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第23話 グラマラスのほほん幽霊と気性の荒い使い魔

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


ギャグ小説って難しいですね……サムくならない様に書きたいのですが中々困難で……創作って奥が深いですね。


今日も投稿できました。嬉しみ。もうすぐ恐怖の4月がやってまいりますが、小説投稿は続けたいです。


締め切り3日前までには仕事を終えるのが私のポリシーですが、最近は計画的に仕事をしても締め切りがマッハで迫って来るのは何故でしょう。(上司を見ながら)


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 シャルム国王が斬り捨てて強制的に開け放たれた扉から、再びプロクスさんとエクレールさんが先頭に階段を下りた時と同じ並びで最大限に警戒をしながら物置へと足を踏み入れた。


 プロクスさんが十分に警戒しながら壁に埋め込まれたスイッチを押すと、電気が点いた。この部屋にも問題なく電気は通っている様だ。


 視界が良好になって目に飛び込んできたのは綺麗にディスプレイされた様々なアイテムだった。


 剣や槍、盾などの武具に宝石が鮮やかなアクセサリー類、透明な箱の中にはオルゴールや宝石箱が飾られている。壁には絵画や絵巻物、タペストリーが並ぶ。


「すご、美術館みてぇ」


 俺は周りをグルリと見回したあと見たままの感想を漏らした。美術品の価値は分からないが、素人目でもここにある品は歴史あるものだと言うことが分かるぐらいオーラを放っていた。


 流石に2~3年放置していただけあり、床や棚、そしてシャルム国王祖父にあたる人物のご自慢のコレクションにもうっすら埃が積もっていたが、物自体がごちゃごちゃしていると言うわけではなく、寧ろ綺麗に整頓されていた。


 コレクションたちは種類別や年代別によって事細かに分けて飾られており、ご丁寧に銀のプレートにコレクションの名前と説明が書かれていた。


「それじゃ、幽霊とやらを探しましょうか。本体を見つけたり、手がかりを見つけたら各自報告ね」


「はい」


 シャルム国王の指示にその場の全員が返事をする。

 現状、霊の姿もなければ襲いかかって来る様子もなかったため、俺たちは少しだけ緊張を解いて部屋の中を見て回ることにした。

 しかし、いくら綺麗にディスプレイされているとは言え物が多すぎるから得体の知れない何かを探すのは骨が折れそうだな。


 クラージュ、プロクスさん、エクレールさんは俺たちにも気を配ってくれているが、シャルム国王からはあまり距離は取っていない。当たり前か、国王様に何かあっては一大事だもんな。彼女らがメインで守るべきは当然シャルム国王だ。うん、いざと言う時のガードが弱いのはちょっと怖いけど、これは仕方がないよな。


 ……嘘です。ちょっとどころではありません。超怖いです。SAN値がゴリゴリにこそげ落ちてマス。ゲームなら画面が真っ赤になってアラーム音鳴り響きつつコントローラー震えまくりだわ。


 べったり俺にくっついたままのシュバルツの温もりがなんか心強い。歩きにくいけど。


 もし幽霊に不意打ちされたら、と最悪の事態を想像して真顔で青ざめながら小刻みに震えていると、シルマがピタリと身を寄せて来る。突然の行動に俺の心臓が跳ねる。


「やっぱり幽霊がいると思うと怖いですねぇ」


 怖い、と言いながらもシルマは辺りを気にしながら武器である星がモチーフの金杖をしっかりと握りしめ、臨戦態勢だった。


「大丈夫です。クロケル様は私が守ります。約束ですから」


「あ、ああ。ありがとう。シルマ」


 こっそりと言うシルマに胸の高鳴りを押さえながらも礼を言えば、にこりと笑顔が返って来た。


 この場で聖を除き、唯一俺の事情を知っているシルマだけ。どうやら不安がるフリをしながら俺を守ってくれている様だった。


 控えめでありながらも勇ましいその姿に頼もしさを感じながらも、情けなさを感じて涙が零れそうになった。

 

 俺には最強だが目立ちたくないシルマの身代わりになると言う役割が。シルマには俺に見せかけの最強戦士を演じてもらう変わりに、レベルアップに必要な素材集めを手伝い、本当に最強にすると言う役割がある。


