわけね」
合点がいったとシャルム国王は深く息を吐く。自分の親族の暴挙にショックを通り越して呆れて疲れきっているのがわかる。
「それでもバチェル様は毎日の様に通って下さりました。お話をするときは布を取って下さいましたし、例え布で普段は視界を塞がれようと、あの方と過ごす時間は私にとって幸せでした。ある時からパタリと来なくなってしまいましたけど」
愛しのバチェル国王の評価が下がりつつある空気を察したラピュセルさんは必死でフォローをしていたが、一度落ちた好感度はそう簡単に上がらない。
第三者から来ても割とひどい仕打ちを受けているのに、バチェルさんを恨むどころか未だに愛おしいと言う感情を持っている辺り、恋は盲目と言う言葉がよく理解できる。誰かにそこまで思われるのは正直、ちょっとだけうらやましい。
『そうかな。僕はどっちも想いが重いと思うよ』
相変わらず平然と俺の心を読み、そして否定的な返答をした聖を睨んでいると、悲しげなラピュセルさんを気遣う様にシャルム国王が言った。
「おじい様は晩年は病気にかかって部屋から出ることが叶わなかったからね。地下へ行くこともできなかったのよ。きっと」
「それに、ラピュセルさんのことは知られたくないので前国王さまと旦那様にも鏡の存在は伝えていなかったようですしね」
続いてクラージュがシャルム国王の様子を窺う様に言えば、本人には後ろめたいことなど1つもないためか、淀みのないキッパリとした肯定の言葉が返って来た。
「そうね。おじい様とはそれなりに交流はあったけれど、アナタのことは一度も聞いたことがないわ」
「そのせいで結果的にラピュセルさんは10年以上もこの部屋に放置されることになったと」
脱力しながら俺が言えばいつの間にか隣に立っていたシルマが口元に手を当てて首を傾げる。
「でも、幽霊騒動が起きたのは比較的最近の出来事ですよね。どうして今更物音なんてしたんでしょうか」
「うわ、びっくりした。シ、シルマ……いつの間に……シュバルツは?」
「おやすみの時間です」
シルマが自人差し指を自分の口元に当て小さな声でそう言った。部屋を見回せば、シュバルツは部屋の隅でお休み中だった。
うむぅ。シュバルツが擬態している俺の世界のアニメキャラはクールで警戒心が強いから人前で寝る様なことは本編ではなかったからこれは貴重だな。
整った顔立ちだけあって寝顔も絵画並みの綺麗さだ。ヤバい、一時停止だ。スクショしたい。携帯に収めたい。
この状況でただ1人全く違うことを考えていることなど思いもしていないであろうシャルム国王が、真剣な表情でシルマの言葉に同意して推測を始める。
「ええ、そうね。ラピュセルが鏡の中から出ることが叶わないのであれば物音を立てるのは不可能だろうし、となると……」
シャルム国王の視線と言葉に賛同する様にその場の視線が全員気性の荒いミハイルに向く。俺もオタク感情に流されていた意識を何とか現実に引き戻すことができた。
長い年月閉じ込められていた間、この場で
「俺じゃないぞ」
ミハイルは真っ先に否定をした。誤魔化している様子はないので嘘ではないことがわかる。
「え、じゃあラピュセルさんが?」
俺が鏡に視線を向ければ、ラピュセルさんは両手を頬に当て、恥ずかしそうに頬を染めながら、体をくねらせていた。
「うう、物音が外に漏れていたのですね。先ほどから幽霊騒動と聞こえて来たので何のことかと思っておりましたが、そう言うことでしたか。お恥ずかしい……」
「でも、鏡からは出ることができないんですよね。どうやって物音を?」
まさか内側から鏡を叩いたとか?可能性はあるが何故今更そんなことをしようと思ったんだ。話を聞く限りではここから解放されたい様子でもない様だし……。
思い当たる節があるのか恥かしがりながらも反省する素振りを見せるラピュセルさんにそう聞けば小さな咳払いの後、ラピュセルさんは言った。
「実はですね、長い間鏡の中にいたせいか融合率が上がったらしく、なんか力に目覚めてしまいまして……手ぐらいなら鏡から出せるようになったんです」