 シルマはその約束を律義に守ってくれているのだと思うが、これは色々な面で情けないぞ。


『ガタイの良い男性が女性に守られるのって、なんかいいよね』


 宙に浮かぶ聖が感慨深そうに言った。


「ああ、それわかるぅ。ゴリマッチョと小柄なキャラがコンビを組んでて、マッチョがボディーガード的な存在かと思ったら、小柄な方が強いってパターンな。いや、お前の方が強いんかーいみたいな。って違うよ。アホなこと言わせんな」


 聖の意見に早口で先導したあと思わず叫ぶようなノリツッコミをしてしまえば、シャルム国王の鋭い声が響いた。


「ちょっと、訳の分からないこと言ってないで幽霊の手がかりを探してちょうだい」


「は、はいっ」


 ヤバい。ちょっと騒ぎ過ぎた。シャルム国王めっちゃこっち睨んでるし。怖がってないで手がかり探さないと。


 怒られてしまったので真剣に幽霊を(本当は探したくないけど)探し、室内をウロウロとしていると部屋の隅に黒い布に覆われた何かがあった。何かデカいんですけど。何だコレ。


 俺が見つけたそれは俺の身長と同じぐらいの大きさだった。他の品は綺麗にディスプレイされているのに、どうしてコレだけはこんなに隅に置いてあるんだ。コレクションの説明が書いてあるプレートもないし。

 

 隠してあります感満載のそれを俺たちは見つめた。


「怪しい……」


「怪しいですね」


『怪しいねぇ』


「怪しいの?」


 俺に続いてシルマ、聖が同意する。なお、ジュバルツは状況が分かっていないので疑問形なのである。

 数秒間謎の黒い布を見つめたあと、俺は覚悟を決めて言った。


「……これ、取ってみるか」


「そうですね。あ、私が取りましょうか」


 恐らく危険があった時に対処できるからと言う意味での申し出だったが、そうであれば尚のことお願いしますなんて言えない。


 俺だって仲間を危険な目に遭わせたくないと言う気持ちはある。ちょっと実力が伴ってないだけだ。悲しいけど。


「いや、俺がやるよ。シルマは何かあった時のフォローに集中してもらいたいんだ」


「はい!お任せ下さい」


 シルマが嬉しそうに頷く。思わず格好つけてしまったが、後悔はしていない。怪我でもされたら心配だし。でも本当にフォローしてね!


「よし、取るぞ!」


 俺は意を決して黒い布を掴んだ後、思いっきり引っ張った。軽い布はふわっと宙に浮いた後、床に落ちた。


「へぷち」


布についていた埃が舞って鼻がむず痒い。シュバルツが可愛いくしゃみをした。


「か、鏡?」


「わあ、立派な姿見ですねぇ」


 布を取ったそこにあったのは大きく立派な姿見だった。金色の枠にルビーやエメラルド、トパーズと言った色とりどりの宝石が埋め込まれた、とんでもなくキラキラで豪華な姿見だった。


「確かに立派だけど、なんでこんな豪華な鏡がこんな隅に置かれているんだ」


 注意深く鏡を見てみるが、何をどう見ても豪華な造りと言うこと以外は普通の鏡だ。こんな隅に目立たない様に置いていたから何かあると思ったが、ハズレだったか。むう、残念。


 でも本当に豪華な鏡だな。手入れも行き届いている。鏡の表面が輝いていて余程大事に手入れされていたことがわかる。そう思って鏡を覗き込む。


 そこには、俺じゃないものが映っていた。


「あらぁ、お客様ですかぁ」


 そこに映っていたのは銀髪の長身の男(俺)ではなく、穏やかで整った顔立ちの女性だった。白みがかったクリーム色の内巻きの腰までのロングヘアにビビットピンクの大きな瞳。大人っぽさと若さを両方兼ね備えた容姿をしていた。


 エメラルドグリーンのマーメイドドレスのその人物は、目を見開く俺を興味深そうに前屈みで覗き込んできた。抜群のプロポーションをお持ちな方で、雪の様に白い肌の胸の谷間がバッチリと目に飛び込んできた。


 実にグラマラス。普通の男ならここで喜ぶものなのかもしれないが、今の俺はそれどころではない。この状況でラッキーなど思うものか。鏡に映る女性を見てしまった俺は一気に血の気が引いた。

ヒュッと喉を鳴らした後、俺は力の限り叫んだ。


「うぎゃあああああっ」


「うわっ」


「あわわわっ!大丈夫ですかっ」


 叫んだ勢いで尻もちをついてしまったせいで俺、にくっついていたシュバルツも一緒に転ぶ。

 鏡に映った女性よりも盛大に転んだ俺に驚いたシルマが慌てて俺とシュバルツを助け起こし、鏡の中の女性に向かって杖を構える。


『もう、何やってるんだよ』


 聖が呆れた様に言うのが聞こえたが、ごもっともな反応である。

 うう、驚いて転んだ上に守ってもらうなんてホントに情けねぇ……。しかもシュバルツも巻き込んでるし。ああ、俺ってヘタレだなぁ。


「何、何事!?」


「どうかされましかっ」


 俺の情けないほど大きな絶叫に反応し、シャルム国王とクラージュが驚いてこちらへと駆けて来る。エクレールさんとプロクスさんもその後に続いていた。


「か、鏡に人がっ」


 心臓をバクバクさせながら鏡を指さす。みんなの視線がそちらに向き、俺の様に絶叫する者はいなかったが、驚いていはいるようで声を失い、鏡の女性を凝視していた。


「あらあら。こんなに人が尋ねてくれるのは何年ぶりかしら。でもお話相手が多いのはいいことよね。ねぇ、ミハイル……あら、ミハイル?」


 鏡の中の女性は両手を頬の横で会わせて嬉しそうに微笑んだ後、誰かを探し始めた。この女性、中々のマイペースだな。


 例えるのほほん系お嬢様ヒロインかな。なんかシルマと雰囲気が似ている気がする。


「クロケル、ボーっとしない」


「えっ、ひぎゃぅ!?」


 ぼんやりとしているとシャルム国王の鋭い声と共に俺の足元に小型のナイフが突き刺さる。唐突に足元に飛んできた殺傷能力しかないそれに俺は間抜けな声を上げて飛び上がる。


「な、なななな!?」


 壊れた機械の様に同じ言葉を発しながら動揺する俺に聖が言った。


『足元見てみなよ。クロケル』


「足元?」


 言われるままに下を見てみれば、俺の足首の辺りに長い爪を持つ黒い腕に先ほどシャルム国王が投げたナイフが深く突き刺さっていた。


「うわわわっ」


 見るからにヤバそうなそれに恐怖を覚えた俺はその場から飛び退き、土煙を上げる勢いで後退する。


 怖っ!なにあのグロテスクな物体はっ。


「気配を消して足元からクロケルさんを狙っていた様ですね。私も一瞬反応が遅れてしまいました。すぐさまお気づきになられた旦那様はやっぱりすごいです」


 クラージュが目をキラキラさせながら解説とのろけを同時に行うと言う器用なことをして状況を伝えてくれたが、理解したらしたで恐怖しかなかった。ああ、めまいが。


 シャレム国王がナイフ投げてなかったらヤバかったってことだよな。気配を消してってことは俺の唯一のスキル「隠形」に近い能力をあの腕は持っていたと言うことか。


 恐怖に震えながら改めて腕を観察する。ダーツの様にナイフが突き刺さった腕はピクリとも動かない。血が出ている様子もない。


「あれ、何なんだ。モンスターか?」


『いや、モンスターの反応はないね。今、解析した。あれは魔族だよ』


「魔族ぅ!?」


 俺と同族かよ!いや、確かに見た目は魔族っぽいけども、なんで魔族がこんな所にいるんだよ。


「もう少しだったのに、人間も中々やるな」


 意外なアナライズの結果に俺が驚きの声を上げると同時に、口惜しそうな声が響き、黒い腕が塵となって空中に浮いたかと思えばそれは徐々に別のモノへと形を変えて行く。


 その場にいる全員が攻撃に備えて武器を構える。俺も役に立てるとは思えないが、剣の柄に手を添えて構える。


 張り詰めた空気が部屋を包み、集まった塵が一瞬だけ光った後、その姿を現した。


「ふ、フクロウ?」


 俺の口から思わず呆けた声が出る。塵が象った姿は先ほどの腕と真逆の色、つまりは真っ白な体をした全長25センチぐらいの小型フクロウだった。


 思ってたんと違う。こういう場合ってもっと化け物みたいな姿になるんじゃないのか。中ボス戦みたいな空気になってたじゃん。


 何でフクロウ。目がくりくりで可愛いけど、魅力的なモフモフだけど!!でも声がちょっとイケメン過ぎないか。こう、腹の底がぞわぞわする感じの年若くて激甘な青年ボイスだ。ダミーヘッドホン仕様の作品ならヘッドホンをぶん投げるレベルの良い声だ。