ほら、とラピュセルさんが手を伸ばせば鏡の表面がまるで粘土の様にぐにゃりと歪み、そこから真っ白な手が伸びて来た。
「ひぇっ」
ラピュセルさんの手だとわかっていてもホラーでしかないその光景に俺は悲鳴を上げてしまった。毎度のことながら非常に情けないと思った。
しかし、鏡から出たのは手だけだ。ラピュセルさんは「むんっ」と気合を入れて外に出ようと試みたがそれは叶わず、ガタッと鏡が動く。
「手以外は鏡から出ないんです。もしかしたら出られるかもと、何度もチャレンジしていたので皆さんが言う物音とはこれだったのではないかと」
「なるほどねぇ。じゃあ、鏡に布が被さったままだったのはどうして?ミハイルがいるなら布ぐらい取ってもらえるでしょ」
シャルム国王は納得しながらも新たな疑問を口にする。それを聞いたラピュセルさんは恥ずかしそうに言った。
「バチェル様が布を取ってくれる瞬間がたまらなく楽しみで大好きな瞬間だったので……
でもちょくちょくミハイルが布を取っては被せを繰り返してくれていましたけど」
「さすがに布を被せっぱなしじゃ気の毒だからな。あいつが来るまでの間の息抜きだ」
バチェルさんを想いながら照れまくっているラピュセルさんを横目で見ながらミハイルは非常に面白くなさそうに言った。
そして、ふうと小さく息を吐いてからミハイルは話を締めくくる。
「これが、俺たちが話せることの全てだ」
「そう、ありがとう」
シャルム国王は短く御礼を口にした後、突然床に膝をつき、深々と頭を垂れた。
俺は思わずギョッとしたが、それ以上に動揺したのは主従の面々だ。
「旦那様!?」
「「陛下!!」」
膝をついて謝罪の言葉を口にするシャルム国王を見てクラージュ、エクレールさん、プロクスさんが狼狽えながら声を上げる。それもそうだ。一国の主が自分よりも身分の低い相手に頭を垂れているんだから。
しかしあれだなぁ。美しいヒトって何をしても美しいんだな。シャルム国王が膝をつき、頭を下げる姿はまさに宗教画だ。すごく気品を感じる。
「感情に流されての行動とは言え、おじい様があなたに働いた無礼を一族の者として謝罪するわ。10年以上もの間、アナタの人生を無駄にしてしまってごめんなさい」
誰もがシャルム国王の言葉と潔さに言葉を失う。一族の罪は自分の罪だと、謝ることができる人間はそういない。ましてや王族であるなら、一族の罪を認めることこそ恥だろうし、寧ろ隠蔽したいところだろう。
それをせずに、認めた上で謝罪できる強さがあるからこそ、この人が若くして国王になれたんだろうな。
「あわわ。謝って頂かなくても大丈夫です!私、気にしてません。バチェル様には恩しか感じていません。なので、どうか頭を上げてください」
ラピュセルさんが全力で手を振りながら、必死でシャルム国王に頭を上げて欲しいと願う。彼女の口から明確に気にしていないと聞いたシャルム国王はゆっくりと立ち上がった。
「ありがとう。慈悲深いアナタに心から感謝をするわ」
「いいえ、私こそ。ここに居させてもらったことに感謝しております」
一国の主と鏡の中の姫が微笑み合い、場の空気が和やかなものへと変わる。
よかった、今回は戦闘が発生しないみたいだ。平和的解決、素晴らしい。
こういう場合、二次元の世界において、新パーティメンバー(今回のケースだとシャルム国王)の能力お披露目イベント的に厄介な敵と戦うことが多いのだが、そう言うのはなさそうだな。
今回の騒動の背景と事情は、もつれたイヤホンコードの如くこんがらがっていたが、それも解かれつつあるし、俺の出番がなくてよかった。
「でも、旦那さま。これからどうするんですか。斬り壊した扉は修理するとして、ラピュセルさんをまたここに置き去り、と言うのはあまりよろしくないと思いますが」
平和な空気に安心しきっているとは違い、神妙な面持ちでクラージュが言った。
ああ、確かに。それは大問題だ。ラピュセルさんの今後を考えなければならない。これはまたややこしいことになりそうだなぁ。