「お前たち、ここに何の用だ」


 良い声のフクロウは可愛い体で偉そうな口をきいた。全てがアンバランスでなんだか笑いそうになったが、空気を読んで耐える。


「それはこちらのセリフ。ここはアタシの城の敷地内よ。まさか、アンタたちが件の幽霊ってわけ?」


 強気なフクロウに強気なにシャルム国王が聞けば、鏡の中の女性は自らに指を差しながら首を傾げた。


「幽霊?私がですか」


 何のことかわからないとキョトンとする女性を庇う様にフクロウが羽を大きく広げて噛みつくように言った。


「その紋章……お前!セレーニタ家の人間だなっ。この子に近づくな!」


「あら、こっそり攻撃しようとする様な奴だから、骨の髄まで卑怯者かと思ったけど、仲間意識はあるのね。褒めてあげるわ」


 シャルム国王が高圧的で嫌味たっぷりに言えば、フクロウは今にも襲いかかって来そうな勢いで激しく跳ねを羽ばたかせ、くちばしをカチカチと鳴らす。


「うるさい!お前、男だろ。男の癖に気持ち悪い喋り方をするな!」


 ピキッと言う音が聞こえでシャルム国王の纏うオーラが冷たく、そしてどす黒くなったのを感じた。顔は笑顔だが雰囲気が氷河期だ。って言うかリアルに吹雪いてる。国王の周りだけすっごい吹雪いてる。寒い!


「あらら。あのフクロウ、旦那様の地雷を踏み抜きましたね」


 クラージュは困り顔で笑っていたが、この雰囲気はどう考えても笑い事じゃないだろう。でもエクレールさんもプロクスさんもこんな吹雪なのに平然としてる。これ、普通のことなの?


『あいつ、気が短いのは直ってなかったんだね』


 かつてのシャルム国王の仲間だった聖がやれやれとため息をつけば、クラージュが首を横に振って言った。


「いいえ、即ギレすることはないですが、自分の生き方をバカにされると()()なってしまうんですよねぇ。あのフクロウはもう終わりです」


「いや、さらっと言うなよ。止めなくていいのか。ここのコレクションが破壊される恐れもあるんだぞ」


 やけに冷静なクラージュにそう問えば、彼女は平然として言った。


「個人的にあのフクロウは許せません。旦那様にあんな失礼なこと言うなんて。だから、旦那様に粛清されてしまえばいいんです。本当なら私が斬り捨てたいところですが」


 怖いよ。この子っ!粛清とか簡単に言わないで!


 この部屋のものには触れるなって言う遺言は無視するんですか。それとも壊すなとは言われていないからと言い訳するおつもりで?


 助けを求める様にエクレールさんとプロクスさんに目を向けてみれば同時に首を横に振った。どうやら止めるつもりはないらしい。


 だめだ。非難準備。俺はシルマに目で合図を送り、その意味を感じ取ったシルマはシュバルツの手を握ってゆっくりと後退した。


「気性の荒い上に失礼な動物ね。アタシ自ら八つ裂きにしてあげましょうか」


「望むところだ」


 シャルム国王が抜剣体制を取り、フクロウの体からも禍々しい黒いモヤが現れる。まさに一発触発。


 ヤバい、周りが見えていない。この高そうなコレクションが破壊の運命を辿ること必至。顔は見たことないけどごめんなさい。国王のおじいさん。あなたの宝は俺では守れません。


 場の空気が重く冷たくなり始め、いよいよ戦いが始まる。そんな緊張感が溢れる中、凛とした声が響いた。


「無意味な争いはダメよ。ミハイル」


 一瞬で緊張の糸が切れ、声のする方向へみんなが注目する。

声の主はのほほんとした顔ながら、できるだけ眉を吊り上げて怒りを露わにする鏡の中の女性だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



聖「次回予告!新キャラが続々登場でにぎやかになりつつあるけど、のほほんグラマラスな幽霊さんの正体とは、そしてあの気性の荒いフクロウは何なのか!」


クロケル「なあ、恰好つけてるとこ悪いが、俺もう帰りたい。命の危機と精神的疲労と自分への情けなさで精神攻撃トリプルパンチ食らってるんだけど」


聖「ええっ、まだ何もしてないのに」


クロケル「それだよ。俺がヘタレなのはわかるが、事実を述べるな。オブラートに包んでくれ」


聖「次回レアリティは最高ランクだが素材がないのでレベル1 第24話 『好きな子への束縛は大概にしろ』頑張てレベル上げよう!脱ヘタレ!」


クロケル「今のところレベル上げから遠ざかっているがな!」


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