シャルム国王は顎に手を当てて少しだけ思案した後、何かを思いついたのか柔らかい笑みを浮かべて言った。
「アナタ、この部屋から出ることに抵抗はないのかしら?」
「うーん……あんまり考えたことがないですね。出たいとも出たくないとも言い難いです」
突然の問いにラピュセルさんは曖昧な返答をしたが、シャルム国王はそれを肯定と判断したのか、美しい笑みを浮かべてキッパリと言い放った。
「じゃあ決まりね。アナタたち、今すぐここから出なさい。こんな日の当たらないところじゃなくて、窓もあるし扉の鍵もかからない明るくて広い場所に行きましょう」
「えっ、ええ?で、でもっ」
戸惑い困惑するラピュセルさんとは対照的にシャルム国王は余裕の態度を崩さず、これは決定事項だと言わんばかりに強気の発言を続ける。
「アナタがおじい様との思い出を大切にしたいと言うのなら、おじい様の自室に案内してあげる。おじい様の部屋は取ってあるし、ここで監禁に近い生活をするより、そっちに移動するほうがずっと幸せでしょ」
シャレム国王が言葉を紡ぐ度、ラピュセルさんの目が見開かれ、次第に瞳が揺れて行く。
「それに、アナタさえよければ城の使用人たちの話し相手になってあげて頂戴。部屋の出入りは自由にしておくから、誰か尋ねてきたら好きに応対して頂戴。もちろん、最低限の防犯対策もしておくから安心してね」
「おい!勝手に話を進めるな」
どんどん進んで行く話をミハイルが羽を大きく広げながら止めたが、シャレム国王は平然として返した。
「もちろん、アンタも一緒に来て構わないわよ。城に迷惑をかけなければね」
「は!?」
その言葉に反応してミハイルが文句を言おうとしたその瞬間、とても嬉しそうな声が響く。
「まあ!それは素敵なお話ですね!私、とっても嬉しいです。ね、ミハイル一緒にここから出ましょう」
シャルム国王の提案がよほど嬉しかったのか、ラピュセルさんは花の様な笑顔を浮かべてそれを躊躇いもなく受け入れた。
「マジか!?」と言いたげにミハイルの大きな瞳が驚愕によって更に大きくなる。
一緒に出ようと嬉しそうに誘われたミハイルは「うぐぐ」と悔しそうに唸った後、ラピュセルさんの笑顔に完全敗北して渋々と頷いた。
「わ、わかった。ラピュセルがそうしたいなら、俺は文句は言わない。その代わり!俺はラピュセルと一緒じゃないと嫌だからな」
最後にギッとシャルム国王を睨みつけながらミハイルが言い、国王は左手を虫を掃う様にヒラヒラとさせて鬱陶しそうに言った。
「はいはい。わかっていますとも。みんな、聞こえたわね。幽霊騒動は和解によって無事に解決。さっそく鏡をおじい様のお部屋に運びましょう。エクレール、プロクス、お願いできるかしら」
「はい」
「承知しました」
エクレールさんとプロクスさんがきちっと頭をさげ、素早く動き出す。仕事が速いなオイ。
ともあれ、こうして鏡の中のお姫様は長い間過ごしていた人気がない寂しい地下の部屋から、日が当たるにぎやかな世界へと出ることができたのだった。
なんか、いい感じに話がまとも会ってほっとした。
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聖「次回予告。幽霊騒動がついに解決。今回もクロケルは出番なしのほぼオタクぎみな語り手。そんなんでいいのか主人公!」
クロケル「うるせぇよ。大体、主役が事件解決しなきゃいけないなんて決まり事ないだろ」
聖「主人公がアクションしないと話が進まないじゃん」
クロケル「話は進んでるから問題ないな」
聖「うわ、ヘリクツだ……。次回レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第26話『シュバルツの変化』影薄い系主人公で話題になるつもり?」
クロケル「そんなつもりは毛頭ない。なんなら交代してやろうか」
聖「あははっ、お断り。主人公はもう懲りたよ」